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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1468

色々あった2010年も師走を迎えている。この日本人の愚かさが蔓延しているような世相に身を置いていると4桁で判り易いキリスト教暦よりも「平成」と言う安っぽい年号の方が雰囲気を適切に表現できるように思うが今の皇室は嫌いなので止めておく。
「年賀状は書き終ったの」今回は私の官舎に帰宅している佳織は書きかけの年賀状を山ほど抱えてきた。やはり陸上自衛隊通信学校の副校長ともなると人脈の幅は拡大の一途のようだ。佳織の場合、外国の友人にはクリスマス・カードの返事もあるので日本からも外れている。それでも裏表を印刷にすることは避けて相手と自分の氏名は手書きにしている。
「弁護士を開業している訳じゃあないから去年の年賀状を見ながら書けば終わりだよ」牧野弁護士や滝沢弁護士を見ていると面談する人とは必ず名刺を交換している。それが個人経営の弁護士の営業なのだそうだが、おそらく年賀状も膨大な枚数を出しているのだろう。その点、私は隊員限定の法律相談だけなので解決すればそこで音信不通になることも珍しくない。
「そう言えば淳之介は来年が年男じゃあない」「あかりは早生まれで竜年だけど淳之介は猫だったな」佳織は年賀状の隅に印刷してあるパックス・バーニーの絵を見ながら指摘したのだが、私は妹も兎年なので淳之介が同じにならないように東南アジアの干支の猫年にしている。東南アジアでは虎と猫、竜と蛇を前後に組み合わせているらしい。
「ノザキ家は佛教徒だからクリスマス・カードじゃあなくて年賀状なんだよな」「うん、ダディは真面目な人だからクリスマス・ツリーは飾らないで門松を立てていたわ」それなら我が家も大差はないから志織も違和感はないはずだ。
「後段休暇は休めるの」腕が疲れたのか手を止めて伸びをしながら佳織が訊いてきた。実は今年の新年もハワイに行けそうもない。私と佳織は後段休暇なので時期は重なり、志織はハイ・スクールが始まっているので日中は不在でも夜は一家団欒を満喫できるはずなのだが、1月中旬に担当しているイージス艦と漁船の衝突事故の論告求刑が行われることが決定したのだ。
「休暇出勤になりそうだよ。もっと早く決まっていれば前々段で12月中旬に休んで志織に会いに行ったんだけどな」今年は尖閣諸島近海での中国漁船による巡視船衝突事件の内偵調査で石垣島へ行き淳之介とあかりに会ってきた。志織とも夏休み会っているので我慢できないことはない。しかし、志織は会う度に大人びて父親としてはその変化を見逃すのは口惜しい。
「私としてはこっちで貴方と長期休暇を過ごすのも希望だけど、年に2回くらいは顔を見て相談に乗ったり、助言したりしてこないと志織の母親としての責務が果たせないのよ」やはり佳織の方が前向きな姿勢を保っているようだ。互いに1佐と2佐、46歳と49歳になると若い頃のような求道的な使命感は薄れ、穏やかな時間を共有したくなってきている。これが年齢の差なのか将来性の残り具合の違いなのかは判らない。佳織も来年度には移動になり、幹部名簿の序列から言えば私が定年退官する前には将補に昇任するはずだ。
「そう言えば尖閣諸島の漁船衝突映像をネットに投稿した海上保安官が妙なことになってるわね」署名を再開した佳織は住所一覧表で漢字を確認しながら座卓の上に置いてある新聞の見出しに目を止めて時事問題を語り始めた。それでも最近は軽い時事阿呆談になってしまう。
「始めは守秘義務違反、秘密漏洩で告発したんだが、あの映像自体が部内では誰でも自由に見られる状態だったから秘密に該当しないことが判って形式的に書類送検したんだよ」私としても同業他社のような組織で起こっている我が社でもありそうな事態には強い関心を持って注視しているから阿呆談とは言え軽口ではない。缶政権、実質的に千石政権は中国の不当な要求に屈して加害者の船長を釈放した苦労を無にしたこの海上保安官・センゴク37を絶対に許さず、可能な限りの重罪を課して服役させるつもりだったようだが法治国家の壁に阻まれた形だ。
「海上保安官が自首して取り調べを受けた後、依願退職を申請したのも受理せずに懲戒免職にしようとしたでしょう。やっていることが滅茶苦茶過ぎるわァ」この醜態も衝突させた加害者である中国人船長は「始めから釈放ありき」だったこととは真反対に「可能な限り厳罰に」が先に立ち、法令の規定を無視しても内閣官房長官の強権で実現できると考えたのかも知れない。その意味では憧れのスターリンや毛沢東になれなかった元全共闘の鬱憤が透けて見える。
「それにしても年末の業務一掃みたいに書類送検して同時に依願退職を受理するんだから支離滅裂、あの千石官房長官は本当に弁護士なのかね」千石官房長官は「弁護士なのかね」どころか辣腕弁護士として知られている。1971年12月18日に土田警視庁警務部長宅に届いたお歳暮が爆発して妻が死亡した事件を含む一連のピース缶爆弾事件の犯人として元全共闘の活動家が逮捕された裁判でも無罪を獲得しているのだ。弁護士と政治屋では必要な能力が違うのか、権力を握った驕りが眼を眩ませているのか。来年には終わって欲しいものだ。
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  1. 2019/02/19(火) 10:40:33|
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