FC2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

7月2日・「ロリータ」の作者・ウラジミール・ナボコフの命日

1977年の7月2日は小説「ロリータ」の作者でロシア貴族のウラジミール・ナボコフさんの命日です。78歳でした。
「ロリータ」は日本ではロリータ・コンプレックスと言う派生語ばかりが広まり、未成熟な少女に対する男性心理の倒錯としか理解されていませんが、その一方で少女の身心の成長に翻弄される男性が辿る残酷な結末を描く非常に深い作品なのです。
野僧はこの本を中学時代に小坊主として下宿していた寺の小方丈(住職の私室)に山積みされている本の中で見つけて勉強の合間にこっそりと読み耽ったのですが、中学生の年下では小学生になってしまうため意外にも男性の愚かさを佛教の人間分析と結びつけて真面目に思索しました。これが高校生であれば中学生に走った可能性もあります。
「ロリータ」は主人公の手記と言う形式を採っているため極めて実在感があります。第2次世界大戦中にヨーロッパからアメリカへ亡命した1910年生まれの文学者で大学教授は13歳から14歳の夏に数カ月年下の美少女と出会って恋仲になりますが、美少女は4カ月後に病死してしまいました。その後、一度は身元を明かさない怪しげな女と結婚しますが別れ、アメリカへ亡命したのです。1947年になって主人公はたまたま出会った12歳の少女(=呼び名がロリータ)に死んだ恋人の面影を見つけて恋に堕ちてしまいます。そして少女を手に入れるために同年代の母親と結婚し、母親が急死すると主人公は少女を自動車に乗せてアメリカ各地を逃避行したのです。しかし、少女は主人公が望む亡き恋人の複製品になることを拒否し、時間の経過と共に主人公は大人に成熟していく少女に自らの衰えを実感するようになりました。そうして1949年7月4日に少女は忽然と姿をくらまし、主人公が執念深く捜索すると1952年9月22日に手紙が届いたのです。その住所を訪ねると17歳になっていた少女は若い男性と結婚し、妊娠していました。失意の主人公は少女を連れ出した友人を殺害し、やがて逮捕されて拘留中の獄中で病死、少女も難産で死亡してしまいます。
作者のナボコフさんは1899年にサンクトペテルブルグで帝政ロシアの貴族の長男として生まれました。ロシア革命から2年後の1919年にドイツへ亡命してケンブリッジ大学に入学しますが、卒業後はドイツに戻ったものの帝政ロシアで自由主義派の指導者だった父親が暗殺されたため、教師として働く傍ら文筆活動を始めました。1925年に同じくロシアから亡命していたユダヤ系の女性と結婚して長男を儲けたのも束の間、ナチスの台頭を受けてフランスへ移住しますが、ナチス・ドイツの侵攻によりアメリカへ渡り、帰化しました。アメリカでは大学教授の職を得るのと同時に英語の小説などの文筆活動でも注目を集めていきました。そんな中で「ロリータ」を発表したのです。当初は出版社に持ち込んでも「変質趣味のポルノ」と看做されて受けつけられなかったのですが、発表後は世界的な名声を獲得し、現在では古典的名作としての評価が定着しています。
晩年は妻とスイスの高級ホテルで暮らしながらロシア語と英語の作品の相互翻訳や趣味のチェスの研究、蝶の採取と分類に励み、貴族らしい生活を送っていたようです。
スポンサーサイト



  1. 2019/07/02(火) 13:04:52|
  2. 日記(暦)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<振り向けばイエスタディ1600 | ホーム | 振り向けばイエスタディ1599>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/5478-2e11c563
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)