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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

一般空曹候補学生の愛唱歌その3

一般空曹候補学生たちは△村先任作業隊に入隊するにも厳格な審査を経なければなりませんでした。
朝、班長を通じて区隊長の了解を得て衛生隊への受診希望者の集合がかかると、学生は事務室に集められるのですが、そこで△村先任は一人一人の受診理由を事細かに訊き取りました。
「熱発(=発熱)」と言えばその場で体温を計り、「膝痛(走行生の持病)」と言えば何キロ走ったかを訊き、「咳き」「吐き気」などはその症状が出るまで待って自分で確認する念の入れようでした。
△村先任としては「ズル休み」を絶対に許さないと言う使命感だったのでしょうけれど、そんな受診希望者が陰で唄ったのがこの歌です。

 △村先任受診の歌(曲・秘密のアッ子ちゃん)

先任の前では 男の子
みんな元気 それは何故
それは嫌み嫌みのせいなの ピンピンピン
熱が三度も下がったの それは何故
それは甘え 病気に負けちょる
神様 先任

△村先任は作業隊の作業を作るための下準備にも責任を持ち、「草刈りはさせられないので草集めをさせよう(本音は涼しいから)」と早朝、起床前から草刈りをすることがありました。

 △村先任草刈りのテーマ(曲・ガッチャマン)

誰だ 誰だ 誰だ 
朝の眠りを破る音
草刈り始めた 先任
エンジンかけて 刈りだせば
延びた草など残らない
刈れ刈れ刈れ 先任
ゆけゆけゆけ 先任
仕事は一つ これだけ一つ
オー先任 先任

そんな△村先任のテーマの一番のヒット曲がこれでした。

 △村先任の歌(曲・仮面ライダー)

迫る先任 事務室の長(おさ)
我らを狙う 作業鬼(おに)
中隊業務のためだけに
ゴーゴー レッツ ゴー
とどろく叫び 
先任 草刈り
先任 薪割り
△村先任 △村先任 先任先任

まさに一般空曹候補学生にとって「昭和の親父」でした。
  1. 2012/07/15(日) 10:55:51|
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一般空曹候補学生の愛唱歌その2

防府出身の一般空曹候補学生OB(ただし13期まで)が集まって飲むと必ず話題に出るのが事務室の長(おさ)・△村先任です(本人が階級ではなく「ワシは先任と呼べ」と指導していました)。
△村先任は怪我や病気で激しい訓練ができない「激務休」と診断された学生を集めて、雑用作業をさせるのですが、これが身体を痛めなくても厳しい絶妙の内容で決して楽はできないのです。
ですから学生たちは心から「早く治して訓練がしたい」と願っていました。
これはそんな△村先任の下で作業に励んだ哀しき学生たちが作った愛唱歌(労働歌?)です。

 △村先任作業隊歌(曲・加藤隼戦闘隊歌)

先任の声 轟々と 
若者は征く 作業員
背中に重たい 十字架は
訓練出来ない 激務休(げきむきゅう)
我らはその名も 先任S(せんにんず)

寒風酷暑 身がもたず
艱難辛苦 耐えきれず
作業に当る 弱者(よわもの)が
シッカリやってきてくれと
同期に祈る 虚しさよ

担架交ゆる 衛生隊
七度(ななたび)重なる 診断の
休務の影に 焦りあり
ああ今は無き 訓練の
内容どこで 取り戻す

毎日続く 作業員
中隊業務 身につけて
いつかは事務所の長(おさ)になり
先任と呼ばれる 時が来る
我らは曹候 先任S
三村先任



  1. 2012/07/14(土) 10:40:28|
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一般空曹候補学生の愛唱歌その1

「航空自衛隊一般空曹候補学生とは何か?」野僧が入隊した頃には、まだ我々の教育に当る中隊長、区隊長、班長も確固たる答えを持っていないようでした。
「兎に角、厳しく」「一般の新隊員たちが同情するほど厳しく」と体育や訓練でも一切の妥協を許さぬ厳しさを課し、我々も「それが曹候生の証」と耐え忍び、喜びとしてきました。
ある夜、眠られぬ者が消灯後に話しているの見つけた若い手の班長(曹候5期の先輩)たちが、全員を起こし廊下に正座をさせました。そして「反省した者から寝てよい」と指示を与えたのですが、全員が12時を過ぎても正座をしたままで、班長が「もういいだろう、寝ろ」と言っても「まだ反省が足りません」と止めませんでした。
最後には「頼むから寝て下さい」と頼んできましたが、野僧を含め数名の者が朝まで正座で明かしました(午前の座学は爆睡者が続出で班長の方が注意されたようです)。
曹候生と言えば掛け足がお家芸で、我々は「走って行くから曹候生(走行生)と言っていましたが、そんな伝統を受け継いだ後輩が作った愛唱歌を紹介します。

 走行学生の歌(曲・新エースをねらえ)

