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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1558

今年は休むことができそうもない大型連休を前に私も東京に戻ることになった。それは東北地方の被災地での法律上の問題やマスコミによる反自衛隊訴訟の扇動が終息したことだけではない。震災直後に東北地方南部の近海で救援活動を実施したアメリカ海軍の艦艇の乗務員の中で「福島原発から漏洩した放射能を浴びた」と訴える声が上がり、訴訟に発展するのが確実視されているため、彼ら以上に至近距離で原子炉の冷却作業を遂行している自衛隊員にも同様の動きが出ないように情報収集と相談窓口になることを命じられたのだ。
帰路も定期的に東京から資料や物品を運んでくる中央業務支援隊の業務車1号だが、今回のドライバーは初対面のWACの3曹で顔見知りの1曹が教官として同行してきている。
「色々とお世話になったね。人使いが荒くて申し訳なかったな」出発は事情があって早朝だったが、こちらで専属ドライバーになってくれた宮城県地方協力本部の足立2曹が見送りにきた。
「モリヤ2佐のおかげで宗教と法律の知識が数十倍になりました」確かに佛法・務幹部の私とつき合っていれば話題は宗教と法律の話題ばかりだから耳にタコができた分、頭にも溜まったはずだ。携帯電話の番号を記した名刺を渡しているのでこれからも補習はできる。
「心霊体験ができたのは良かったのか悪かったのか判りません」石巻市での恐怖体験を思い出したのか足立2曹が真剣に悩んだ顔をしているので置き土産を伝授することにした。
「無視してもつきまとって困る時には不動明王の真言を唱えなさい。ノウマクサンマンダー、バーザラダン、センダーマーカロシャーダ―、ソワタヤー、ウンタラター、カンマンだよ」「幽霊は無視しろ」と言うのは陸前高田で茶山元3佐に伝えた助言だが、その後も足立2曹は行く先々で幽霊を見て怯えていた。やはり無視するのは難しいようだ。一方、私も隣りで同じ幽霊と対面していたのだが、こちらは宗旨を聞いて供養を勤めていた。私にとって幽霊は祖父の寺で小坊主をしていた頃から「いる者はいる」と言う存在なので特に恐怖は感じていない。
「それって映画なんかで山伏が唱えている呪文ですよね。一度では憶えられませんからメモして下さい」足立2曹の真剣な要望に隣りで待っている1曹とWACも興味を持ったようで私が業務車1号のボンネットで名刺の裏に平仮名で真言を記しているのを覗きこんだ。
「これで大丈夫です。ノウマクサンマンダー、バーザラダン、センダ―・・・」私からメモを受け取った足立2曹がいきなり真言の練習を始めたので1曹とWACは顔を見合わせた。
「不動明王の真言は災厄除けの功徳もあるからメモなしでも唱えられるように暗記しなさい。それじゃあな」私が声をかけて後席に乗り込むと足立2曹は慌てて姿勢を正し、敬礼をした。
島田元准尉は仙台FMでの「昭和・歌のアルバム」の最後には自衛隊も見送りの時に唄っている文部省唱歌「遠別離(とおべつり)」を肉声で熱唱していたから私も真似することにした。
「程遠からぬ旅だにも 袂(たもと)分かつは憂きものを 千里(ちり)の波路(なみじ)を隔つべき 今日の別れを如何にせむ・・・我れも益荒夫(ますらお)いたずらに 袖は濡らさじさは言えど いざ勇ましく行(ゆ)けや君 行きて努めよ国のため」振り返って見ていると足立2曹が手を振り続けているので2番まで唄ってしまった。
「モリヤ2佐、先ほどの呪文ですが・・・」駐屯地を出て間もなく1曹が振り返って声をかけてきた。ルーム・ミラーを見るとWACもこちらを見ている。今回は東北地方への別ルート開拓と転入したドライバーの慣熟訓練との名目を付けて国道4号線で北に向かい大崎市経由で山形県の尾花沢市に入り、新庄市から最上郡戸沢村を通過する予定だ。勿論、これが公私混同なのは言うまでもないが、高速道路を使わないので余計にかかる燃料代と相殺できるはずだ。
「あれは不動明王の真言でね。彼が幽霊を見るようになったから除霊のために教えたんだよ」「やっぱり被災地では幽霊が出るんですか」1曹は振り返ったまま動かなくなった。ルーム・ミラーのWACの目も固定されているので後ろから座席の頭部を叩いて注意した。
「結局、公的機関が慰霊を勤めないで放置しから震災直後に浮遊霊になってしまった犠牲者たちの魂魄が往生できないままになっているんだ。被災地で野営していると夜には幽霊たちが団体さんでやってくるぞ」「キャーッ」WACが前を見たまま悲鳴を上げた。この世代はマスコミがノストラダムスの大予言が外れた1999年7の月以降は一斉にオカルトから手を引いたため心霊現象などに興味がないと思っていたが、やはり反応はするらしい。
「それであの呪文を唱えれば幽霊が消えるんですか」「言葉だけじゃあなくて念がこもらないと神通力は発揮されないな。しかし、業務車1号は戦時の霊柩車じゃあないのか。知り合いの葬儀屋は遠方で死んだ人を深夜に霊柩車で運んでいると後ろから声をかけられるって言っていたよ」「△△ッ・・・」今度はWACは悲鳴も上がられなかった。どうしても話題がオカルトに向かってしまうのはやはり私が佛法・務幹部だからなのだろう。
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  1. 2019/05/20(月) 11:34:03|
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