牛蒡は冬の大根に対して夏の根菜なので自給自足の寺では必ず栽培していますが、沢庵として大量に消費する大根ほどではありません。また牛蒡は1メートルくらい伸びるので植える前には70センチから80センチほど耕す必要があり作務としては大変です。
牛蒡の調理では大根や人参と違って皮むきと灰汁取りに要領が必要ですが、皮は刃物で剥かなくても抜いたばかりの牛蒡なら水をかけてタワシで洗えば綺麗になり、時間が経過したものでも包丁の背で擦れば十分です。一方、灰汁抜きは1センチ幅で斜めに切った牛蒡をそのまま流水に晒して2、3回水を換えればあまり手を汚すことなくできます。
また古くなった牛蒡は芯の部分に隙間ができて繊維質になり、煮ても柔らかくならず食べると口の中に筋が残って食感が悪いので周囲だけを剥いて用います。
牛蒡の甘煮
材料=牛蒡(大きい物)・醤油・砂糖・料理酒・味醂・昆布・米糠・青海苔
作り方
1、 湯を沸かして米糠を加え(米糠がない時は米の研ぎ汁でも可)、灰汁を除いた牛蒡を茹でる。
2、 鍋で昆布の出汁をとり、醤油・料理酒・砂糖を加えて甘辛い煮汁を作る。
3、 牛蒡が柔らかくなったら水に浸して洗ってから沸かした煮汁に入れる。煮汁は牛蒡が浸る程度。
4、 煮ながら時々掻き回して均一に火が通るようにする。
5、 煮汁が牛蒡の半分程度になったら味醂を加える。
6、 煮汁がなくなったら器に盛り、刻んだ青海苔をふりかける。
※お節料理の一品にすることもあります。
牛蒡と人参の揚げ巻
材料=牛蒡・人参・薄揚げ・干瓢(かんぴょう)・砂糖・醤油・米糠、昆布出汁
作り方
1、薄揚げは1枚に広げて熱湯をかけて油抜きする。
2、干瓢を水で戻して柔らかくする。
3、牛蒡と人参を薄揚げと同じ長さに揃えて細長く切る。
4、灰汁抜きした牛蒡を米糠を加えた水(又は米の研ぎ汁)で茹でる。
5、茹で終わる頃に人参を加えて5分ほど茹でる。
6、広げた薄揚げの上に適当に混ぜた牛蒡と人参を並べ、これを芯にして巻き込み、ほどけないように干瓢で縛る。
7、昆布だしに醤油と砂糖を加えて濃い目の煮汁を作る。
8、干瓢で縛った牛蒡と人参の薄揚げ巻きを煮汁に入れて落し蓋をして煮込み、煮汁が減ってくれば醤油を足して煮詰める。
9、煮汁がなくなれば鍋から出して少し冷まし、3センチ程度の切る。干瓢は切った時に中央になるように縛る。
牛蒡の甘酢煮
材料=牛蒡(若いうちに掘った物、皮が薄く柔らかい物)・酢・砂糖・塩・青海苔・炒り胡麻
作り方
1、 皮をこそぎ落して4から5センチ幅で切る。太い物は2つ切り、4つ切りにして水に晒して灰汁を抜く。
2、米糠を溶かした水又は米の研ぎ汁で柔らくなるまで(15分程度)茹でる。
3、水洗いして砂糖と醤油で薄目に味をつけた少々の煮汁で茹でる。
4、煮汁が半分になった頃、酢を足して甘酸っぱく煮込む。
5、器に移して青海苔や擦った炒り胡麻をかける。
皮牛蒡の煮物
材料=牛蒡(古くなって筋が立った物)・砂糖・醤油・昆布出汁
作り方
1、 古くなった牛蒡の芯を除いた部分を剥き削る=皮牛蒡。
2、 皮牛蒡を5センチ幅に切り、皮の厚さだけ縦に包丁を入れて水に晒す。
3、 米糠を溶かした水又は米の研ぎ汁で茹でて水洗いする。
4、 切れ目に指を突っ込んで皮を剥く。
5、 適当な幅に切って昆布出汁に砂糖を加えた煮汁で煮て、途中で醤油を足して甘辛く煮込む。
金平(きんぴら)牛蒡(大根の皮の代用ではなく正統派)