泣きたい時は 走路で泣けと
班長(あの人)は 班長は 鍛えてくれた
つまづいても ベソをかいても 
私には見える 一筋の光が
七分三〇 この一周に賭けた
七分ジャスト 私の青春
六分三〇 誰にも負けはしない
ああ 強い強い 体力だけは
強い強い 体力だけは     ※ちなみに航空教育隊がある防府南基地は一周2・3キロです。

もう一つ、自衛隊体操と言うのは陸空自衛隊が行う徒手体操(海は海軍体操そのままの海上自衛隊体操)ですが、曹候学生は教官動作と言って前で展示するための逆動作も覚え、仕上げには番号をかけながら次の動作を示す「合いの手」までマスターします。つまりNHKのラジオ体操のモデルさんとアナウンサーさんの役を一人でできるようになるのです(全員が)。

 自衛隊体操の歌(曲・ラジオ体操の歌)

荒々しい朝が来た 死亡の朝だ
悦びに夢が砕け アホ面仰げ
班長の声に 健やかな腕を
この弾む風に 鍛えよ
それ1,2,3
  1. 2012/07/13(金) 15:43:14|
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曹候イジメの思い出

 イジメの体験談を「懐かしき思い出」として語らせていただきます。
野僧が卒業した「一般空曹候補学生」と言うのは2年間の短期間で3等空曹(下士官)に昇任させる教育課程で、残念ながら32期を以ってその幕を閉じました。
空曹=下士官とは本来、熟練者を当てる軍の階級、職務であって、ある程度の素養を持った若者を速成するこの制度は、外国軍にあまり類型はありません。
入隊してくる若者は、ある程度の進学校で部活動などに励み過ぎて受験に失敗した運動馬鹿や防衛大学校、航空学生を2次試験で失敗した防大・航学外れなどの一癖も二癖もある奴が揃っていたように思います。
また早く、間違いなく3等空曹に昇任したいと現職から受験した者も多く、最初の教育隊で彼らが語る部隊での「曹候イジメ」の実態が、我々のような一般入隊者に覚悟と危機感を与えました。
その反作用として職種を選ぶ時、航空自衛隊では航空管制と並んで人気があるはずの航空機整備が「熟練するのが難しい」と敬遠されて定員割れをし、「馬鹿な空士になら勝てる」と後方職種に優秀な隊員が集中すると言う珍事が起りました。
野僧が入隊した7期の頃は、試行錯誤だった1期以降の先輩がそれなりの実績を築き上げる一方で、曹候学生出身者が初任空曹(空士=兵からの叩き上げ)の昇任枠を奪っているとの現実に気がついた古手の空士たちが、「曹候を辞めさせれば自分たちの枠が広がる」と言う根拠のない風聞を鵜呑みにして鬱憤晴らしの曹候イジメに励み、先輩たちも「自分たちの立場を傷つけるな」とイジメにも似た指導を行ったため最も悲惨激烈な時期でありました。
そのイジメのパターンとしては「やはり曹候は」と能力不足を指摘しつつ「曹候の癖に」と羽目を外すこと、気を緩めることを一切許さぬ粗探しの包囲網でした。
野僧などは「曹候の癖に」で気を引き締め、「やはり曹候は」で勉学修練に励みましたが、こう言う反応をした者は部内選抜の幹部になり、統計上では各期の3分の1が幹部になっています。
また新機種導入にともなうアメリカ留学でも主軸であり、海外からの留学生の中で過去に無い抜群の成績を修め、米軍から勲章を受彰した同期もあります。
このほかも航空救難員(メディック)や機上輸送員(ロードマスター)などでも華々しく活躍しています。
逆に「俺は黙っていても空曹になれる」と開き直る奴もいて、かえってそう言うフテブテシイ者の方が古手の空士やベテラン空曹にも愛され、仕事もジックリ取り組んで熟練し人望を得ていますから不思議です。
しかし、このイジメがなければ一般空曹候補学生の自己の職責に対する過酷なまでの精進努力はなく、「nobless oblige=高貴なる者の義務」の精神は醸成されなかったでしょう。
そんな中で笑い話のようなイジメの実話を一つ。
某基地補給隊の同期は、梱包作業の仕事で古手の空士たちに「絶対に声を出すな」と空き箱に入れられたのですが、空士たちがフザケて入間の補給処に送る荷札をつけたので、そのまま輸送機に乗せられ、夕方補給隊で「××がいない」と探していていると入間から「こちらで荷物を開封したら、オタクの××が中で泣いていました」と連絡が入ったそうです。本人には笑い話ではすまなかったでしょうが、暗い箱の中で膝を抱えて入間まで空の旅をしてしまった同期を思うと、「若し、その輸送機に何かあったら」と言う心配と同時に思わず笑ってしまいます。
我々、第7期一般空曹候補学生では入隊して最初の体力検定の1500メートル走で殉職者が出たのですが、空士長だったその同期は「入隊1カ月で三等空曹になった『超』曹候学生」と言われ、その事故の説明をしながら区隊長(教官)は「鍛え方が足らなかった。お前らは簡単に死なぬように鍛えてやるから安心しろ」と宣言し、その言葉通りさらに訓練は厳しくなりました。
  1. 2012/07/12(木) 11:26:21|
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