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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

名優・朱旭さんの逝去を悼む。

9月15日にNHKの放送開始70周年記念ドラマ「大地の子」で日本人残留孤児・陸一心を育て上げた養父・陸徳志役を演じ、多くの日本人の感涙を絞り尽くした名優・朱旭(チュウ・シュー)さんが北京の病院で亡くなったそうです。88歳でした。
このドラマは日中合作と言うこともあり日本側は主人公の陸一心役に上川隆也さん、一心の父親役には仲代達也さん、母親役は田中好子さん、妹役の永井真理子さんなどの演技派が出演しており、中国側の朱さん、一心の妻・江月梅役の蒋文麗さんなどと演技の火花を散らしていましたが、率直に言って日本側の完敗だったようです(永井さんは別)。
特に朱さんが日本を代表する名優・仲代さんと面談する場面では仲代さんには「演じている」と言う不自然さがあったのに対して朱さんは日常の口調と表情のままで深い感情の動きを見事に表現し、存在感と印象では完全に圧倒していました。
この他にもソ連軍の侵攻を受けて逃亡する満蒙開拓団が宿泊中を襲撃されて母親は虐殺され、一緒に逃れた妹も中国人に連れ去られて孤独になって病気に倒れていた一心を助けて育て始めた若い頃(カツラを被っていただけ)、八路軍に包囲された街から逃れる時、一心の言葉が変であると疑った兵士に「自分が代わりに戻るから息子を出してやってくれ」と訴える場面は感涙の大雨でした。
また製鉄所の技手として働き始めた一心が文化大革命の人民裁判に掛けられて、「日本人の血を引く」と言うことだけで反革命罪に処せられて労働改造所に送られた時、巡回診療で出会った江月梅からの手紙でそれを知り、無実の罪を訴えるため人民の声を聞いている周恩来首相に会おうと冬の北京で半分野宿をして順番を待ち、ようやく解放されて北京駅に戻った一心との再会シーンは感涙の豪雨です(以来、「舎利礼文」で「一心頂礼」と唱える時、あの場面の「イッシーン」と呼びかける口調になってしまいます)。
さらに一心が日本の技術協力で上海に製鉄所を建設するプロジェクトに加わったものの日本での研修中に無断で父親の家を訪ねたことを密告され、内蒙古の製鉄所に左遷された時の「お前のような才気ある人間が日本人の血を引いていると言うだけで無残に手折られてしまう。私にはそれが我慢ならないのだよ」と涙ながらに嘆いた姿では感涙は出尽くしていたものの鼻水の洪水でした。
これは野僧個人が感動したのではなく中国人の友人たちは留学していた大学などで周囲の日本人から「中国のお父さんって素晴らしいね。本当に羨ましい」と声を掛けられたそうなので共通した反応だったようです。ただし、友人たちは中国人だけに「ウチの父親はもっと立派だ」と答えたそうで、それを聞いた日本人が感心したのか呆れたのかは聞いていません(ウチの父親とは比べるのも失礼に当たりますが)。
野僧は残念ながら朱さんの別の作品を見ていないので友人に頼んでDVDを送ってもらおうかと思っています。そうなると字幕なしの中国語になりますが朱さんの演技力であれば感動は伝わるでしょう。感謝を込めて心からご冥福を祈らせてもらいます。
「謝々你。イッシーン頂礼 万徳円満・・・」合掌
朱旭・18・9・15没遺影になってしまいました(「大地の子」の放送時は65歳だった)。
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  1. 2018/09/18(火) 09:40:36|
  2. 追悼・告別・永訣文
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