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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1412

22日の水曜日に石垣島に向かう予定の私を引き止めるような事態が発生した。早朝に中国の温家宝首相が日本政府に対して逮捕・送検されている船長の引き渡しを公式に要求したのだ。
発足して3カ月足らずで日本共産党以上に中国に従属していることをアカラサマにしている缶政権がこれを拒否するはずがなく沖縄地方検察庁に圧力が掛かってくるのは明らかだ。しかし、個別命令の出張先は沖縄地方協力本部の石垣島事務所なので私は所長の確認印をもらってこなければならない。所長の氏名と階級を確認して署名と押印を偽造することは容易だが、まさか陸上幕僚監部所属の法務幹部が違法行為を犯す訳にはいかない。やはり予定通り朝の日本トランスオーシャン航空で石垣島に行くことにした。
「貴方、おはよう」離島便の空港ターミナルのホールで梢が待っていた。制服を着ているところをみると仕事中に抜けてきたらしい。
「うん、おはよう。ワザワザの見送りか」そう答えながら歩み寄ると梢は紙袋を差し出した。その手つきから見て中身は土産物の菓子よりも軽そうだ。
「これをあかりに渡して欲しいの。私が使ったマタニティーよ」梢の説明に受け取った紙袋を覗くと薄い生地の服が2枚入っているのが見えた。
「佳織からも2枚預かってきているからこれで4枚になるな」「マタニティーは妊娠中にしか着ないから新品を買うのは勿体ないのよ。でも佳織のがあるなら私のは止めた方が良いわね」そう言って梢が手を伸ばしてので私は背中に引っ込めた。
「あかりだってお母さんのお古の方が嬉しいだろう。佳織のは淳之介の時の物じゃあないしな」私の理解は所詮男のモノだった。梢は表情を固くすると真意を説明し始めた。
「私があかりを産んだ時は安産じゃあなかったの。妊娠と出産は女にとっては命賭けの戦いだから少しでも縁起を担ぐようになるものよ」梢が早産になった理由はあかりの視覚障害の原因であることから早い段階に説明を受けている。それは夫が性行為を強要した上、欲望のままに激しく責めたため陣痛を誘発したのだった。
「大丈夫、渡す前に安産祈願のお経をあげておくから安心しなさい」私の返事に梢は安堵したようにうなずいたが安産の加護を祈る石地蔵さまが沖縄にはいない。石垣市内の日本最南端の禅寺・竹林寺には仁王門はあっても境内で地蔵さまには会わなかったはずだ。
「それじゃあ明日の午後には帰ってくるよ」「明日の夜は私の家に泊ってね。流石に連休中はホテルが取れなかったのよ」言われてみれば秋の観光シーズンでもある秋分の日に直前の飛び込みで那覇市内のホテルを取るのには大手ツーリストの力を持ってしても無理がある。
「貴方が野宿するって言うならつき合うけどウチの父も会いたがっているからお願いね」今夜は淳之介のアパートに泊めてもらい明日は梢の家となると出張の宿泊費は大幅な節減になる。しかし、既婚者が元カノの家に泊っても良いものなのだろうか。
石垣島では空港からは地方協力本部石垣事務所へ直行し、昼休みの時間を見計らって那覇地方検察庁石垣支部へ向かう。地方支部の検察官は1人だけのことが多く、仕事時間は拘束中の中国人船長の取り調べに当たっているはずだ。そうなると折角の昼休みに割り込むしかない。
「はじめました。陸上幕僚監部法務官室付法務幹部で東京弁護士会所属のモリヤです」沖縄地方検察庁石垣支部へは先週末に電話で申し入れていた昼休みの時間に訪れた。案の定、検察官は仕出し弁当を食べながらの応対になった。
「モリヤ弁護士がウチの地方庁(沖縄地方検察庁)に来られたことは後輩から聞いています。用件も想像がついてます」30歳代の後半から40歳代の前半くらいに見える検察官は私がソファーのテーブルに並べた自衛隊用と弁護士用の名刺を見比べながら説明した。
「今日の昼のニュースでは中国の釈放要求を受けて東京で検察首脳会議が招集されるそうですが、こちらでも何か動きがありますか」この質問は検察側の立場の者でなければ何かの取材としか受け止められないはずだ。それでも検察官は表情を変えずに弁当を頬張っている。
「やはり政治の司法への介入を阻止する決議をしたくても道理が通じる相手ではないですから、建前を捨てて屈服するしかないんでしょうな」相手が無反応では独り言を続けるしかない。
「おそらく被疑者は日本が屈服することを見越して今回の暴挙に出たんじゃあないですか」すると弁当を食べ終えて茶を飲んだ検察官は深呼吸をした後、口を開いた。
「被疑者は釣魚群島(チィアォユーチュンダオ=尖閣諸島)どころか石垣島は中国領だと譲らないんです。海上保安庁の取り締まりは侵略行為とも言っています」「それは漁民の発言ではありませんな。軍人が偽装しているんじゃあないですか」私の中に人民解放軍の兵士が僧侶に化けて起こしたチベット暴動の真相が思い出されてくる。この事件からも同様の臭いが漂ってきた。
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  1. 2018/12/24(月) 10:38:27|
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