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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ638

岡倉が韓国の診療所に対する市民の評判を調査し終えて帰国の準備を始めていた頃、アフガニスタン国内ではゲリラによる攻撃が頻発していた。アメリカ軍は「タリバーンの制圧」を宣言すると次の戦争に備えて兵力の撤退を進め、後はNATO軍が引き継いでいるのだが、先ずパトロールに巡回している装甲車が地雷で擱座した後、携帯式対戦車ミサイルで破壊され、乗員が死亡する事件が各地で起こった。続いて北部同盟軍に兵器・弾薬を運搬している輸送ヘリコプターが携帯式地対空ミサイルで撃墜された。
さらにヨーロッパ人のジャーナリストやボランティアが殺害される事件が連日のように発生している。この街では表面的には平穏が保たれているように見えるが、男たちの目に憎悪と殺気の暗い光が灯っていることを岡倉は察知していた。
その日、外出を許された白一日(ぺク・イルイル)上等兵と衛生兵の田智賢(チョン・ジヒョン)上等兵は誘い合って市内に出かけた。開戦当初の空爆で破壊された市内では行商人の他に物を売る店はない。それでも2人きりの時間を過ごすだけで気持ちがウキウキと沸き立ってくるのが若さ=青春だろう。
「これってデートだよね」「うん、戦闘服だけどね」「それでもペアルックじゃない」そう言うと田上等兵は腕をからめてくる。白上等兵は肘に押し当てられた乳房の弾力に生唾を飲んだ。
「智賢、姦らせてくれよ」「馬鹿!昼間から何を言っているのよ」2人は診療所の倉庫での行為を重ねているがそれでも田上等兵は拒否した。その恥じらって膨らんだ表情に白上等兵は欲情して強く肩を抱くと破壊された街並みの奥に連れて行った。
「草むらで寝転んで野の花の中で抱かれたかったのに・・・」人の目が届かない焼け残った家の奥でズボンを下げられながら田上等兵が口にした言葉に白上等兵の頭は少し冷やされた。確かにデートならばムードも考えなければいけなったはずだ。
「ごめん、もう少し我慢するよ」「本当にいいの?嬉しい」白上等兵が恋人に戻って謝ると田上等兵も幸せそうに微笑んで、口づけしてきた。
「何だ使わないのか?」その時、3人の男たちが押し入ってきた。それを目にした田上等兵は白上等兵の口の中で悲鳴を上げる。驚いて振り返ろうとした白上等兵は首筋を掴まれ、廃材が転がっている土の床に転がされた。
「止めろ!」床に押しつけられて首筋にアラビア式のナイフを突き付けられた白上等兵は叫んだが、言語の前に願いが通じるはずはない。目の前で田上等兵がナイフに怯えながら裸になるのを見ているしかなかった。
「お前らは我々の妻や娘を裸にしているそうだな」「これはその罰なのだ」男たちは交代で田上等兵を抱きながら涙を流している白上等兵に声を掛けた。イスラム教徒にとっては女性が夫や親以外の男性の前で体型を晒すことはイスラム法に背く大罪であり、男女一緒の病室内で薄い患者服を着せていることは女性の所有者である夫・父親にとっては許し難い屈辱なのだ。
その時、白上等兵を押さえている男の順番になったようで突きつけているナイフを鞘に納めた。同時に白上等兵は身をよじって逃れると建物を飛び出して診療所の待機室に走り、銃架と金属製の弾薬箱の鍵を壊して自分の銃と実弾を取り出した。
鍵を壊す音を聞きつけた金軍曹が廊下を走ってきたが、その時には外へ駆け出していた。

現場に戻るとすでに男たちの姿はなく田上等兵が裸のまま放心状態になって寝かされていた。その頭には何故か戦闘帽を被らせてある。つまり全裸ではなかったと言うことだ。
白上等兵が服を着せた恋人を背負って診療所に帰るとそこには憲兵隊のジープが停まっており、2人の姿を見つけた憲兵たちが駆け寄って拳銃を突きつけた。
韓国軍・イメージ画像
  1. 2016/11/13(日) 00:07:38|
  2. 夜の連続小説8
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