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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1499 (かなり実話です)

3月11日の日没直後の18時頃、経験がない大地震の混乱が収まっていない三沢基地の北部航空方面隊防空指令所に普段であれば恒常業務であるはずの事態で緊張が走った。
「アンノウン・ピックアップ(=国籍不明機を探知)、イースト070(東方70度)、220マイル(220海里=約407キロ)※数字は英語読み」「こんな時に東京急行か」シニア・ディレクター(先任指令官)の相沢1尉=タック・ネーム(パイロットと指令官の個有コールサイン)はアイクが舌打ちした。
「東京急行」とは北方領土の基地を発進して南下することでロシア側から目が届きにくい太平洋岸のレーダー・サイトの探知能力や百里基地の戦闘機パイロットの技量を確認する偵察飛行だ。
「SOC(航空方面隊指揮所)、千歳と三沢のランウェイ(滑走路)の点検は」「完了している」通常の課業時間中はSOCへの回線は航空方面隊司令部の防衛部に接続されており、17時から当直幕僚が上番するのだが、今日は防衛部が機能しているためあちらが答えた。
三沢からはレーダー・サイトの機能停止を受けて早期警戒機・Eー2Cを緊急発進させているが、それは非常事態による特別処置で安全基準を満たす点検は未確認だった。
「山田と大滝根は機能停止のままだ」「Eー2Cとのリンク(接続)は完了しています」これで状況確認は終わった。アイクは大きく息を吸うとコンソール(レーダー情報の画像)上のシンボル(航跡)を目で追った。
「アンノウンは」「はい、現段階ではADIZに沿って南下しています」「ラジャー(了解)、フォックス(飛行隊のコールサイン・仮称)、ホット・スクランブル」アイクは千歳基地に緊急発進を命じた。その命令を受けて担当空曹がアラート・ハンガー(緊急発進用戦闘機の待機格納庫)の信号のスイッチを押し、同時に滑走路の北端にあるアラート・ハンガーの待機室ではベルが鳴り響き、パイロットと整備員が戦闘機に向かって駆け出した。
間もなく格納庫のドアが開き回転している赤色灯が目に入る。同時にFー15J戦闘機のエンジンが作動して整備員たちは機体の周りを掛け回って飛行前点検を行う。パイロットは操縦席に座り、整備員の手を借りて装着品を身に着けていく。所要時間は3分以内だ。
「アラート機、発進しました」「ラジャー」アイクとインターセプト・ディレクター(邀撃指令官)のトーマスが一緒に返事をした。トーマスは丸顔が機関車・トーマスに似ていることで命名されたのでタック・ネームでも仇名のようなものだ。
「ホット・スクランブル。フォックス37、ツー(2機)Fー15、ベクター(ベクトル=方位)090、クライムエンジェル(上昇高度)20(20000フィート=約6000メートル)、チャンネル(使用周波数)184、スコーク(SIF=敵味方識別装置)2&3ノーマル・・・オーバー(以上)」「ラジャー。フォックス37・・・」千歳のパイロットにとっては領空に近接している樺太やシベリア東岸に比べて「東京急行」は左折して北海道に向かってこない限り緊急性が低く声にも余裕がある。実際、パイロットは上昇しながら眼下の街並みを眺め、被害の状況を確認していた。
「ポジション(位置)は」「襟裳・イースト・30マイル(襟裳東方約360キロ)」「通告を実施」「ラジャー」アイクの指示でOR(指令官検定)前の3尉がマイクを口に合わせた。ORを取得して指令官にならなければこれ以外に出番はない。
「ビー、アドバイス(通告する)、ビー、アドバイス。アンノウン・エアクラフト、フライング・オーバー・ジャパニーズ・ウォーター(日本近海上空を飛行中の国籍不明機に)、イフ・ユー・メインテイン・ヘディング(このままの進路を継続すると)、ユー・ウィル・バイオレイト・ジャパニーズ・ドメイン(日本の領空を侵犯する)」「反応はありません。ロシア語で実施します」「ラジャー」3尉が報告するとアイクはコンソールを注視したまま無愛想に許可した。
「フレドプレジューム・ルスキー・サマリョート。ナズミーテ・イポスキーム・サマバローネ(ロシア機に通告する。こちら日本国自衛隊)・・・」この部内出身の3尉は空曹時代に若手幹部から台本を借りて練習したことはあるが丸暗記している訳ではない。あの時は「ソビエ―ツキ(ソ連軍機)」だったように思うが台本を棒読みするしかない。
「現時点では根室、襟裳、大湊のデーターだから誤差は低いが、このまま南下すると峰岡山が捕捉するまでEー2Cが頼りだ。それまでにタリホー(目視確認)させろ」「ラジャー」アイクの指示にトーマスが答えた。アイクとは相沢と言う姓をもじってつけたタック・ネームだが、アメリカ軍からは偉大なる英雄で大統領でもある「ドワイト・アイゼンハウアー」元帥の愛称を踏襲しているように思われている。確かにアイクは部内出身の叩き上げながらコンソール上の情報を頭の中で拡大・分析するだけの熟練性を有しているようだ。
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  1. 2019/03/22(金) 10:42:00|
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コメント

現在、把握しているミリタリー用語との相違

「アンノウンピックアップ、ホットスクランブル。」で検索しヒットした『振り向けばイエスタデイ』。一読し微妙な違和感が残りました。
本来なら「高度はアルト(ALT)」の筈。開始時の警告は「アテンション(Attention)」の筈。「アンノウンの行動に変化なし。」の前には「我の誘導に従え。」の通告を実施する筈。
次々と現在時点把握する国籍不明機対応時の用語と相違する用語の使用。
そして何より「振り向けばイエスタデイ」なるタイトル。ビートルズの往年の名曲「イエスタデイ」の歌詞の畏怖すべき内容。
”I am not the man I used be ”
”There is a shadow hanging over me ”
”I made something wrong , now I long for yesterday ”
過去に女性に対し決定的な過ちを犯し、その結果、別人のような人格に変貌した一人の男。そして、それは過去に誰もが関係を知るある女性との交際中に私が口ずさみ、かたわらの友人が「そうそう。」と相づちをうち、「あいつには『イエスタデイ』が似合う。」と噂された自分の過去。実は私は「イエスタデイ」が大嫌い。好きなビートルズのナンバーは「ヘイジュード」。
誤解を正す為、異議を申し立て、誤解の訂正を是非、お願い致します。以上。
異議申し立て人氏名『西崎 和義』
  1. 2020/07/21(火) 20:49:01 |
  2. URL |
  3. プライベート 西崎 #klaiCGoQ
  4. [ 編集 ]

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