※金平とは坂田金時の息子の名前に由来し、一味唐辛子の隠し味が丈夫で雄々しい男を表している。
材料=牛蒡・胡麻油・醤油・砂糖・一味唐辛子・化学調味料・炒り胡麻
作り方
1、 皮を剥いた牛蒡を水に晒し、太い物は縦に2つか4つに割れ目を入れ、細い物は小刀で鉛筆を削るように(今時の人にこの例えが理解できるか?)水の中へ薄く剥いでいく。
2、 水を替えて白っぽくなるまで(30分程度)晒す。晒し過ぎ、水の替え過ぎは風味を損なう。
3、 牛蒡を笊(ざる)にあけて水気を十分に落とす。
4、 鍋に多めに胡麻油を敷き、煙が立つ寸前に牛蒡を入れて炒める。
5、 牛蒡が透明になって量が目減りしてきたら砂糖と醤油を同量、又は砂糖を多めに入れて、さらに一味唐辛子を加える。
6、 汁がなくなるまで炒めながら煮る。
7、 煮立つ直前に化学調味料を加え、火勢を落として焦げないように掻き混ぜながら汁気がなくなるまで煮上げる。
8、 ※好みで炒り胡麻をかけるのも美味。細く刻んだ人参やピーマンを混ぜると色どりが映える。一味唐辛子に代えて獅子唐の辛味も面白い。

正統派金平牛蒡
- 2023/11/01(水) 13:14:35|
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僧堂では大根や蕪などの根菜の葉も食材にします。それを食べ比べた雲衲たちの評価では大根よりは蕪の方が美味しいと言うことです。それでも葉野菜と比べると繊維質を口の中で持て余し、苦味や灰汁味が強く、やはり美味くはなく葉を食べる野菜ではありません。ただし、大根の葉を塩揉みして細かく刻んで干し、飯と一緒に炊く菜飯は秀逸です。
そんな根菜の中で人参は精進料理の基本「五色五味五法(五色=白・黒・黄・赤・青、五味=甘い・塩からい・酸っぱい・苦い・辛い、五法=焼く・煮る・揚げる・蒸す・漬ける・何故か『炒める』がない)」でも意外にない「赤」と「甘い」野菜であり、1本が小振りなため僧堂の畑では大根や蕪と並びの畝で作っていました。
最初に
人参には特有の匂いと甘みがあり、この匂いで子供には嫌われますが大人になっても引きずっている雲衲がいれば調理の前に皮をむき、適当に切って多めの水で茹でてから使うと匂いは薄くなります。また折角の甘みを殺さぬように砂糖は、赤色を消さぬように醤油は控え目にするように指導されました。
人参の煮つけ
材料・人参・砂糖・醤油・昆布出汁・塩
作り方
1、皮をむいた人参をあまり小さくならない程度に切る。
2、倍に薄めた昆布出汁で30分間程度、茹で煮る。
3、柔らかくなったら砂糖と塩、醬油を加えて煮る。
4、味が染みれば出来上がり。
人参の昆布巻き
材料・人参(細長い物が可)・昆布・醤油・砂糖・干瓢(かんぴょう)
作り方
1、昆布は水に10分程度浸して柔らかくなれば引き上げて広げ、表面の水気がなくなるまで置く。漬け過ぎると水分を吸わなくなるから注意
2、干瓢を水に漬けて柔らかくする。
3、昆布を6センチ幅で横に切り、皮を剝いた人参も同じ長さで切り揃える。
4、人参を柔らかくなるまで茹でる(匂い消しと兼ねても可)。
4、人参を芯にして昆布で巻く。三重巻き以上が可。
5、昆布の上から干瓢で3カ所縛る。
6、昆布を漬けた汁に浸して茹で直す。
7、途中で醤油と砂糖を少しずつ加える(量は「最初に」で述べた点に注意)
8、火を止める5分前に少量の醤油を足す。
