fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1717(一部、実話です)

私としては直属上司である防衛大臣と同様に業務上の影響を受ける法務大臣の情報も収集しなければならない。こちらは山口県岩国市の選出なので田沼元准尉への依頼になる。私は翌日の土曜日に自宅のパソコンで手紙を打った。
「貴地ではお盆の檀経回りが一心地ついたところに秋彼岸ときますが無理しておられませんか」書き出しは同業者の心配風だが東京圏での盂蘭盆会は7月15日なので今一つ真実味がない。尤も私は宗教法人としての坊主業界には関わっていないので盂蘭盆会が7月と8月のどちらにしても他人事ではある。つけ加えれば春・秋分の日に祖先の慰霊を営むのは本来、神道の儀礼であって佛教が彼岸を勤める根拠はない。実際、中国では4月8日に清明(シーミー)節、朝鮮半島では太陰暦の8月15日に秋夕(チュソク)として宗教に関係なく祖先供養を勤めている。前置きはこのくらいにして本題に入った。
「宇部市で生まれ育った缶首相が退陣しましたが、准尉からご教示があったように山口県では県知事が県出身であることを否定していたくらいなので残念がる声は起きていないでしょう。むしろ自民党政権の復活が近づいたと歓んでいるのかも知れません」田沼元准尉とは時候の挨拶だけでなく佛教に関する話題が耳目を集めると互いの所見を交換しているが、政治問題については缶内閣が成立した時の山口県内の反応を訊いたくらいであまり取り上げていない。
「今回の野畑内閣では広岡秀夫法務大臣が山口県岩国市の出身のようですが、新聞の県内版や地元局のニュースではどのように報じていますか。野僧は陸幕の法務官室で勤務している関係で野畑政権の法務行政の方向性を知っておく必要があります。前回の缶首相に関するご教示は大変に役に立ちました。今回もよろしくご教示下さい」この程度の文章の量であればパソコンの文字なら葉書で十分だが、田沼元准尉の返事は折り紙のような郵便書簡=ミニレターなのでこちらの方が安価にする訳にはいかない。妙なバランス感覚を発揮して便箋代わりのA4用紙に印刷した。
田沼元准尉は缶首相の時の質問には苦労したようで今回は就任時から用意をしていたらしく回答は予想外に早かった。A4版の茶封筒には元准尉が購読している新聞の関係する記事も同封してある。すると保守の大本山だと思っていた山口県の意外な地域事情が判明した。
「拝啓、愚昧なる身の乏しい知識からご下問にお答えします」田沼元准尉の手紙は同じA4版1枚でも毛筆なので文字数が少ない。それでも前略にしないところが長年にわたって航空自衛隊で総務員として奉職してきた田沼元准尉だ。ただし、「愚昧」は宗祖・親鸞の自称でもあるので浄土真宗の坊主である田沼元准尉としては謙遜ではない。
「岩国市では平成10年を過ぎた頃から急激に反米軍基地の運動が激しくなって現在では沖縄並みのデモが行われているようです」私が防府南基地で勤務していた頃には沖縄で見てきた反米軍基地運動とは全く違い共存を志向する市民の態度に感心していたが、平成になって早々に尾沢一派が自民党を分裂させ、細川政権が成立して以降に変質したらしい。
「平成19年末に辞職した岩国市長は在任中、厚木から岩国に空母艦載機の夜間飛行訓練を移す計画に反対して市民運動を起こしています。広岡法相はその岩国市長の盟友のようです。新聞記事では元大蔵官僚の弁護士ですが自衛隊には敵対的な態度を取るのではないでしょうか」言葉遣いは田沼元准尉らしさを維持しているが書体と筆圧に元自衛官としての憤激を感じる。
「このような人物が法相になったことで2佐が担当しておられる海上自衛隊の裁判に悪影響が及ばさないかと心配しております。弁護士として尽力されますようにお願い致します」最後は挨拶なので読み流してから新聞に移った。すると広岡新法務大臣は東京大学法学部卒の元大蔵官僚で国税畑の経験を積みながら省庁間の人事交流で在インド大使館の1等書記官として赴任している。帰国後は大蔵省を離れ、内閣法制局の参事官を経て退官して山口県で弁護士登録をしたようだ。つまりエリート・コースから外れたと見切ったのだろう。記事の解説では人権派弁護士として活躍していたらしい。意外なことに田沼元准尉が問題視している岩国市長とは高校の同級生で平成11年の市長選で敗れていた。こうなると問題の元岩国市長も調べなければならない。そこで最近、少しずつ使えるようになってきたインターネットを開いた。
「なんじゃこれは」インターネットで元岩国市長の経歴を紹介する記事を読んで私は独り言を叫んでしまった。そこには「東京大学卒、労働省に入省・・・人事交流で在タイ大使館の1等書記官として赴任」とある。つまり同じ穴のムジナと言うことだ。
「昭和29年生まれか。ワシよりも7歳年上なら70年安保闘争の頃に大学生だったことになるぞ」これで結論が出た。おそらく70年安保の学園紛争では活動家以外の学生も共産主義革命に洗脳されており、官僚になった人間の中にも国家中枢に送り込まれた政治工作員が含まれていたのだ。今回の政権交代はその起爆装置が作動した結果と言うことだ。
  1. 2019/10/28(月) 13:28:07|
  2. 夜の連続小説8
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<振り向けばイエスタディ1718 | ホーム | 10月28日・フィンランドの軍神?ユーディライネン大尉の命日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/5719-71953954
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)