古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

声優・槐(さいかち)柳二さんの逝去を悼む。

9月29日にテレビ・アニメ「天才バカボン」でレレレのおじさんを演じた声優の槐柳二(さいかち・りゅうじ)さんが亡くなったそうです。89歳でした。
野僧は当地に来る前は比較的市街地の寺・借家に住んでいたため門前は通学路で、毎朝、庭の掃除をしながら登校する児童や生徒に「おはよう」と声をかけ、返事が小さいと何度も「おはよう」と繰り返し、そのまま通過した時には後を追いかけて「おはよう」の連続射撃を浴びせていました。これは自転車の中学生も同様で竹箒を持ったまま隣りを走り、「おはよう」と声をかけたため、いつしか近所の人たちからは「関所」と呼ばれるようになってしまいました(野僧は愛読していた禅書から「無門関(むもんかん)」と自称していましたが)。
子供たちにはそんな調子でも小父さん、小母さん、爺さん、婆さんの場合は「お出掛けですか」になり、気がついた頃には「レレレの和尚さん」と変更されてしまったのです。こうなると年齢に関係なく「レレレのおじさんに似ていない」と文句を言われるようになったのですが、野僧は少年マガジンに連載されていた「天才バカボン」の原作は読んでいてもテレビのアニメは見ていなかったので、口調は全く知らず独り研究することになりました。と言う訳で野僧にとって槐さんは挨拶の規範だったのです。
尤もレレレのおじさんは釋迦10大弟子には入っていないものの人気では必ず上位に喰い込む周利槃陀伽(チュラパンダカ)尊者がモデルと言われていますから、野僧には些か僭越ながら願ってもない敬称でした。周利槃陀伽尊者は極めて頭が悪く、兄と一緒に弟子入りしても釋尊の教えが全く理解できず、他の弟子たちとの問答にも応えられず、優秀だった兄が恥じて帰宅するように命じたのですが、それを聞いた釋尊が呼んで「この布で僧院に来る者の履物を拭いなさい。ただし、その時、塵垢を払えと唱えなければ駄目だよ」と言いながら1枚の布を渡されたのです。それから明けても暮れても僧院に来る者の履物を拭いながら「塵垢を払え」と唱えていたのですが、ある日、「本当に払わなければならないのは心の塵垢ではないか」と気づき悟りに至ったのです
野僧も頭の悪さでは遜色がありませんから通る人に「お出掛けですか、レレレのレー」と声をかける点も真似していたのですが、当地では庭前を通るのは鹿と猪、猿だけなので立ち止まるだけです(散歩に出掛ける猫と上空を通過する鴉は返事をしますが)。
槐さんは38歳で「ジャングル大帝」や「魔法使いサリー」に出演した時から老人役で、その後も「ゲゲゲの鬼太郎」のぬらりひょんや「サイボーグ009」の博士や長官、「ワンザくん」の帽子爺さん、「ド根性カエル」の校長(町田先生ではない)などの高齢者の役ばかり担当したため、声優仲間の間では「ご先祖さま」と仇名されたそうです。
あの独特の声は戦時中に健康を害したことと軍事教練で大声を強制されたことが原因だと言われています。自衛隊では号令調整と言う大声を出す訓練がありますが、こちらは腹式呼吸を身につけ、喉を鍛える効果があり野僧の人並み外れた声量はこの訓練のおかげです(サッシを締め切って茶の間でテレビを見ていても托鉢の大声がうるさくて必ず立ち退き料を払いに出て来た)。
余談ながら槐さんは井上ひさしさんも所属していた劇団・テアトル・エコーの所長を務めていました。
現代の日本では早死にかも知れない89歳、「お出掛けですか。レレレのレー」合掌
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  1. 2017/10/04(水) 09:00:55|
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