9、煮上がれば火を止めて冷ます。
10、干瓢が中央の帯になるように3つに切って出来上がり。
人参の炒り煮
材料・人参・醤油・砂糖・胡麻油
作り方
1、人参を皮つきのまま4センチ程度の長さに輪切りにして、5ミリ角の拍子木状に刻む。
2、フライパンに胡麻油を敷き、人参を炒める。
3、火が全体に通ったら砂糖を少々、その3倍程度の醤油をかけて焦げないように水を加えて煮込む。水気がなくなれば出来上がり。

人参の煮つけ
- 2023/10/01(日) 15:19:24|
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前回は寺の裏山の土葬で人間の養分を吸った三昧所で採れる太い蕗を使った料理を紹介しましたので今回も山菜を使った料理にします。
最初に
蕨(わらび)に代表される山菜は山で採ってきたら速やかにあく抜きするのが調理の秘訣です。時間が経過するほど味と食感が落ち、これを某山寺と地域住民は「山菜が山に帰る」と言っていました。
あく抜きは藁(わら)や鉋屑(かんなくず)などの木材を焼いた灰をバケツに入れ、そこに湯を一杯に注いで半日ほど置くと透明な上澄み液と沈殿物に分かれるので、この上澄み液だけをすくって鍋に入れるのです。量は蕨が浸る程度で、これを沸騰させて、折れ曲がらない大き目の器にのせた蕨に注いで冷めるまで待ち、水洗いすれば完了です。灰が手に入らない時は重曹を使いますが、その場合は蕨に重曹を降りかけて浸るまで熱湯を注げば終わりです。重曹をかけ過ぎると妙な粘りが出てしまいますから適量を工夫して下さい。
蕨(わらび)と独活(うど)のうま煮
材料(量は使う山菜の量に合わせて)・蕨・独活・昆布・砂糖・醤油・塩
作り方
1、あく抜き・水洗いした蕨を5センチ程度の長さに切り揃える。
2、昆布出汁で煮汁を作る。量は鍋に敷いた蕨が浸る程度
3、蕨を鍋の底に敷くように並べる。
4、煮汁を注いで火にかけてから砂糖、醬油・塩を加える(醤油を加え過ぎると色合いが悪くなるので注意=独活も同じ)。
5、落し蓋をして弱火で15分ほど煮含める。
※ここまでで「蕨の含め煮」になる。
6、あく抜き、水洗いした独鈷を3センチ程度の長さに切り揃える。
7、皮を剥き、20分ほど水に浸す。
8、蕨よりも少し濃い目の煮汁で20分ほど煮含める。
9、両方を混ぜ合わせて器に盛る。
蕨の信田巻き
材料(同前)・蕨・薄揚げ・砂糖・醤油・塩・昆布・干瓢(かんぴょう)
作り方
1、油揚げを俎板に敷き、擂粉木などを転がして圧し,長い一辺を残してで3辺に包丁を入れて開き。熱湯をかけて油抜きする。
2、昆布出汁に砂糖と醤油を加えて煮汁を作る。
3、あく抜き・水洗いした蕨を鍋の底に敷き、薄揚げをかぶして浸る程度の煮汁を注いで15分ほど弱火で煮含める。
4、干瓢を水に浸して柔らかくする。
6、薄揚げを上げて煮汁を絞って広げ、その上に蕨を隙間なく並べ、薄揚げからはみ出した部分を切る、
7、薄揚げをグルグルに巻いて2、3ヶ所を干瓢で縛る。
8、煮汁で煮立てて火を止めて冷まし、冷めてから食べ易い大きさに切って器に盛る。
独活の酢煮
材料(同前)・独活・料理酒・砂糖・塩・酢・化学調味料
作り方
1、独活を3センチほどに切り、皮を剥いて暫く水に晒してから熱湯に入れてよく茹でる。
2、鍋に水、料理酒、砂糖、塩を入れて煮る。
3、煮汁に独活を入れて2から3分ほど煮立て、酢を加えて3分ほど煮る。
