fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ647

「軍曹は外を警戒せよ」掘っ立て小屋に着くとモールス大尉はノールデルメール軍曹に指示を与え、私と2人で中に入った。その時、銃を構え即座に射撃できる姿勢を取るのは当然である。
「O mijn God(英語のオー・マイ・ゴッド)・・・ウグググ・・・ゲーッ」灯火がない薄暗い小屋の中で目が慣れてくるとモールス大尉は絶望の常套句を呟いた後、地面に嘔吐した。
農業用の柱などが積んである小屋の中央部には黒い髪の男の首とそれを切り離した胴体が置いてある。その奥には黒く長い髪の女性が全裸にされた上、女性器に棒を差し込まれて死んでいた。私は雑納から懐中電灯を取り出すと江戸時代の晒し首のように地面に立てて置いてある男性の首を確認した。それはやはり何度か見かけたことがある日本人ジャーナリストだった。
続いて身体を照らすと両腕は背中に回して縛り付けてあり、前のめりの姿勢で首を切断されている。首からの出血で地面は黒く染まっていた。
私は呆然としているモールス大尉は無視して女性の遺骸に歩み寄った。先ず顔を照らすとやはり阿部真理さんだ。長く美しかった黒髪は砂にまみれて、若い隊員たちが密かに胸を時めかした美貌も白目を剥いていては見る影もない。しかも口からは男性の体液が溢れている。手順として冷たい首筋に指を当てて脈拍を確認したが始めから無意味だった。
私は目を閉じさせようと思ったが、時間が経過していると困難であり検屍を受けるまではこの状態を維持するべきであると判断してポケットから取り出したハンドタオルを顔に掛けた。
裸にされている女性の身体を見るのはためらわれたが任務として状況を確認した。形の良い乳房には歯型が残っており、かなり激しい性的暴行を受けたことが推察される。そして下半身には農業用の支柱と思われる鉄の棒が差し入れてあり、女性器には血と男性の体液が滴ったまま固まっている。その時、ノールデルメール軍曹が駆け込んできたので私はMー6短機関銃を構えて「フリーズ(止まれ)」と叫び、軍曹は両手を上げた。
「小屋の裏で携帯電話を発見しました」軍曹は入口で呆然と立っている大尉の顔を一瞥すると懐中電灯を消した私に報告した。やはり日本人女性の無残に殺害された全裸の肢体を外国人の目に晒すことは忍びなく、本当はムシロやシートを探して掛けるつもりだったのだ。
「そうか、明るい外で確認しよう」私が歩み寄る間に軍曹も目が慣れてきたのか固まったようになってしまっている。私も残酷な場面に慣れている訳ではないのだが、航空自衛隊で墜落事故現場や自死の遺骸を見ているため神経が麻痺してしまっている部分があるのは確かだ。
「大尉、軍曹、この携帯電話を操作しますから立ち合って下さい」固まってしまった2人に声をかけて無理やり外に連れ出すと初めて見る携帯電話を操作してみた。するとガラパゴスな日本製とは違い操作は比較的簡単で、携帯電話には縁が薄い私にも扱えるようだ。
登録画像を確認すると阿部さんを強姦する場面が続いている。やはり犯人の遺留品なのだ。そこでキーボタンのシンボルマークで動画に切り替えて再生して見ると音声まで始まった。最初は拉致の場面からだ。
「何?貴方たちは何?私たちをどうするの」阿部さんの恐怖に引きつった顔が大写しになっている。英語を忘れて日本語で叫んでいるところを見ると突然の襲撃だったことが判る。
「何をする!その手を放せ」最期まで名前を知らなかった阿部さんの同伴者が日本語で叫びながら抵抗するが後ろから頭を殴られた後、首筋にナイフを突きつけられた。
男性は地面に押しつけられて後ろで腕を捩られた。そしてそのままロープで縛られると無理やり立ち上がらされた。
「大丈夫?」阿部さんの心配そうな声に「大丈夫だ。俺が何とかする」と日本語で答えたが、そのままワゴン車の後部ドアが開かれると先に男性が放り込まれ、続いて阿部さんが突き倒された。後部座席から2人の姿を写し、ドアが閉められたところで第1場面は終わった。
  1. 2016/11/22(火) 09:17:20|
  2. 夜の連続小説8
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<11月23日・いい兄さんの日 | ホーム | 11月22日・いい夫婦の日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/3531-9fb89965
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)