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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1414

あかりが夕食の支度をしている間、私は那覇と石垣市内のコンビニで買い集めてきた新聞各紙を読み比べていた。本土の一般紙が早朝の旅客機で沖縄に届くのは昼前になるため出発に間に合わず、それを離島便に積み替えて送る石垣島では昼過ぎになって朝刊が店頭に並ぶ。
「ほう、沖縄の2大紙も中国の釈放要求は取り上げてるんだな」那覇市で買ってきた沖縄の2大紙はどちらも22日の早朝に発表された中国首相による船長の釈放要求を大きく報じていた。
これまで漁船による衝突事件については中国側の主張に同調した紙面づくりをしてきたので、このニュースもその路線上で肯定的に紹介している。
「日本政府は沖縄の固有領土に関する問題に介入することは止めろってか・・・」2大紙は「日本政府」と他国のように呼んでいる。つまり沖縄を「独立国」とする立場で論じているようだ。
「沖縄であれば中国との長年にわたる友好関係によって相互の利益を共有する平和的解決を実現できる・・・なるほど」確かに琉球王国は中国の明朝、清朝に臣従の礼を尽くして朝貢には過分の返礼を受けてきた。つまり中国の属国になることで逆に独立を保証してもらい、尖閣諸島も資源だけ譲れば自由に使わせてもらえると言う論理だ。
「日本政府は政権交代が実現しても自民党政権とアメリカ軍が沖縄を軍事力で支配してきた占領体制を継続している。これは日本政府が大陸を侵略した帝国主義を堅持していることを自ら暴露していることに他ならない」ここまで来ると読んでいるのが「人民日報」ではないか確認したくなる。しかし、間違いなく2大紙「沖縄新報」と「琉球タイムス」だ。要するに雀山内閣が辺野古移設を閣議決定したことを「裏切り」と断定し、徹底批判に転じたに違いない。
続いて地方協力本部石垣事務所の傍のコンビニで買った朝日新聞になる。これは買ってきた順番で選択した訳ではない。
「何々・・・あまりにも一方的な要求に政府は対応に苦慮しているかァ。随分とまともなことを書いているじゃあないか」沖縄の2大紙の後では東京で読むとそれこそ日本版人民日報としか思えない朝日新聞が正論を吐いているように見えてくる。
「3権分立を尊重しなければならない以上、24日に招集される検察首脳会議で司法が国際情勢にも目を向けて大局的な判断を下すこと期待する・・・つまり司法も外交をやれって言いたいんだな」この朝日新聞的な論法にやはり腹が立ってきた。朝日新聞は綺麗事を目一杯飾り立てて読者の目を眩ませながら本音へ誘導する狡猾な紙面づくりを常用している。社説では建前を述べておいて人気コラムである天声人語で皮肉として本音を漏らす。読者は小難しい社説は読まなくても天声人語には目を通すので世論誘導としての効果は絶大なのだ。
その時、テレビの衛星放送が驚くようなニュースを流した。それは休日である23日に千石官房長官の承認を受けた外務省の高級官僚が沖縄地方検察庁を訪問し、今回の事件の外交上の影響と中国の対応を説明すると言うものだ。
早い話が千石官房長官の命令を受けた外務官僚が政権首脳の厳命を伝達しに来るのだ。それにしても民政党政権は千石官房長官が「日本版文化大革命」と自賛した事業仕分けで外務省の在外公館の社交に関する経費も無駄遣いとして断罪していたはずだが、外務官僚たちは「司法への政治介入」と言う不当な命令に抵抗する気概も奪われてしまったのだろうか。
「ただいま。親父は来てるかァ」あかりが立っている台所の窓から淳之介の声が響いてきた。それにしても今まで「お父さん」だった淳之介に「親父」と呼ばれると尻がこそばゆい。
「お帰り、お世話になってるよ」そう答えながら玄関を見ると淳之介があかりを抱き締め、熱いキスを交わしていた。モリヤ家では日常的な光景なのであえて目を反らしたりはしないが、お腹を圧迫しないか心配するほど熱烈な抱擁だった。
「中国漁船の衝突事件は変なことになってるね」モリヤ家以上に折り目正しい礼式の後、夕食を始めると缶発泡酒を一口飲んだ淳之介が時事阿呆談を切り出した。
「変なって何か判ったのか」現場の船乗りの意見に私の内面心理は脱いでいた制服を着直した。
「ぶつけられた巡視船が修理に向かうところを見たんだけどあれは衝突事故じゃあはなくて体当たり攻撃だな」記録映像の存在は事件が発生した直後からマスコミが報じているが政府は公開に応じていない。このプロの見解は大いに参考になるはずだ。
「衝突事故なら側舷が接触するはずだけどあれは船首から突っ込んでいる。漁船の方も海側から見たけど船首の左側が破損していたよ」今日、会った3等海上監(2佐に相当)も暗に「政府から緘口令が敷かれている」とほのめかしていたが、そこまで悪質な事件であれば当然だ。
「多分、あの船長は軍人だな。漁なんてやっていなかったんだろう」「うん、俺もそう思うよ」この話題であれば公務出張の目的に合致する。我が息子ながら大したものだ。
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  1. 2018/12/26(水) 09:45:06|
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