古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

今こそ「空戦規則」を制定するべきだ。

人類が正義に固執する限り決して逃れ得ない業(ごう)である戦争を野蛮な無制限の相互殺戮から文明人の行為の範疇に納めるための道具として陸戦規則、海戦規則があります。
このうち陸戦規則が1899年にオランダのハーグで開かれた第1回万国平和会議で採択された国際的武力紛争関係法規であるのに対して海戦規則は同時期まで主にヨーロッパの海軍の間で順守されてきた慣習法であり、その後、艦船の発達や戦術の開拓により新たな法規が必要になると紳士協定として追加されるのと同時に国際社会に普及する自発的努力が継続されてきたため同様に国際的武力紛争関係法としての機能を果たしていました。なお1970年に設立された人道法国際研究所が独自の研究成果を加えて体系化した条文を提唱し、現在はこちらを海戦規則とするようになっています。
この陸戦規則により戦闘員と文民の分別基準と行動規定が定まり、戦争は交戦意思を有する戦闘員同士が銃先を向け会うことで正当行為となり、明らかに文民と識別できる相手に意図的な攻撃を加えることや規定通りに降服の意志表示をしている者を殺傷することは戦争犯罪とされました。戦争に使用する戦術や武器は相手を殺傷することを目的としていても苦痛は必要最小限としなければならず、損害も戦術上の必要最小限としなければならないとされました。
海戦規則はより実用的で、軍用艦艇と商船の区分を陸戦規則ほどには明確にせず、商船が軍事目的使用されている可能性が排除できない限り攻撃目標にすることが許され、降服に関しても「われ降服」の旗立信号と移管されたことを示す敵国旗を掲揚すると共に機関を停止しなければなりません。その一方で戦闘能力を喪失して退艦している乗員を攻撃することが戦争犯罪になるのは陸戦規則と同じ趣旨です。
ところが第1次世界大戦で初登場した航空機は驚くほどの速度で発達し、始めは上空からの偵察機としてしか使用していなかったはずが、エンジン出力の向上により搭載量に余裕ができると手投げ爆弾を積むようになり、やがては上空で敵機の操縦者を拳銃で撃ったことから空中戦が始まり、それが爆撃機や戦闘機になって終戦を迎えたのです。
当然、この新兵器による戦闘方法を規定する国際法規の制定を求める声は起きたのですが、新たな産業である航空機メーカーの開発競争は軍用機だけでなく平和利用を名目にした航空機全般で熾烈を極めており、国際法によって性能に制限を加えることで航空機全体の発達の可能性を阻害することになり、むしろ兵器としての可能性を追求する声の方が高まり、空戦規則案が作成されて1922年のワシントン海軍軍縮会議に提出されたものの審議を尽くすことなく保留となりました。したがって現在も空戦規則案は案のまま存在し、それに代わる機能を果たしているROE(交戦規定=紛争当事国が自国軍に与える戦闘の実施基準。自衛隊では訓練実施基準)の根拠的扱いを受けることも多いようです。
しかし、この空戦規則がないまま第2次世界大戦に突入してことで人類にとって戦争は野蛮な残虐行為に堕してしまいました。ドイツやフランス、ドイツに学んだ日本では法令を行動規範として理解するため空戦規則が存在しなくても、陸戦規則や海戦規則の趣旨から類推して戦闘行為に自己規制を加えていましたが、イギリス、アメリカは法令を禁止規定とするため国際合意を経た法規がない以上、戦闘行為の限界の設定はあくまでも紳士協定に過ぎず、陸戦・海戦では実施できない大量殺戮を航空機を使用して繰り広げるようになったのです。
イギリスがドイツの古都・ドレスデンに加えた明らかに文民を狙った無差別爆撃やそれを踏襲・模倣したアメリカが陸軍航空軍が独立した空軍となるために陸海軍以上の戦果を上げる必要に駆られ、日本全国の軍事目標ではない都市に無差別爆撃を繰り返して大量の文民を殺害したことも違法とは認めていません。
同様に表向きは海戦規則を順守していたアメリカ海軍も航空母艦から発艦した航空機は別物で、軍事施設がない農村や漁村の文民、しかも女性や子供たちを低空飛行から機銃掃射して殺傷したのですが、これも戦争犯罪にはなっていません。逆に坂井三郎中尉などの日本のパイロットたちも脱出して落下傘で降下しているアメリカ軍のパイロットを上空で銃撃して殺害していますが、戦争犯罪として訴追されていません。
現在、航空機の開発はステレスなどの付加的能力での競争になっており飛行性能に関する画期的な新技術は出ていないようです。ならば今こそ空戦規則を制定して空戦にも戦闘員と文民の分別を厳格に規定すると共に無差別爆撃や過剰な威力の爆弾の使用・製造を禁止し(対北朝鮮用は除く)、さらに飛行に人間の判断と意志が働きにくい無線誘導機、戦闘行為の確認が困難になるステルス機も禁止するべきです。これらの技術開発で後れを取っているロシアや中国などの常任理事国は賛同するのではないでしょうか。
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  1. 2017/08/26(土) 09:21:26|
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