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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1478

横浜地裁での最終弁論を終えて帰宅した私は電車内で向かいの席のサラリーマンが広げている夕刊の見出しを見て疲れが吹き飛んでしまった。これは正月以上に目出たいニュースだ。
「第2次缶改造内閣が発足」と言う大見出しの下に「千石官房長官は退任へ」とある。つまり70年安保闘争の活動家がそのまま政権中枢に座って国家権力を思うままに揮っていた危機が取り敢えず終わったことになる。私は駅から官舎までの途中にあるコンビニエンス・ストアで弁当のついでに一般紙の夕刊を買い集めて持ち帰ることにした。
佳織はハワイに帰省しているので折角の金曜日も独りで過ごすしかない。明日の土曜日は今日の最終弁論の反省と今後の展開を話し合うため休日出勤する。そんな虚しい金曜日をフライデー・ナイト・フィーバーにするには格好の材料だ。
「万朶の桜か襟の色 花は吉野に嵐吹く 大和男子(やまとおのこ)と生まれては 散兵戦の花と散れ」コンビニで買った弁当を家の電子レンジで温め、冷蔵庫に入れてあった鍋の味噌汁をガス・レンジにかけ、その隣りで薬缶の湯を沸かしていても鼻歌が出てしまう。それが歩兵の本領なのは私の身体の中に歩兵第22旅団長だった曾祖父・青山寛少将から受け継いだ歩兵=普通科魂が残っており、この吉報で火が点いたのだろう。
「居直りも限界か・・・中々手厳しいな」テレビはドラマの時間帯なので点けずに軍歌のカセットでBGMを流す。そうして弁当とサラダを食べていても待ち切れず、向かいの佳織の席に新聞を広げて眺めながら独りごとを呟いた。広げたのが保守系の産経新聞だったので当然、論評は批判的だ。ただし、産経新聞になったのは単なる偶然だった。
「本来は漁船衝突事件の対応の責任を取って辞任するべきだった・・・かァ」最近は老眼が始まっているため本文が読み辛い。老眼鏡はアタッシュ・ケースの中なので読むのはここまでにする。しかし、千石官房長官には「自分が間違ったことをやっている」と言う自覚がないので「責任を取る」必要などは全く感じていなかったはずだ。国会で弄していた詭弁の数々もアメリカを中心とする自由主義社会の常識に立って見れば見苦しい言い訳だったが、共産党中国を世界の盟主と仰ぐ革命家としては「正しい見方」を教え諭していたのかも知れない。何にしてもそれを追求し切れない現在の自民党総裁は弁護士としての手腕も格下なのは明らかだ。
「次の官房長官は杖野(つえの)幸男か・・・こいつも弁護士のはずだぞ」食事を終えてようやく新聞を熟読し始めると缶改造内閣の実態には怒る前に呆れてしまった。千石前官房長官は東京大学の全共闘の活動家から弁護士になって法廷で安保闘争を展開していたが、新聞の紹介記事によれば私よりも3歳年下の杖野新官房長官は東北大学から弁護士になったらしい。
私が中退した愛知大学は法学科の教授たちが「ウチの大学では80年安保闘争が継続されている」と嘆いたが普通の大学では鎮静化していたはずだ。テレビの報道バラエティーなどでの発言を見る限り、他の民政党の若手議員たちが自民党以上に保守的な立場からの熱弁を揮っているのを冷ややかに傍観していて、自民党と民政党の両者を比較しながら結論として優位性を確保していたように思う。その意味では千石前官房長官のように時代錯誤な反米反日親中的政策を執る危険性は低そうだが、逆に調整型だとすれば諸事多難な国内外情勢の危機管理においては不安がある。と言いながら私も弁護士の端くれだったことを思い出した。
「佳織に知れせておいた方が良いかな」全紙を読み終えてテレビのニュース番組を点けたところで少し思案した。佳織は16日の日曜日に帰国する予定だが、そのまま久里浜の官舎へ向かい、月曜日からは恒常業務に入る。本来は1月4日から10日の成人の日までが後段休暇なのだが、ハワイへの海外渡航と言うことで8日の土曜日からに1週間遅らせてもらっている。副校長としては改造内閣についての情報は知っていなければならないはずだ。
それにしても相変わらず民政党政権の情報管理は極めて甘く、本来は朝刊で紹介されるような新閣僚の人物紹介も夕刊で揃っていた。人材不足は本当に深刻なようで国土交通大臣だった元党首が外務大臣に横滑りし、千石前官房長官が「日本版文化大革命」と自賛した「事業仕分け」でヒロイン扱いされた元クラリオン・ガールの台湾人が入閣している。新外務大臣は国土交通大臣時代、テレビでの派手な言動とは真逆の優柔不断さから「言うだけ番長」と揶揄されており、元クラリオン・ガールも「2番じゃあ駄目なんですか」と言う名台詞で科学技術の開発競争の本質を理解していない軽薄な実像を自白している。そんな欠陥品たちを官僚に加えたのはマスコミへの受け狙いに過ぎず、酷評している産経新聞と読売新聞に対して朝日新聞と毎日新聞は実態のない期待感を強調していた。今回の組閣で安堵したのは期待以上の実務派である防衛大臣が留任したことだけだ。その一方で千石前官房長官は民政党の代表代行に就任しているので今回の人事は解任でも罷免でもなく目立たない裏方への避難的転任らしい。
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  1. 2019/03/01(金) 11:13:59|
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