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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ636

銃撃戦騒動に技術教育問題と我々の活動を妨害するための画策が続発すると地元の人たちの間で「自衛隊が撤収するのではないか」と言う噂が流れ始めた。その出処は言うまでない。
「自衛隊から何か迷惑を被ったことはありませんか?」トバラ市内で粗探しに励んでいるフリー・ジャーナリストたちは視線が合った人たちにこの質問をしていた。それが銃撃戦騒動の後、日本での撤退の動きを支援するため質問を追加したのだ。
「日本では自衛隊の撤退を求める声があるのですが、何か迷惑を被ったことはありませんか?」広くはないトバラ市内で噂はアッと言う間に隅々まで広まった。
「ジエータイが帰ってしまったら我々の仕事はどうなるのですか?」「まだ手伝ってもらうことは一杯あります」「もっと仕事を教えて下さい」現場でも指揮官は作業員たちに取り囲まれて作業の指示が出せなくなっている。それでなくても先日の報道を受けて言葉には細心の注意を払わなければならず苦手な英語の構文に頭を悩ましていた。
「ジエータイは帰ってしまうみたいだな」「日本で何か問題が起きたのかも知れないな」指揮官以下の隊員たちがハッキリ返事しないため作業員たちは不安を募らせるばかりだ。自衛隊がサラート(礼拜)に合わせてくれている休憩時間でも儀式が終わればその話題になっている。
「街で見かける日本人に訊いてみよう」結局、トバラ市内で見かける日本人に確認することを決めてしまった。
「日本人、ジエータイは帰ってしまうのか?」各部族の作業員の中でも英語ができる者が帰宅途中で見かけた日本人に声を掛けてみた。この男が街中で色気を振りまいている女の相手であることは噂で知っていた。すると男は愛想笑いしながら答えた。
「自衛隊は本来、海外に出てはいけないのです。だから問題があれば帰らなければなりません」
思いがけない話に作業員は隣にいる別の作業員に通訳するのを忘れて唇を噛んだ。
「それを止める方法はないのか?」「市民が帰らないように訴えるデモをやることでしょう。それが日本に伝われば政府も考え直すかも知れませんね」作業員は希望を見出してユックリうなずいた。
「そうか、判った。次の休日にやることにしよう」「アピールの幕は私たちが用意しますよ。隊員さんには言わないようにして下さい」作業員は日本人からの支援の申し出に礼を言うと相棒に説明しながら帰って行く、男はその背中を皮肉に笑いながら見送った。

休日の朝、宿営地には数百人規模のデモ隊が押し寄せた。彼らが掲げる横断幕にはこのような言葉が並んでいた。
「ジャパン セルフ ディフェンス フォース ゴー ホーム(自衛隊は帰れ)」「コンスティテショナル バイオレーション(憲法違反)」「ジャパン エンペアル アーミーズ チャイルド(帝国陸軍の子供)」ゲート前にはフリーのジャーナリストたちがカメラの砲列を並べている。それを中から見て私たちは呆れてしまった。
「自衛隊を直訳するなんてすごい英語力だな」「帝国陸軍の子供なんて歴史にも詳しいぞ」「驚いたな憲法違反なんて楽屋ネタ(=内部事情)まで知っているよ」要するに今回も明らかにジャーナリストによる自作自演なのだ。そろそろジャーナリストたちもネタ切れになっているのかも知れない。こうなると苦し紛れの一手には要注意だろう。
「北キボールで自衛隊の撤収を求める住民デモ」数日後に届いた新聞のファックスではこのような見出しが躍っていた。それでも記事の写真では横弾幕の文字の部分はトリミングしてある。流石に大手新聞社の編集部は見え見えの演出には気がついたようだ。つまりジャーナリストたちの苦労・努力は徒労に終わってしまったことになる。ところで経費は自腹だったのだろうか?
  1. 2016/11/11(金) 08:35:56|
  2. 夜の連続小説8
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