4、火を止めて暫く蒸らし、冷めてから出す。
※単独で出すよりも焼き物などに添えた方が味わいが増す。

これが独活です。
- 2023/09/01(金) 15:42:22|
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一般的に山寺の裏手は墓地になっていますが、それより奥の山中には三昧所(さんまいしょ)と呼ばれる土葬だった頃に棺桶を埋めた場所があって人間の遺骸の養分を吸った土は非常に肥えていて山菜が見事に生育します。すると何も知らない都市部の人々がハイキングがてらの山菜採りに来て「立派な山菜が採れる場所」として口コミで広まり、山菜の季節になると多くの人たちが押し掛け、歓声を上げながら山菜採りに励みます。
ところが棺桶は中に土を入れて埋葬する訳ではないので土中に空間ができていて足に力を入れると腐った蓋を踏み抜いてしまうことがありました。当然、中には遺骨や埋葬品が入っているのですが都会の人々は気にも留めず帰り際に寺に寄って「裏山に落とし穴が掘ってあった。子供に注意してくれ」と苦情を言っていきました。こうなると山歳採りの人々が返った後、確認に行くのが小坊主の仕事になり、薄暗くなった三昧所を懐中電灯で照らして見て回る肝試しをする羽目になりました。
田舎の地方僧堂も同様だったので立派な山菜が大量に採れて畑で収穫する季節の野菜の端境期には雲衲の食材になっていました。
蕗料理の前に
1、蕗は生のまま皮を剥くと手が真っ黒に汚れてしまう。また剥きにくい。沸騰した湯に30秒程度漬けてから冷水に浸して冷ました後に剥くと手を汚さずに容易に剥くことができる。
2、蕗は水気が多いので煮汁は濃い目に作る。
蕗の青煮
材料(量は使う蕗の量に合わせて)・蕗・砂糖・塩・化学調味料・酢
作り方
1、皮を剥いた蕗を5センチほどの長さに切り揃える。
2、塩と酢を少量加えた水に20分間ほど晒して灰汁(あく)抜きをする。
3、真水に浸しながら水洗いをしてからザルに入れて水気を切る。
4、蕗が完全に浸る程度の量の砂糖と塩と化学調味料で甘辛い煮汁を作り、沸騰させてから蕗を入れて煮る。
5、もう一度、煮立ってきたなら鍋を火から下ろして蕗と煮汁を分けて冷ます。
6、冷めてから再び一緒にして漬けておき、煮汁をよく染み込ませる。
※蕗の青=緑色を残すのがポイント
蕗の昆布巻き
材料(同前)・蕗・なるべく薄い昆布・干瓢(かんぴょう)・料理酒・砂糖・醤油・酢
作り方
1、皮を剥いた蕗を4から5センチほどの長さに切り揃え、しばらく水に晒す。
2、昆布は水に漬けて柔らかくしてから水気は拭かずに竿などで干し、乾いたなら蕗と同じ幅に横切りにする。漬けた水は使うので捨てないこと。
3、干瓢は水に浸して柔らかくしておく。
4、蕗3,4本を昆布で巻き、中央部を干瓢で縛る。
5、昆布を漬けた水に砂糖と醤油と料理酒を同量ずつ入れて濃い目の煮汁を作る。量は昆布巻き全体が浸る程度。
6、煮汁に少量の酢を加えた後、昆布巻きを入れて落し蓋をして煮る。煮立ってくれば弱火にして昆布が柔らかくなるまで煮込む。
7、火を落としてからも鍋で煮汁に漬けたまま冷まし、冷めてから器に盛る。
蕗の揚げ煮
材料(同前)・蕗・油揚げ・昆布出汁・醤油・料理酒・砂糖・竹皮
作り方
1、油揚げを俎板(まないた)の上に広げて擂粉木(すりこぎ)などを転がして潰す。その後、長い一辺を残して切れ込みを入れ、開いて一枚にする。
