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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1526

外国人特派員協会が要求した自衛隊の災害派遣の取材は終わったが、帰国したのは中国と韓国の記者団だけだった。要するに欧米の記者たちは日本駐在の特派員であり、団体でなくても現地に入ることはできるのだが自衛隊を取材するのに有利な方法を選択したと言うことだ。
朝山3佐、山田1曹、寺田2曹、塩谷2曹、根本3曹の隠密仕事人と杉本、本間の外国組も解散になる。その前に横田基地で慰労を兼ねた反省会が開催された。
「中国と韓国の記者は全員が軍人でしたね」「受けつける段階で身元調査はできないのですか」今回は陸海空曹が先攻で意見を述べることになっている。先ずは陸の山田1曹と空の塩谷2曹が口火を切った。それを聞いて杉本と本間は視線を合わせて苦笑した。国際舞台での情報戦に参加している2人にとっては平時のみを前提にしている日本国内の保全態勢が軍事諜報機関には全く機能しないことは常識だ。総務省が担当する取材の参加者を防衛省・自衛隊が独自に審査して、問題があれば断ると言う当然の処置がお役所仕事では許されない。仮に秘密保全を理由に拒否すれば日本のマスコミが黙ってはいない。
「担当は総務省だから調整は内局が実施する。その当事者に保全意識が欠落しているんだから期待するのは虚しいだけだ」2人の意見には今回の自衛隊側の担当者らしい3等陸佐が答えた。これは内局に派職務権限が及ばない自衛隊の防諜機関としての愚痴も混じっているが、この場で肩書は明かしていない。この回答に陸空曹2人は不満そうに黙り込んだ。
「問題なのは中国の調査活動に日本のテレビ局が協力していたことです。幸いレンジャー出身の中村1曹と私が脅しをかけて撃退しましたが、やっていたことは指示を受けての情報収集でした」次は根本3曹が体験を語った。中国の取材者が興味を持ちながら途中で阻止された新型の3+2分の1トン・トラックを日本のテレビ局が調査していた。それを山田1曹と根本3曹が撃退した。それでも懲りずに翌日の仙台市内の取材にも同行していたのは協力以上の命令による任務付与があったのではないか。
「あれから内局を通じて写真で身元を調査できないか問い合わせがあったよ。その写真は遠距離で撮影した小さな画像を超拡大したものだったから不可能だと回答したが、記者クラブまで利用して内部情報を収集しているらしい」「それをここまで公然とやるようになったのは政権交代以降、特に現在の内閣になってからだ」3等陸佐の説明に肩書不明の陸将補が補足した。実際、缶内閣では千石官房長官が学生時代以来の全共闘の同志たちに首相官邸への常時立ち入り許可証をばら撒いたため国家機密の中枢も秘密保全が機能していない。首相官邸がその体たらくであれば防衛省記者クラブが外国の諜報機関の手先になることは驚くに値しない。そもそも防衛省担当の記者は「粗探し」を任務としているのだ。
「仙台ではアメリカ海兵隊が実施したトモダチ作戦について質問していたようですが、市民どころか陸自の隊員も全く知りませんでしたね」最後は海の寺田2曹が締め括る。海上自衛隊陸警隊は艦艇乗り組みの海兵隊と交流があるので関心を覚えたようだ。
「あれは日本政府がコンフィデンティアリティ(秘密保全)を発揮したんだ」すると通訳を介して陸海空曹の意見を聞いていたアメリカ空軍少将が口を挟んだ。その皮肉を込めた口調からも在日アメリカ軍がこの日本政府の態度に強い不満を抱いていることが判る。すると陸将補が苦笑しながら反論した。
「それを日本ではインペー(隠蔽)と言うんだ。秘密保全なんて高尚なものではないよ」陸将補の見解は英語だったが「インペー」の部分が判らなかった空軍少将は通訳に訊ね、「ハイディング」と説明を受けて納得したようにうなずいた。
「やはり私たちは日本に立ち入ってはいけませんね」陸海空曹が終われば後攻の幹部の番になる。最初に私服姿の本間が体験から導いた教訓を語った。
「これだけ大規模な派遣ですから私もその他大勢になれると思って引き受けたんですが・・・知人に会ってしまいました」本間はその窮地を救った朝山3佐の顔を見ながら説明した。
「敵対する者を抹殺するのは任務ですが、恩人を口封じのために消すのは遠慮したいものです」この意見に今回の任務に2人を呼んだ井上陸将補は表情を少し固くし、本間がすでに殺害を経験していることを実感した。
「確かに私も仙台の司令部では知人に会わないか不安でした」次は杉本が同調する。杉本は特科なので普通科が主力の災害派遣部隊とは無縁だが、司令部では前川原や富士学校の同期や顔見知りと会う可能性がないとは言えなかった。
「2人とっては久しぶりの母国も危険地帯に過ぎないと言うことだな」3等陸佐の総括で隠密仕事人たちは自分たちとは別次元の環境下で任務を遂行する同僚の存在を再認識した。
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  1. 2019/04/18(木) 11:20:32|
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