古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

9月1日・サハリン上空で大韓航空機が撃墜された。

昭和58(1983)年の明日9月1日に当時はソ連領だったサハリン上空で大韓航空007便のボーイング747が撃墜されて乗客と乗員269名が死亡しました。
この日、野僧が勤務していた那覇基地でも早朝4時に非常呼集が発令され、戦闘機に搭載する弾薬を搬出する作業員に当たっていたため弾薬作業所に急行したのですが、その非常呼集のラッパに長音2回の訓練冠譜が付いていなかった=実動であることには誰も気づいていませんでした。
通常の訓練非常呼集であれば弾薬を搬出すれば待機になり、訓練が終了して機体から卸下した弾薬が戻ってくるのを待つのですが、この日は弾薬だけでなくミサイルも搬出し(これは野僧を含めて専門の教育を受けた隊員のみが実施する)、それが終わった時点でそれぞれの職場へ送り返されました。つまり全戦闘機が完全武装した状態で待機する異常事態だったのです。
また後年、野僧は兵器管制幹部として小牧の第5術科学校で教育を受けることになったのですが、同期には稚内や網走で勤務していた警戒管制員がいて、この事件の一部始終の目撃談を語ってくれました。
007便はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港から韓国の金浦空港に向かう予定で、8月31日の午後1時5分(日本時間)に離陸し、途中で給油のためアラスカのアンカレッジ空港に着陸して乗員の交代を行ってから午後10時に離陸したのです。なお、その5分後には大韓航空015便のボーイング747も離陸しています。
007便は離陸直後から進路に誤差が生じていたのですが、アラスカの各管制ポイントや空軍はそれを察知していながら風の影響などによる通常の誤差の範囲内と判断して警告などは行わなかったようです。ところが007便は誤差を修正することなく飛行を続けたため、飛行計画で申請していた航空路=R(ロメオ)20を外れ、日付が変わってからカムチャッカ半島の通過する形で領空・領土を侵犯しました。この時、ソ連軍は防空レーダーで探知して戦闘機を発進させたことになっていますが、「当時のソ連軍の防空レーダーは稼働率が極めて低く、24時間の連続運用はできていなかった」と言うのが我々の中では定説であり真偽は判りません。
そして午前2時30分過ぎに樺太に接近したのですが、航空自衛隊では北海道東部・北部の各サイトのレーダーが007便を飛行経路から外れた位置で探知したため国籍不明機として重点監視していました。それでも飛行計画上は2機が接近してこなければならない大韓航空機が1機しか確認できず、「この国籍不明機が大韓航空機ではないか」との仮説の下に北部航空方面隊を通じて米軍にも通知したのですが何故か回答はないままだったそうです。
野僧は退役後も守秘義務に該当する経緯からこの時、アメリカ軍と自衛隊が傍受していたソ連軍の防空指揮所と戦闘機のパイロット(中佐だった)の更新記録を聞いたことがありますが、ソ連のパイロットは「コーションランプを点滅させている」「大型機だ。747だろう」「客室のライトが見える」と地上に報告していたので、防空指揮所は「民間の旅客機である」ことは認識しており、それを知った上で撃墜したようです。しかもパイロットは火を噴いた瞬間に「ウラー(万歳)」と歓声を上げ、空中分解しながら落ちていく様子を興奮気味に実況中継していましたから、ロシア語がある程度判る者は憤怒すると同時に恐怖すると思います(しました?)。
ソ連軍としては大韓航空015便が正規の航空路を飛行しており、その前を同じくアラスカから現れた機体が接近してくるのをアメリカ軍の偵察機と判断して軍事行動を取ることを決定したと言われています。
事件の直後にソ連軍は民間旅客機を撃墜した事実を認めず、これに対して日本政府(中曽根内閣)が「傍受した交信記録を公表する」と脅しをかけると日本の領空に攻撃態勢で接近する威示行動を繰り返しました。このため航空自衛隊は事実上の戦闘態勢に入り、日本政府が交信記録の一部を公表してソ連が撃墜を認めるまで弾薬とミサイルを搭載した戦闘機が緊急発進を繰り返していたのです(当時は通常の緊急発進ではミサイルを搭載していなかった)。
各レーダーサイトでは明らかにミサイルを発射する態勢で迫ってくるソ連軍機を監視しながら「本当に射ってくるのか、そんなはずはない。しかし、奴らは旅客機を撃ち落とした」と自問自答しながら「殺るなら殺れ」と腹を括っていたそうです。
この事件は発生直後から航法装置の入力ミスやアメリカの陰謀などの諸説が出ていましたが、ソ連が崩壊して密かに回収されていたブラック・ボックスなどの物的証拠が提出されても完全には解明されていません。
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  1. 2017/08/31(木) 09:27:02|
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