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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ251

富士学校ではキャンプ・フジのアメリカ海兵隊と交流がある。訓練後のパーティーで私は彼らと談笑するのが楽しみだった。
那覇での海兵航空隊とのパーティーではジュディと知り合い、基地内でイケナイことをしたが今回は逞しい男性の士官・将校だけだ。然も服装は迷彩服で、袖をまくり上げた太い腕には護符の刺青が見える。
一方、我々は迷彩服を1着しか持っていないので訓練が終われば洗濯しなければならず、OD色の作業服(一応は戦闘服と呼んでいる)だ。
そんな妙な風景のパーティー会場で私は同じバーボンを飲んでいる大尉と談笑を始めた。
「ルテナン・モリヤ、君の英語は随分と話し慣れているね。バーボンの発音なんて普通の日本人にはできないよ」確かにバーボンは「ボォウブォン」に近い発音なので片仮名表記では正確な表現ができない。
「イエス・サー、昔、沖縄にいましたからフティマ(=普天間)の海兵隊員とも付き合いがありました」海兵隊と空軍は仲が良くないと聞いていたので自分が「元航空自衛隊だ」とは言わなかった。
「普天間かァ、奴等は海兵隊員なのか空軍なのかよく判らん」案の定、大尉は腹に一物あるような顔で答える。ようするに技術者集団の航空部隊は腕と度胸で勝負の海兵隊の中では異質な存在なのだ。
「岩国にも行ったことがありますよ」「あそこもエンジニアばかりで同じだよ」岩国基地には曹候学生の教え子たちを引率して日米親善デ―に行っただけだ。
それにしてもWM(ウーメン・マリーン=女性海兵隊員)のジュディは男性隊員にもひけを取らない筋肉の持ち主で私も腕相撲で負けた。あれでも1人前の海兵隊員と認められないのでは地上戦闘員はどんな連中なのだろうか?
「君は航空部隊にばかり関わっているが航空ファンなのか?」大尉は手に持ったグラスのバーボンを飲み干すと赤くなった顔で訊いてくる。
「ノ―・サー、この通り武道ファンですよ」私が胸の格闘徽章を示して答えると大尉は唇を歪めた。
「ジャパンのアーミーもそう言ったスペシャリストの徽章が好きなんだな。海兵隊は海兵隊員であることが特殊能力なんだよ」言われてみると海兵隊員の胸には特殊技術を示す徽章類は一切ない。空挺やレンジャー、私のような格闘も彼等には当たり前の戦闘技術なのだろう。
「一応、アーミーですからドレース ドギィ(犬ころ=米陸軍へならえ)ですね」ミリタリー・スラングを使ったジョークに大尉が笑ってくれたので私は追い打ちをかける。
「頭はジャ―ヘッドですが、海兵隊ではありません」そう言って美恵子が御手製の海兵隊刈りの頭を撫でて見せると大尉は「スラングにも詳しいなァ」と感心して笑ってくれた。
アメリカ海兵隊は太平洋戦争の好敵手・日本陸軍には敬意を抱いてくれているのだ。
  1. 2015/10/23(金) 09:17:46|
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