fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ241

平成元年の祝日は見事に外れだった(この頃は第2、第4土曜日のみが指定休日)。9月15日の敬老の日は金曜日だが翌日は第3土曜日なので半日勤務、9月23日の秋分の日は第4土曜日の指定休に重なったが代休はない。10月10日(当時)の体育の日は火曜日だから月曜日は平日だ。このためか防衛大学校組は9月の中旬に卒業し、入れ替わりの部内組は10月10日過ぎに入校してくる。我々部外組だけが割を喰う形なのだ。
11月に入ってからも3日の文化の日の翌日は第1土曜日なので半日勤務、23日の勤労感謝の日は木曜日であり、今年から祝日になった12月23日まで第4土曜日と重なっている。つまり1度も連休にならないのだ。
自衛隊では毎月2日ずつ加算される休暇日数を入院などに備え(病気休暇を取ると賞与などに影響があるため)、年度を繰り越すことができる30日まで貯めることにしていため、部外から入隊した同期たちにも年次休暇はなるべく取らせないようにしていた。そうして迎えた年末年始休暇に私は激怒することになった。
美恵子が選んだ防府市内のアパートに帰宅しても私は課題を抱えていて淳之介と遊ぶことができなかったが、そんな昼過ぎに電話が入った。
「もしもし、モリヤですが」「えッ?モリヤさんですよね」「はい、モリヤです」電話の主は私が出たことに異様な反応をする。すると台所から美恵子が慌てて飛んできた。
「あのう、河村理容店と申しますが、奥様には大変お世話になっています」「えッ、美恵子にですか?」私の返事を聞いて美恵子は奪うように受話器を取り、背中を向けて話を始めた。
「はい、美恵子です。はい、はい」美恵子の口調からすると業務連絡のようだが、こちらで仕事を始めたことは聞いていない。私は美恵子を疑い始めた。
「はい、判りました。大丈夫です。これから行きます」美恵子は受話器を置いて振り返ると一方的に話を始めた。
「私が手伝ってる店が年末で忙しいから来てくれって言うのさァ」「手伝ってる?いつからだ」「そんなことは良いさァ。急いでいるから行くよ。淳ちゃんをよろしく」そう言って部屋の鏡台から化粧品が入ったポーチを持ち、壁に吊ってあるコートを取ろうとする美恵子の肩を私は掴んだ。
「仕事を始めたのか?」「だから急いでいるんだって」「答えろ!」「痛い!乱暴は止めて」そう言って手を振りほどいた美恵子は部屋を飛び出していった。
私の大声で昼寝をしていた淳之介が目を覚まして泣き出した。抱き上げても最近は私の腕の感覚を忘れてしまったのか泣き止まない。それでも私が沖縄民謡の子守歌を口ずさむとようやく落ち着いて眠りに落ちた。
「天からの恵み 受けてこの世界に 生まれたる我が子 私が守り育てる・・・(童神)」泣き寝入りした淳之介の寝顔を眺めながら私の胸には怒りよりも悔しさが込み上げてきた。
も・岡田奈々イメージ画像
  1. 2015/10/13(火) 08:39:35|
  2. 夜の連続小説8
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<振り向けばイエスタディ242 | ホーム | 10月13日・ファティマでの集団催眠をローマ教皇庁が奇跡と認めた。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/2697-5c44723e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)