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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1634

東北では自衛隊の災害派遣が次第に縮小され始めた頃、東京では醜悪な政争が始まっていた。民政党は政権交代から1年弱の参議院選挙で大敗を喫したが、政権の私物化に暗躍を続ける尾沢との代表選挙に辛勝した缶首相も1年を待たずに賞味期限が切れ始めて、東北地区太平洋沖地震と言う未曽有の緊急事態で延命されたものの4月の統一地方選挙でも大敗したことで、身内=政権与党からの造反者が続出し始めたようだ。ただし、3月11日以来、震災関連の記事しか載っていなかった新聞各紙はこの問題を気分転換に利用しようとしている気配もする。
「缶内閣もいよいよ終わりですかね」今日も事務室のテレビの前で1曹と曹長は腕組みをしながら時事問題を語り合っている。この2人が揃っているのも縮小が進んでいる証左だ。ただし、女性事務官が私と2人きりになれる時間が減って不満そうなのは少し拙い。
「参議院議長が退陣勧告するなんて聞いたことがないよ」テレビでは民政党から選任されている参議院議長が読売新聞が寄稿した退陣勧告を取り上げている。この議長は元自民党とは言え河野洋平が新自由クラブを結党すると同調して幹事長を務め、自民党に復党すると文部大臣や総務会長などを歴任しながらも尾沢一郎が離党した時には恩を仇で返している。それでいて昨年9月の代表選挙では反尾沢の立場を取っていた。それが招いた日本の混乱と停滞を考えれば亡国の徒の1人と断ぜざるを得ない。
「今も参議院は自民党の方が多数派なんだろう」「自民党の時の捻じれ状態は憶えていますが、今は興味ありませんから判りません」「2代目福田首相が『可哀想なくらい苦労しているんですよ』と涙ながらに訴えてたもんな」ここで2人は皮肉に笑いながら席に戻った。自民党を政権交代に追い込んだのはやはり参議院選挙での大敗による衆参両院の捻じれ状態だった。民政党の有力議員たちはテレビの報道バラエティー番組では是々非々の現実的な見解を述べていたが、国会では真剣な議論を放棄して死に体の政権を窮地に追い込むことだけに専念していた。これも尾沢の政治的策略だったと言われているが、山口県知事から「山口出身9人目の首相」とは認められなかったが、言葉の端々で幕末史を誇示している缶首相も忠節や道義よりも野望と私怨を優先する山口県人なので共犯者だとしても不思議はない。
「自民党は不信任案を提出しないんですかね」2人が担当の書類の処理を始めると女性事務官が確認印を必要とする文書を綴じたバインダーを差し出しながら訊いてきた。文書に目を通す前に見上げると意外に真顔だ。阪神大震災も陸上幕僚監部で経験している女性事務官としては今回の災害派遣を注視していて政治の無能が現場に多大な障害を与えていることを痛感し、彼女なりの憂国の情を抱いているようだ。
「不信任案は衆議院の専決事項ですから民政党が過半数を持っている以上、可決の見込みが立たないんでしょう。それに長年、与党として政権を担ってきた自民党としては震災復興に当たっている現政権を混乱させられないと言う常識も働いているのかも知れませんね」ここまでは建前だ。女性事務官の目が綺麗事では許さないのを見て、私は文書に目を通して添付してある枠に印鑑を押してから音量を下げて話を続けた。
「本来ではあれば国家の危機を招いている政権を打倒するために血みどろの戦いを繰り広げるのが保守政党の責務です。民政党の新人議員たちは尾沢が選んで洗脳しただけに反自民に染まり切っていますが政権交代以来、権力欲の亡者としての本性を露わしている尾沢の実像を目の当たりにして疑問を感じている者も少なからずいるはずです。彼らを個別撃破して取り込めば元々が民政党への忠誠心よりも利用できる組織として参加しているだけの連中ですから簡単に裏切るんじゃあないですか」本当は「現在の自民党総裁に覚悟と根性がないからだ」と補足したかったが課業時間中なので控えた。私がバインダーを手渡すと女性事務官は満足そうな顔で会釈をして席に戻った。
「そう言えば5月15日は過ぎてしまったな」ここで私は妙なことに気がついた。5月15日は言うまでもなく昭和7年に発生したクーデター5・15事件の日だ。私は軍や自衛隊が政治に関与することには反対であり、ましてや武力を行使して国民に選ばれた政治家を殺害する行為は小説家や映画人がどのような脚色を加えても決して許されない犯罪だと考えている。強いて言えばタイのように軍が政治の混乱を収拾するため自主的に出動し、国王の周旋で撤退する無血クーデターであれば頭ごなしに否定はしない。
「国会の解散は何時になるんだろうか」私は独り言を呟いてパソコンの画面を見た。日本人には選挙と言う政治を変革させる手段を与えられている。しかし、今回の政権交代自体が選挙の結果であり、世論誘導によって政権交代まで実現するマスコミこそ民主主義を誤る元凶なのだ。将来、朝日新聞を襲撃した赤報隊が逮捕されれば裁判の弁護を担当したくなってきた。
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  1. 2019/08/06(火) 13:08:00|
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