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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ253

私は富士学校でもやらかしてしまった。それは座学「演習対抗部隊」の講義でのことだ。
政治的な制約上、仮想敵を作ることができない自衛隊では「演習対抗部隊=演習の時の敵役」と呼んではいるが、解説されている人員、兵器、常用する戦術などを見ると実際は「甲」がソ連、「乙」は中国、「丙」が北朝鮮なのは明らかだ(現在はこの呼称と分類は止めた)。その点、航空自衛隊は英単語=米軍資料として巧みに逃げている。
私は沖縄時代に米海兵隊の友人からソ連軍と中国軍の情報を仕入れていたので、この内容が一昔前のアメリカ軍の資料の翻訳であることが判った。
教官がその教程(持ち出し禁止なので講義が終了すると回収された)を使いながらする解説に疑問を感じて手を挙げてしまった。
「ソ連軍の主力戦車のTー72(当時)は現在、補強材を装着しているようになったと聞いていますが」この頃、ドイツのレオパルドⅡやアメリカのMー1などは装甲を二重構造にしているため避弾効果を狙った曲線(命中した砲弾が逸れることで信管が作動・破裂しない)にはなっておらず、直線的な外観をしている。装甲が二重であれば破裂した火炎や破片が内側の壁で遮断されるため分厚い金属装甲よりも強度が高く西側では主流になりつつあった。しかし、ソ連はエンジン出力の向上や主砲の口径の拡大などの改良が中心で出遅れたため、応急処置的に装甲の上に箱状の防弾補強材を装着しているようだ。この情報もアメリカ軍から仕入れた。すると教官は少し不快そうな顔をして答えた。
「そのような話があることは知っているが、陸上幕僚監部が発刊する教程が改定されるまではこの記述が対抗部隊(甲)の戦車だ」「はい、判りました」ここで引き下がるところが陸上自衛隊生活で身についた処世術だろう。
しかし、それで終わらないところが私の病気だった。今度は対抗部隊(甲)の戦術だ。
「ここで紹介されている戦車の横隊で蹂躙する戦術は主にヨーロッパ戦線で行ったものですが・・・」「違うと言いたいのか」教官は私が手を挙げた時点で身構えている。
「ソ連はアフガニスタンの山岳戦で戦車が通用しないことを学んでいます。おそらく日本でもその教訓は忘れないでしょう」「だから?」「ソ連は機甲師団、自動車化狙撃師団だけでなく空挺師団を合わせて一五〇個有しています。むしろ制空権を奪った後、日本の各地に空挺降下する可能性の方が高いのではないでしょうか」「それを3等陸尉が主張してどうするのだ」「教官に申し上げれば陸幕にも届くのではないかと思いまして」「お前は俺を使う気か」「とんでもありません」ここでも教官の声に怒気が混じったところで撤退した。しかし、幹部候補生学校の卒業序列を思えば今更、気をつかっても無駄だろう。そこで対抗部隊(乙)でもやらかしてしまった。
「中国の人海戦術に対する評価は間違っていませんか」「中国ではない演習対抗部隊の乙だ」「なるほど・・・」教官にとって私は教場対抗学生になっているようだ。
それにしても演習対抗部隊(丁)=アメリカ、(戌)=韓国は必要ないのだろうか。私は韓国軍が明らかに日本との戦闘を想定した演習を行っていることを知っているのだ。
中国人民解放軍演習対抗部隊(乙)ではない。
  1. 2015/10/25(日) 08:51:29|
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