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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1351

結局、クミコはこれまでの受け身ではなく燃え上がった欲望のままに杉本を酷使した。杉本を仰向けに寝させると騎乗位になり、絶頂を追い求めて腰を激しく振り、上下させて暴走する。戦闘態勢を維持できず途中で使用不能になれば怒りのままに絞殺されかねない危惧を抱かせるような鬼気迫る性行為だ。杉本はクミコの欲望がこれ以上、燃え上がらないように刺激を避け、悶え狂うクミコの顔を黙って眺めながら戦闘態勢を維持していた。
「ウッ・・・」数度目の絶頂を迎え、クミコは声にならない叫びを上げて倒れ伏した。杉本の胸に汗ばんだクミコの潰れるほどの膨らみがない乳房が重なった。
流石の杉本もこれ以上は戦闘態勢を維持することはできない。急速に収縮した男根が抜けるとクミコを下ろしてベッドの掛布を背中に掛けた。そうして立ち上がるとベッドの周りに脱ぎ、脱がせ捨ててある2人の服を拾い集めてハンガーに掛けた。
杉本はそんな似合わない後片づけをしながらクミコへの官能剤の効果について考えていた。この部屋で切れたように欲情を爆発させるまでクミコは普通に振舞っていた。一方、過去にこの薬を実験した女たちは杉本の存在を知った瞬間に理性が吹き飛び、周囲が見えなくなってその場で抱かれることを求めてきた。この違いはどこからくるか。出会った時、安楷林(アン・ヘリム)に使ったのは古いタイプの官能剤だったが、知性派のジャーナリストが羞恥心を忘れて燃え上がった。それは今も後遺症的に余韻を見せることがある。その時、我に返ったらしいクミコが罪の意識に囚われたような顔で声を掛けてきた。
「私、狂ってしまったみたい。国防部の正門前で貴方に会った時から身体の芯が熱くなって抱かれたいって言う衝動が込み上げてきたの。こんなこと初めてよ」クミコの告白を聞きながら杉本はベッドに腰を下ろした。クミコは這ってその脇で半身になった。
「でも私は海軍士官、軍務中にそんなことを考えるのは合衆国に対する背信行為なの。だから祖父から習った『平常心(びょうじょうしん)』と言う言葉を唱えながら忘れようとしてたんだけど・・・」それも限界に達したのか、それとも杉本が壊したのか。結局、クミコはこれまで日本人特有の強固な自制心で薬がもたらす性的衝動を圧殺していたようだ。薬物による異常心理まで抑制できる極度の自制心を有するのはおそらく日本人だけではないか。
「クミコのお祖父さんは日系2世なんだろう」「うん、442部隊ではなくて通訳として太平洋戦線に従軍したから生き残ったのよ。戦後、日本に進駐している時、祖先の墓に参って知り合った菩提寺の住職から坐禅を習って帰ったから家でもよく坐っていたわ」「平常心是道(びょうじょうしんぜどう)だな」思いがけず杉本の口から禅語が出た。これは公案集「無門関」の第19則だ。このように公案をからめて坐禅に励むのは臨済宗だろう。この意外な知識は何故か禅に詳しい岡倉から聞いたものだ。
「でも欲望が燃え尽きれば平常心が取り戻せるのね。今は心静かに貴方に愛された余韻を味わってるもの」クミコはそう言うが今回の性行為は愛情などが介在する余地などない戦闘そのものだった。杉本は普段は抑制を美徳としている日本人が興奮状態に陥った時、欧米人には到底理解できない狂気の行動に出ることを思った。第2次世界大戦末期の組織的自死がまさにそれだ。
「汗をかいただろう。シャワーを浴びてこよう」「そう言えば化粧が落ちていないわ。私、シャワーも浴びずに抱かれてしまったのね」ようやくクミコも自分の欲望の爆発の凄まじさを自覚したようだ。その責任は杉本に帰すべきものではあるが。
5月24日、李明博大統領自身が記者会見を開き「対国民談話」を発表した。その内容は20日の記者発表と変わりはないが、記者たちには北朝鮮が売り込み使っている魚雷・CNTー02Dのカタログに回収された部品の写真を重ねた資料が配布された。
大統領と側近たちは記者発表で公開を要求された魚雷の部品を写真で明示することで納得を得られると考えたようだが、すでに公式発表自体を虚構とする報道が準備されていたので「苦し紛れの証拠固めのビラ」として利用されることになった。
「この国のマスコミはどうなっているんだ」在韓アメリカ軍司令官は夕刊から始まった「北朝鮮の潜水艦による雷撃」と言う政府発表を疑問視する報道に怒りを露わにしていた。
「同盟国の技術者が検証した事実を何故そのまま報道しないんだ」「オキナワも同様ですがこちらは規模が大きい分、影響は深刻ですね」確かに沖縄の2大紙の偏向報道はこれ以上のものがあるが講読者は沖縄県民だけだ。一方、韓国のマスコミも思想統制を受けているかのように同一の論調で報道を始めるが、それが世論を扇動し、外交に大きな影響を与えることもある。
「大統領としては自国の海軍の艦艇が撃沈されて、多くの軍人が戦死すればマスコミの親北朝鮮報道も改まると考えているんだろうが・・・」そう言って司令官は苦虫を噛み潰した。
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  1. 2018/10/24(水) 09:33:08|
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