2、油揚げを湯通しして油抜きする。
3、皮を剥いた蕗を油揚げの幅に切り揃える。
4、竹皮を十分に水に漬けて柔らかくして必要な数量を適当な幅に裂く。
5、蕗4、5本に油揚げを巻き、2箇所くらいを竹皮で縛る。
6、材料が浸る程度の昆布出汁に料理酒と砂糖、醤油を加えて濃い目の煮汁を作る。
7、中火で煮込み、冷めてから一口大に切って器に盛る。
蕗のから煮
材料(同前)・蕗(細いもの=新芽)・料理酒・醤油・一味唐辛子
作り方
1、細い蕗を皮つきのまま3センチくらいに切って30分ほど水に晒す。
2、熱湯に移して5分ほど茹でる。
3、煮汁を半分捨てて料理酒と醤油に唐辛子を加えて汁気がなくなるまで時々かき混ぜながら煮込む。
※醤油だけで味つけして煮込めば「伽羅蕗」と呼ばれる佃煮になる。
蕗の葉の煮つけ=廃物利用料理
材料(同前)・蕗の葉・塩・料理酒・味醂(酒の2割程度)・醤油・化学調味料
作り方
1、茎を取って残った葉を塩水で洗いながら虫が喰った穴などを除く。
2、蓋をしない鍋で葉を薄い塩水で茹で上げてからしばらく水に晒す。
3、固く絞り、5ミリ幅で細かく刻む。
4、鍋で料理酒と味醂を煮立てる。量は葉が全体に漬かる程度
5、葉を入れて弱火で煮込み、煮上りに醤油を差して化学調味料を加える。
※多目の醤油と少々の味醂、化学調味料で煮詰めた佃煮も美味い。
蕗のとうの煮つけ
材料(同前)・蕗のとう(開く前のもの)・味醂・醤油・化学調味料
作り方
1・蕗のとうの一番外側だけを取り除いてしばらく水に晒す。
2・ぬるま湯で茹でる。
3・茹で上がれば水を足して苦味が消えるまで4,5回はぬるま湯から茹でる。
4・蕗のとうが浸る程度の水に同量の味醂と醤油を足した煮汁で煮込む。
5・煮汁が半分程度になったなら化学調味料をふりかけてもう一煮立ちさせる。
6・火から下ろし、冷ましてから別に作った同じ煮汁で煮直す。
※蕗のとうの苦味を消すために何度も煮るが、好きな人は3の茹でる回数を減らす。

蕗の青煮
- 2023/08/01(火) 15:11:31|
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前回は米=飯は托鉢で集め、野菜は自給自足だった地方僧堂で満腹になるための食材だった大根の精進料理でしたが、今回は梅雨時には境内の竹薮でニョキニョキ生える筍を使った精進料理です。ただし、筍は土に埋もれている部分が柔らかくて美味しいので季節になると番人が指名されます。野僧の地方僧堂では支那竹=メンマが得意で好物の中国人の雲衲が筍番に立候補していて猪が喰い荒す音が聞こえると工具室から持ってきた鉈(なた)を持って飛び出して行きました。この雲衲は蝮を捕まえると焼酎漬けにしていましたが流石に猪肉入りの筍鍋にはなりませんでした。
また航空自衛隊の幹部候補生学校がある奈良基地には近くの法華寺の尼僧の墓苑が竹藪だったため大型連休が明けると連日のように筍の炊き込み飯になっていました。これは訓練が本格化する予告のようなものだったのですが、余り精がつく料理とは思えませんでした。ちなみに竹の北限は何故か航空自衛隊の北部航空方面隊と中部航空方面隊のバンダリー(境界線)と同じく岩手県から秋田県の中央部あたりで、そこから北は笹になります。
筍料理で初心者が頭を悩ますのは「灰汁(あく)抜き」なので先ずこれから始めます。
