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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1354

「ただいまァ」佳織の官舎に着くと夕食の支度中だった。と言っても作り終えた料理を温め直しているだけだが、副校長兼企画室長殿はエプロンをして台所で腕を奮っている。
「おかえりなさい。変なニュースをやってるね」そう答えた佳織の向こうではテレビがNHKのニュースを流している。NHKのニュースは左右両方からの批判を避け、誤報を犯さぬように確定した差し障りのない事実だけを流すためその前の時間帯の民放のニュースの後から見ても面白くも何ともないのだが家事をしながら聞き流すのには丁度良い。
「早い話が自分で掘った墓穴を深く広げてから中に入って生き埋めにされたってところだな」本来、辺野古への移設が決定した時点での沖縄県民はまだ沖縄国際大学へのヘリコプター墜落事故の記憶が生々しくその危険除去が実現することに安堵していた。そこに乗り込んで普天間基地が果たしている機能も考えずに県外移設を公約したのは自分で掘った墓穴以外の何物でもない。おまけにオバマ大統領に「トラスト・ミー」と大見得を切って深く掘り下げ、名護市市長選挙で反対派を公認して横に押し広げた。その後にオバマ大統領から不信感を言い渡されれば自分で穴に入って土をかけてもらうしかないだろう。
「まだ政権はもつのかな」「時間の問題なのは間違いないが、雀山が辞めても政権の返上はしないだろうね」日本の議院内閣制では衆議院で多数派の政党の党首が総理大臣になるのが原則だから今年の7月に予定されている参議院選挙で民政党が大敗しても政権交代は起こらないのだ。そのためには野党が衆議院を解散に追い込むしかないが、野党になっている今の自民党総裁の神経質そうな顔に政権奪還への気迫は見当たらない。
「次の総理はどちらになるんだろう」「トロイカの残り2人かね。消去法で缶直人の方かな」私が佳織の官舎に置いている作務衣に着替えて食卓につくと同時に料理が運ばれてきた。そのタイミングには食欲を失わせる最悪の話題だった。缶直人は厚生大臣の時、カイワレ大根がO157による食中毒の原因と発言して風評被害が発生すると「大好物」と言いながら大口を開けて頬張って見せたが購買意欲を誘う効果はなかった。鳥インフルエンザの時は焼き鳥だったが結果は同様だ。それが尾沢一郎となると調理に腕を奮った佳織に申し訳なくなる。
「缶直人は山口県出身だったよね」「そうだったかな。ワシは防府に3年間住んでいたけど記憶にないぞ」そうは言ったが私が防府に住んでいたのは昭和62年から平成2年まででも最後の1年は前川原の幹部候補生学校に入校していた。当時はまだ自民党が健在で市民運動の活動家出身の缶直人の名前が保守の総本山・山口県で出るはずがなかった。
「若し缶直人が総理大臣になったら山口県出身では何人目になるの」「本当に多いよな。名前は憶えていても人数は判らないよ。言うから数えろよ」折角の料理が目の前に並んでいるのに会話の方が忙しくなってきた。ましてやテレビのニュースはほったらかしだ。
「先ずは戦前で伊藤俊輔(博文)、山県狂介(有朋)、桂太郎、寺内正毅、田中義一」「ここまでで5人だよ」佳織は指を折って握った拳骨を突き出したがパンチではない。
「続いて戦後は岸信介、佐藤栄作、安倍晋三、以上」「合計8人だね。本当に大量生産だわァ」「粗製乱造とは言わないけど芋づる式なのは間違いないな」話に区切りがついたところで2人で手を合わせて箸を取った。今夜のおかずはジャンルなしの家庭料理だ。こんな日常生活に帰れるところも近距離別居の夫婦ならではだろう。
「ところが兵庫県出身の総理大臣はいないんや」地元の話題になって佳織は関西弁になった。私としてはこちらの方が肩がこらないので助かる。
「確かにそうだな。大阪からは偉大な総理大臣が2人も出ているけどね。戦前最後の鈴木貫太郎大将に戦後2番目の幣原喜重郎」どちらも混乱の極地だった日本を卓越した行政能力で救った名宰相だ。その点、愛知県出身となると加藤高明と海部俊樹になってしまう。
「そう言えば兵庫県出身で総理大臣になった政治屋がいたぞ」「えッ、そうなの」流石の佳織も私が思い出した政治の裏話は憶えていなかった。
「ワシらが前川原に入校していた時の参議院選挙で社会党が圧勝して土肥たか子が首班指名を受けたじゃあないか。あれから衆議院で海部が指名されるまでは暫定総理だったんだよ」「そうだったかな。あの時も人材がいなかったけど今ほどじゃあないよね」ようやく話が弾み、食事が進みだした。もうテレビは切っても好さそうだ。
「でも今回、徳島水子が罷免されたじゃない。社人党が離脱すると政権が弱体化して、やっぱり時間の問題かもね」「いいや、山口県人の権力への執着は普通じゃないから総理の椅子に座ったら最後、日本を滅ぼしても離れないよ」これは尾沢一郎ではなく缶直人が総理大臣になると言う消去法的前提だが、来週には田沼和尚に手紙を書いて現地情報を探ってみよう。
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  1. 2018/10/27(土) 09:29:28|
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