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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

11月23日・いい兄さんの日

明日11月23日は単なる語呂合わせで「いい兄さんの日」だそうです。ただし、言い出しっ屁は判りません。
野僧は2歳年下の妹が生まれて以来、娘を溺愛する父親とその顔色を伺うことしかしない母親から「いいお兄さん」であることを強要され続けてきましたから、ワザワザこんな日を作るのは止めてもらいたいものです。
日本では古事記・日本書紀の「海幸山幸」や「成務天皇とヤマトタケルノミコト=倭建命(古事記)・日本武尊(日本書紀)」などに始まって奈良・平安時代の宮中の権力争いとその締め括りの保元の乱、鎌倉時代の頼朝さまが範頼くん・義経くんを滅ぼした源氏の兄弟争い、さらに戦国時代にも織田信長さまと信広くん、伊達政宗さまと政道くんなどの家督相続を巡る跡目争いの数々、江戸時代になっても徳川家光さまと忠長くんの将軍家に始まり島津斉彬さまと久光さんなど大名家まで「兄弟愛」よりも「兄弟争い」が歴史ドラマの定番になっています。
現在は「一姫二太郎」と言う古語を1女2男の3人姉弟のことだと思っている人が多いのですが、実際は1番目が女で2番目は男の方が上手くいくと言う意味です。
姉は生まれながら身についている母性本能で弟を育てることができるのに対して兄は父親代わりにはなれず、弟や妹には周囲から特別扱いされて威張っているだけの目障りな存在にならざるを得ないのでしょう。
そんな中、「いい兄さん」を描いた古典落語があります。それは「鼠穴(ねずみあな)」と言う題名で、幼い頃に田舎から江戸へ奉公に出て大店(おおだな)の主人になっている兄の元へ弟のタケ次郎が訪ねてくるところから始まります。
タケ次郎は「悪友に誘われて茶屋酒の味を覚えて父親が死んだ時に兄が譲ってくれた田畑を手放さなければならなくなった」と詫び、「江戸で商売を始めたいので雇ってくれ」と頼みました。しかし、兄は「自分で商売を打て」と勧め、元手として紙に包んだ金を渡しました。
タケ次郎は周囲の人たち聞いていた「情を持たない冷血漢」と言う悪評とは全く違う兄の態度に感激しながら店を出ると渡してくれた紙包みを開きましたが、中には3文が入っていたのです。
タケ次郎は兄の仕打ちに怒りながらもそれを元手に商売を始めました。3文で米俵を解いた藁屑を買うとそれを細い紐にして穴が開いた硬貨を通す「差し」を作り、それを売った元手で今度は俵を買い、それを打って草鞋を作り、それを繰り返しながら手を広げ、朝から晩まで働きに働き、やがて土蔵を3つ持つ大店の主人になりました。
そんなある日、タケ次郎が兄を訪ね、元手として借りた3文と利子の10両を返すと兄は大喜びして先日の真意を語ったのです。あの時のタケ次郎は茶屋酒の気分が抜けておらず、10両貸せば5両を元手に5両で前祝いと酒に手を出しかねなかった。だからこそ「二束三文」のはした金を渡したのだと言うのです。この話に感激したタケ次郎はあれから飲んでいなかった酒を勧められ、酔って泊まることになりました。
ところが夜中に火事が起こり、タケ次郎の店が全焼し、鼠が作った穴から火が入って3つの土蔵まで焼け落ちてしまいました。
そこからは立ち直ることができず再起の資金を借りに兄を訪ねますが冷たく追い返され、9歳の娘を吉原に売って作った元手もスリに掏られてしまい、首を吊ったところで目が覚めます。
うなされていたことを兄に言われて悪夢の内容を説明すると「腹の中でワシのことを恨んでいるからそんな夢を見るんだ」「夢は土蔵の疲れだ」と落ちがつきます。
この落ちは当時の医術の訓戒であった「悪夢は五臓(ごぞう=5つの臓器)の疲れ」に「土蔵」を掛けているのですが、庶民には難解であまり上手い落ちとは言えません。
やはり兄は憎まれ役となって弟を発奮させることが定番のようです。
  1. 2016/11/22(火) 09:18:35|
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