1、皮の剥き方・根の汚れた部分を薄く削ぎ取り、先端部は深く根元は薄く皮の厚さに従って切れ込みを入れ、そこに指を指し込んで一気に剥がすと簡単に剥ける。
2、米の砥ぎ汁か米糠を溶かした多目の水で茹でる。大きい筍は縦に2分して、えぐみを消すには少々の唐辛子を刻んで入れる。
3、沸騰したら中火に弱めて1時間以上は茹でて終わればよく洗ってから水に漬けておく。
筍の葛煮
材料(量は筍の大きさに合わせて)・筍、昆布出汁、醤油、吉野葛(なければ片栗粉)
作り方
1、筍を一口で食べられる程度に厚さ1センチほどの輪切りにする。太い筍は縦に半分、若しくは4分の1に割る。
2、鍋に昆布出汁を材料の八分目程度入れて浸し、そこに砂糖と醤油を1対3の割合で加え(濃い目の方が美味い)、落とし蓋をして煮つける。
3、煮汁が3分の1程度まで煮詰まったら水で溶いた葛粉を加え、汁にとろみが出るまで手早くかき混ぜる。
若筍煮
材料(同前)・筍、若布、味醂、砂糖、昆布出汁、塩,醤油
作り方
1、茹でた筍を一口で食べられる程度に厚さ1センチほどの輪切りにする。同前
2、若布を水で戻して芯の筋を取り、適当にザク切りにする。
3、鍋に昆布出汁を筍が完全に沈む程度まで入れて火にかけ、味醂、砂糖、醤油で好みに味付けする。
4、15分ほど煮たら若布を筍の上を覆うように入れて落とし蓋の代用にして、一煮立ちするまで煮る。
5、盛りつけは皿に筍を並べ、上に若布を広げて煮汁をかける。好みで胡桃などの砕いた木の実をふりかけても美味しい。
筍の味噌煮
材料(同前)・筍、味噌、調理酒、砂糖、胡麻油
作り方
1、茹でた筍を2から3センチの賽の目切りにする。
2、フライパンに多目の胡麻油をひき、切った筍を炒める、
3、味噌を筍の3分の1ほど加えてさらに炒め、調理酒と砂糖を加える。
4、汁の量を増やすために水を足して、そのまま汁がなくなるまで甘辛く煮込む。
筍の美味煮
材料(同前)・(新鮮で柔らかい)筍、醤油、砂糖、調理酒
作り方
1、筍を2センチくらいの厚さに切る。
2、鍋に筍が沈む程度に醤油、砂糖、調理酒を同量で入れ、落とし蓋をして中火で煮る。醤油は半分ずつ始めと終わりに入れた方が筍が軟らかく煮える。
筍と昆布の佃煮風甘辛煮
材料(同前)・使い残しの固い部分の筍、昆布、醤油、砂糖、山椒の実
作り方
1、筍を厚さ5ミリ程度に薄切りにする。全体に小さ目に切る。昆布を幅2センチ、長さ3センチ程度に切る。
2、鍋に筍と昆布、山椒の実に筍が沈む程度の水を入れて弱火にかける。
3、昆布が十分に戻ったところで同量の醤油と砂糖を加える。佃煮風にするのでかなり多目。そのため醤油は3度に分けて入れた方が美味しく仕上がる。
4、汁がなくなるまで煮込む。
番外編・支那竹=メンマ
材料・筍、中華スープ(湯で溶いて1合)、料理酒大匙1、醤油小匙2、味醂小匙2・胡麻油大匙1
作り方
⦁ 茹でた筍を一口大に切り、胡麻油で炒める。
⦁ 料理酒、醤油を加えて中火で煮る。
⦁ 汁気がなくなったら味醂を加えて更に水気を飛ばす。
※中国人の雲衲が勝手に買ってきた中華スープが精進料理に許されるかが議論になりましたがそれなりに美味かったので不問に伏されました。

地方僧堂での夜食(ドイツ人と中国人の雲衲と)
- 2023/07/01(土) 12:50:25|
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