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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1533

「モリヤ2佐、君に東北へ行ってもらうことになった」モリヤ佳織1佐が気仙沼大島でのトモダチ作戦から戻って1週間が経った頃、私は法務官から災害派遣命令を言い渡された。通常、このような命令は本人に問題が生起した時の責任を自己に転嫁するため打診と言う手順を踏むのだが、それを抜いたのは有無を言わせるだけの余裕がないほど切迫した事態に陥っているのかも知れない。確かに現地部隊からの法律相談は一向に減っておらず、折角、佳織が帰宅できるようになっても官舎に戻れないため夫婦の時間を持てないでいる。
「それは判りましたが、統幕首席法務官室への臨時勤務はどうしましょうか」これは異論・反論ではなく質問だ。統幕首席法務官室への臨時勤務で担当しているイージス護衛艦と漁船の衝突死亡事故訴訟の第1審の判決は5月11日の予定だ。約3年間にわたって担当してきた裁判の最終段階であり、ここで外されることが不本意なのは間違ない。しかし、上層部がそれを承知の上で命じたことも判っている。
「今回の派遣先は統合任務部隊司令部だから間もなく命令処理されるはずだ」確かに統合任務部隊は「陸海空自衛隊のうち2つ以上を単一の司令部の指揮下に置く」と定義されているが、それは本来、統合幕僚監部の機能であり、組織としての位置関係には不明確な点がある。
「それでは仙台駐屯地での勤務になりますか」私の確認に法務官はユックリ首を振った。ここに今回の唐突な派遣の理由があるようだ。
「知っての通り、被災地の復旧作業が本格化してようやく現場への立ち入り制限も緩和されているんだが、そうなるとマスコミに続いて東京の活動家がボランテイアとして姿を見せるようになっているらしい」「彼らの妨害活動については仙台市内の派遣部隊からも相談を受けています」早い話が自衛隊側の被害地域が拡大していると言うことになる。
「ところが最近は東京の弁護士も同行していて自衛隊が所有者に無断で撤去した物品の損害賠償を要求する民事訴訟を起こすように扇動していると言うことだ」災害派遣部隊としては弁護士である杖野官房長官が記者会見で同様の問題をマスコミに指摘されて出した行政指導を守って自治体の担当者に確認をするなどの対応をしているはずだが、行政指導では民法などの規定を除外するだけの効力はなく、訴訟となると少し苦しいかも知れない。その一方で政治的には左傾の弁護士が尊敬する千石弁護士が代表代行を務めている民政党を支持しているはずなので、裁判で足を引っ張るところまで踏み込むのかには疑問も感じる。
「マスコミは阪神大震災以降、自衛隊が災害派遣で国民の支持を獲得していることを問題視していて、今回の災害派遣で自衛隊が活躍することに何としても失点を付けるつもりらしい。それも単なる粗探しにならないように弁護士に協力させて違法性を指摘する高等戦術も画策しているようだ」「東京のテレビや新聞は相変わらず福島原発の放射能漏れの問題ばかり報じていますが、目を背けさせた影で準備を進めておいて、災害派遣が終わった頃に民事訴訟を続発させて自衛隊の活動の違法性を批判する戦術ですね」ここまで来ると怒りよりも呆れてしまう。私の場合、沖縄で反自衛隊の活動家たちと対峙し続けてきたので予防接種を受けているが、自衛隊を敵視する活動家たちの執念には恐れ入るしかない。
私が勤務していた頃の那覇市長は市議会で市役所の職員や市立小中学校の教員たちが自衛官とその子供たちに公然と嫌がらせをしていることを批判されて「憲法違反の自衛官には日本国憲法が保障する基本的人権はない」と公言したが、それが今も変わらぬ共通認識なのだ。
「君には弁護士たちが住民を扇動している地域に赴いて自衛隊の立場を説明してもらいたい。弁護士が法的問題と賠償責任を説明していればそれにも反論を加えて諦めさせて欲しいんだ」これが任務付与のようだ。しかし、それを1人で担当するのは多勢に無勢ではないか。何よりも弁護士としての能力と経験が違い過ぎる。
「私としては彼らの戦術はあまりにも稚拙に見えます。私が(反体制側の)指揮官であれば逆に災害派遣の活躍に感謝する報道を大々的に繰り広げて国民には災害救助隊と言う認識を与えて、自衛官にも国民に感謝される任務に遣り甲斐を感じさせるように意識を誘導する。こうすれば災害派遣を入隊理由にする若者が増えて防衛任務を人殺しの訓練として拒否することも期待できる。同じ弁護士バッジを付けている者として現地で助言しましょうか」これは本気なのだが法務官は皮肉と受け取ったようで渋い顔で視線を反らして大きく息を吸った。
「現地部隊からの情報では弁護士たちは津波で被害を受けた学校のPTAにも『避難要領に落ち度があるから過失責任を問える。市町村を相手に損害賠償訴訟を起こせ』と言い回っているらしいな」この情報は私のところには届いていない。結局、3権分立によって行政・立法から隔絶している弁護士は政治的信条とは関わりなく反日本国が活動目的のようだ。
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  1. 2019/04/25(木) 11:13:05|
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