古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

9月11日・薩長土肥の蛮行の1つ・咸臨丸事件が起きた。

慶応4(1868)年の明日9月11日(太陰暦)に数多い薩長土肥反乱軍の蛮行の1つである咸臨丸事件が起きました。
咸臨丸と言えば勝海舟さんが艦長として指揮し、日米和親条約の締結にともなう遣米使節を乗せて日本人単独での太平洋横断を成し遂げたことになっていますが、実際に遣米使節が乗艦したのはアメリカ政府が用意した(ペリーの再来日の時の艦隊に加わっていた)ポーハタン号でした。ちなみにポーハタン号と咸臨丸では全長は約77メートルと約49メートル、全幅は約14メートルと約9メートル、排水量は765トンと620トンと大きさが異なり、唯一、勝っていたのはポーハタン号は外輪式だったのに対して咸臨丸はスクリュー式だったことくらいでした。ただし、咸臨丸はヨーロッパでも技術が劣るオランダ製のためスクリューを動かす蒸気機関が外洋での長時間使用に耐えられず、帆走に移行した時の抵抗を軽減するため引き上げるようになっていました。ついでに言えば咸臨丸は遣米使節を護衛する任務を帯びて随行したものの大嵐に遭遇してはぐれ、ボーハタン号はハワイに退避したのに咸臨丸は無寄港横断にこだわって航海を強行し、サンフランシスコに到着した時には沈没寸前だったのです。さらに航海も勝さん以下の日本人乗組員の大半は(通訳の中浜万次郎を除く)極度の船酔いと勝さんが持ち込んだインフルエンザによって使い物にならず、顧問=見学者として同乗していたアメリカ海軍の軍人たちのおかげで何とか渡り切ったのでした。
そんな咸臨丸はアメリカで徹底的な改造と修理を受けて帰国した後も練習艦や小笠原諸島の視察などで活躍しましたが、やはりオランダ製の蒸気機関は故障が頻発するようになり日本に来て9年目で撤去されて完全な帆船になってしまいました。
そうして慶応4(1868)年に戊辰戦争が起こると勝さんとは仲が悪い(太平洋横断に参加できなかったことの私怨が原因と言われている)榎本武揚さんが江戸城無血開城の条件として反乱軍に引き渡すことになっていた幕府艦隊を率いて江戸湾を出航=脱走して奥羽越列藩同盟に合流しようとしましたが、8月23日に銚子沖で暴風に遭遇して艦隊からはぐれて、下田港にまで流されたところを救助に来た蟠竜丸と合流して清水港に向かったのです。
ここで応急修理を行っている時、反乱軍側の艦隊が接近したため蟠竜丸は逃走したのですが、帆走しかできない咸臨丸は追いつかれてしまい、このため「降服の信号旗」を掲げて停船しました。ところが反乱軍は艦体を横づけして乗り移り、操艦中は丸腰である乗組員7名を惨殺し、遺骸を海中に投棄しました。然も、地元の漁民たちに「賊徒に与する者は厳罰に処する」と達したため、海岸に流れ着いた遺骸も引き上げることができず、手を合わせることさえも控えていたのです。
これに怒ったのが東海一の大親分・清水の次郎長さんで、子分たちを指揮して海岸の遺骸だけでなく舟を漕ぎ出して海面に漂っている遺骸も回収して、自分の生家の入り江の対岸に埋葬しました。
反乱軍は次郎長さんを咎めようとしたのですが、これには「死なば皆佛、佛に官軍も賊軍もあるものか」と言い放ち、このことを聞いて感服した山岡鉄舟さんが「壮士の墓」と墓碑銘を揮毫し、それからは親密な交流が始まったのです。
武力紛争関係法の海戦規則では軍艦は場所、時間の如何を問わず攻撃対象になりますが、降服の信号旗と相手国の国旗を掲げ(咸臨丸は日本船なので適用外)、停止した場合には保護する義務が生じます。つまり反乱軍はこれを無視したのか無知だった訳で、丸腰の乗組員を惨殺した上で遺骸の埋葬を禁じることは武士道以前の人道に背く大罪です。しかし、反乱軍は天皇に恭順している奥羽越列藩を無理やり戦争に追い込んだ上、会津でも同様に戦死者の埋葬を禁止しています。
やはり毛利藩は内乱が長期化したため指導的立場にある人材の大半が死んでしまっており、山口県人が誇示する奇兵隊は所詮、庶民の寄せ集めに過ぎず、国際法だけでなく武士道さえも全く弁えていなかったのでしょう。
安倍首相は「明治150周年」を国家的行事するつもりのようですが、薩長土肥が作った新政府が明治以降の破滅=敗戦に突き進んだ亡国の責任と歴史の歪曲を含めた悪事の数々を他の地域の国民に謝罪する儀式でなければ許されません。
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  1. 2017/09/07(木) 09:51:24|
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