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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ92(これも実話です)

順調にコンサートが進行し始めるとデモ隊の中には会場に乱入しようとする者が出て、我々の外側で警備に当たっている警察官たちと押し問答になった。すると警察官の間隙を狙って1台の軽4輪トラックが突入して立ちはだかった私を正面で撥ね飛ばした。幸い柔道2段の私は後方に1回転して怪我はなかったのだが、驚いたのは一部始終を見ていたはずの沖縄県警の警察官の対応だった。
「危険なことをするな」警察官は撥ねたトラックの運転手ではなく私に向かって注意を始めた。その隙にトラックの運転手は「自衛隊死ね」と捨て台詞を残して逃走したにも関わらず、これを放置したのだ(運転手は顔や捨て台詞の口調から明らかに本土の人間だった)。私はトラックのナンバーを憶えていたので、それを言っても警察官はメモをしただけで手配の通報はしなかった。
「これは交通事故ではないのか、逃走した運転手を引き逃げの現行犯で逮捕しろ」私も流石に怒り心頭で強く抗議したが警察官は耳を貸そうともしない。そして「進路妨害による危険行為だ。第一、お前は怪我をしていない」と詭弁を弄した。
「相手が死ねと言った以上、殺意があった殺人未遂だ」法学部中退の私が法理論を根拠に執拗に喰い下がると現場責任者らしい幹部警察官が出てきた。
「自衛隊がこんな行事をやらなければ警察官も暑い中、大変な勤務につかなくてすむんだ。迷惑を掛けている立場を理解しろ」と彼らの本音で説諭した。
以前から私有車を購入した隊員への安全指導で「沖縄の人間と事故を起こして警察官を呼んでも、自衛隊だと判ると全面的にこちらの過失にされるから身分は可能な限り隠せ」と説明しているのは知っていたが、まさか我が身に降りかかってくるとは思わなかった。
ところで豊見城村の公会堂でデモ対処をしている時、デモ隊と我々の周りをどう見ても怪しい浮浪者がうろついていた。それは本土の公園や駅などにいるボロボロの厚着をしてボサボサ頭で顔を真っ黒に汚した浮浪者だったが周囲から完全に浮いている。沖縄の浮浪者は厚着をしなくても凍えることがないため小ざっぱりとした軽装で、夜には公園のトイレで水浴びをしてからベンチで横になって過ごすので意外に身綺麗なのだ。
その浮浪者は立ち止まっては写真を撮っているようなので影で声をかけると那覇地方調査隊の隊員だった。そこで沖縄の浮浪者の服装を説明すると「那覇に来たばかりなので知らなかった。だったら暑い思いをしたのは無駄だったのかァ」とガックリきていた。幸いデモ隊も大半は本土から来た活動家だったので違和感なく浮浪者だと思ってくれたのかも知れないが、疑われて身分がバレれば大問題になっただろう。後日、基地で会ったがカツラを取って制服を着ていれば普通の隊員だった。
その夜、美恵子に車にはねられたことを話すと「私のニンジンさんに何をするのさァ」と怒っていた。その剣幕はデモ隊よりも凄かった。
  1. 2015/05/17(日) 08:52:32|
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