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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1602

その夜、杉本は鎮海基地の在韓米海軍司令部で勤務するサンディ・クミコ・トミタ少佐と待ち合わせた。今日は朝から釜山市内を歩き回り、市場の小母さんたちや街を闊歩する老若男女の雑談に耳を傾けてきたため身心ともに疲労困憊している。市民の多くは抗日団体がソウルの日本大使館前への設置を運動している従軍慰安婦少女像を釜山市の日本領事館前にも設置することを当たり前のように語り合っていた。やはり韓国人にとって日本は利用価値があるから交流を持っている隣国に過ぎず、宗主国である中国がその役を代わってくれるならこれまでの恥辱を含めて敵対しても構わない憎悪の対象であることを痛感した。
「貴方、お久しぶり」昌原駅の改札の前でトミタ少佐は待っていた。前回までの逢瀬で互いの携帯電話の番号は交換しており、釜山に向かう前に今日の再会は約束していた。そのため服装はデートに相応しい洗練されたジャケットだ。
「今回の取材は何なの」杉本が歩み寄ると自然に腕を組みながらトミタ少佐が訊いてきた。雑誌記者の肩書で活動している杉本は前回、李明博政権の中枢にいる人物が韓国軍に対して対馬奪還作戦の研究を命じたとの風説の真相を確認するために来韓していて偶然に撃沈事故が発生したと説明した。その「内部情報を知られている」と言う衝撃がトミタ少佐を引き寄せる結果を生んだ。今回は日系アメリカ人であるトミタ少佐の立場から見た韓国の現状を語り合いたい。
「韓国世論が急激に反日、反米に傾斜している原因の究明だよ」あの時の韓国海軍のコルベット艦・天安の爆沈事件は李明博大統領が国民に向けて事件の詳細を節眼した談話を発表した後も色々な立場の人間がインターネット上で好き勝手な推測を掲示し、それをマスコミが取り上げて事態を複雑にしている。その後に発生した延坪島への砲撃事件も含めて北朝鮮の軍事力行使さえも韓国軍やアメリカ軍に原因があると断定的に報じるのが韓国の現状だ。
夕食はトミタ少佐の案内で日本人が経営している日本料理店に入った。韓国には日本で修業した板前が経営する本格的な日本料理店は少なくないが、味付けが微妙に異なり、何よりも日本語を理解する韓国人に会話を聞かれるのは危険が伴う。
「大将、今夜は日本の家庭料理をお願いします」「へい、いつもの賄い料理ですね」寿司屋のようなカウンターの席につくとトミタ少佐はメニューを見ずに注文した。どうやらこの店ではハワイの実家で食べていた日系人の母が作る家庭料理を味わっているらしい。杉本にとっても懐かしい味である。そこに店主の妻と思われる初老の女性が白飯と味噌汁、緑茶を出した。
「鎮海は日本が作った美しい街だったんだけど李承晩が完全に破壊した上、市民にも反日教育を徹底したからソウルや釜山よりも反日色が濃いのよ」大き目の湯呑の緑茶をすすりながらトミタ少佐は苦い顔をして話を始めた。苦いのはお茶ではなく話題の方だ。杉本も日本が市内を流れる川に堤防を築いた後、ソメイヨシノを植樹して美しい桜並木にしたのだが、李承晩の命令によって根まで掘り起こして捨てられた。ところが韓国の植物学界が「ソメイヨシノは韓国原産」との説を発表するともう一度、植え直したと言う馬鹿な話は知っている。
「それじゃあ鎮海でも従軍慰安婦少女像を作れと言う市民運動が起こっているのか」「あれは韓国市民と日本人観光客に見せるためのプロパガンダ(政治的宣伝)だから鎮海では効果が低いのよ」「その代わり強制労働者の像を計画しているようです。どうぞ」店主がホウレン草の白和えと刻んだ漬物の小鉢を出しながら補足した。これは店主夫婦の夕食のオカズの予定品かも知れない。強制労働者は徴用工とも呼ばれているが、本来は日本企業が韓国内よりも高給で募集したことに応じて訪日した労働者が敗戦の混乱の中、給与が未払いのまま帰国したことを「強制労働」と歪曲して政治問題化しているものだ。この問題を韓国社会に流布したのは日本国内の朝日新聞を中心とする親北朝鮮、反(軍事政権の)韓国の団体であり、反日感情を扇動して日韓国交回復を阻止するために賠償請求訴訟を乱発したのだ。
「クミコも居心地が悪いな」「うん、軍の中では階級で敬礼はされるけど、広報官として韓国のマスコミの前に立つと名前を見た瞬間に敵意に火が点いて、日本の戦争犯罪の質問が始まることもあるの。やりにくくていけないわ」ここで店主が海老フライと刻みキャベツ、切ったトマトを盛った皿を出した。その顔は同情と憤懣を和えている。
「ところで韓国軍は日本の大震災をどう見てるんだ」「それが韓国軍内に自衛隊の災害派遣を分析した内部資料が配布されたのよ。自衛官の体力や命令と服従の規律、組織力などを具体的に検証していて実際に作業現場を見学してきたとしか思えない内容だったわ」実は杉本はその現場に立ち合っていたのだが、それは口にしなかった。
「アメリカ軍のトモダチ作戦みたいに韓国軍も一緒に汗を流せば日韓友好も進展するんだがスパイを送り込むようではな」ここで料理が揃い2人で手を合わせた。
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  1. 2019/07/05(金) 11:55:48|
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