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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1718

アメリカ軍が撤退を始めたアフガニスタン情勢を現地で確認していた岡倉は相棒のジェームズが本国からリビアへの移動を命じられたため8月一杯で出国することになった。ジェームズはトルコ経由で地中海を渡る予定で、イスタンブールで松本と合流するらしい。一方の岡倉はアメリカに帰る途中で韓国に寄り、ジアエと聖也(セインヤ)との家族団欒で激務の疲れを癒すつもりだが、酷使されているジェームズを思うと後ろめたい気持ちになる。
「貴方、お帰りなさい」「アッパ、エオセオ・オセヨ(お父さん、お帰りなさい)」ジアエはいつものように聖也の手を引いて玄関で出迎えたが、岡倉はアフガニスタンで見てきた寡婦と孤児たちの姿が重なって無意識に後ずさってしまった。それでもジアエは顔を染めている疲労の色で全てを察して何も言わず、岡倉も黙って聖也を抱き上げるとリビングに向かって歩き始めた。この長い廊下が岡倉を家族に引き戻してくれる帰路になっているようだ。
「お帰り、タイガー」「お疲れさまでした。今年は秋夕までいられるの」リビングの空気もいつもと変わらない。岡倉は義母に訊かれて初めて今年の秋夕が9月11日から13日なのに気がついた。しかし、1週間以上の長期休暇はアフガニスタン情勢について報告する責任を考えれば難しい。アフガニスタンの水面下の情勢はこの休暇をためらうほど緊迫していたのだ。
「今年は出張のついでですから少し早くなってしまいました。墓参りはジアエが休みの4日の日曜日に行くことにします」岡倉の説明に義母は半分残念そうに、もう半分は墓参を欠かさない婿に感心した顔をしてうなずいた。
「ソウル市内では随分と嫌な思いをしただろう」岡倉が乗り換えたタイの空港で買ってきた土産のお菓子を食べた聖也がソファーで昼寝をすると義父が難しい顔になって話題も変えた。ソウル市でも郊外にある李家に来るまでには市街地を通らなければならないが、反日団体の街頭演説に聞き入っている群衆の姿やいたる所に貼ってある(いわゆる)従軍慰安婦問題を糾弾するポスターを見ると韓国人の反日感情は狂気の域に達しているように感じた。
「確かにこの家では日韓友好が守られているのに国家同士となると何故ここまで憎悪されるのか全く理解できません。これは失礼な言い方ですが韓国が問題視している反日の原因は日本側にあるとは思えないんです」実際、訪問するたびに韓国の反日の色合いは濃くなる一方だ。その原因については杉本と本間を交えて話し合っているが明確な解答は得られていない。
「タイガーは従軍慰安婦や徴用工の問題はどう考えてるの」岡倉が呈した疑問に義母が質問を被せてきた。義母は少し皮肉屋なので反論しているように聞こえるが実際は逆である。
「結局、どちらも日本の朝日新聞や岩波書店とそれにつながる亡国言論人が発掘して喧伝した虚構でしょう。従軍慰安婦は朝日新聞の捏造だし、徴用工は岩波書店の歪曲です。韓国のマスコミはそれを請け売りして世論に火を点け、政府は世論に迎合しながら外交カードに利用してきた。ところが韓国ではその虚偽の史実が勝手に暴走を始めて誰にも止められなくなってしまったようです」やはり岡倉の見解に義父母も納得したようにうなずいた。
「戦時中に日本軍が前線でも売春宿を営業させていたのは確かだ。そこで韓国の妓生(キーセン)宿で買った娼婦たちを働かせていたのも間違いない。その中には貧しい親に売られた初潮前の少女もいただろう。しかし、日本の韓国総督府や軍が女性を強制連行させた事実はない。それを捏造したのは朝日新聞だ。私は朝日新聞が女性狩りの現場と書いた済州島の出身だが、父や兄は妻や姉を奪われて黙っているような情けない男ではなかった」この話は何度も聞いているが、今日は酒が入っていないので淡々とした口調になっている。
「それにしても朝日新聞や岩波書店はどうして自分の国を貶めるような主張ばかりするの。日本人は何故そんな新聞や出版社を許してるの。我が国では考えられないわ」義母の質問に義父とジアエも岡倉の顔を注視した。この説明も会話に区切りをつけるためには繰り返すしかない。岡倉はジアエが注いだ熱い紅茶の湯気を吸ってから口を開いた。
「朝日新聞はスターリン時代の第3インターナショナル戦略の下部組織に組み込まれて以来、日本が破滅させることを目的とする世論喚起を繰り返してきました。戦前は大陸での戦争拡大を扇動しながら南進を主張して、シベリアへの脅威を除きつつ英米との衝突を画策した。そうして国民党軍との長期戦でどちらも消耗させて毛沢東の共産主義国家の樹立を助けた。戦後は一貫して日本人の愛国心を阻害する一方で国際社会での立場悪化を画策してきた。ところが日本のインテリとエリートたちは自分たちが愛読している朝日新聞と岩波書店を知性の証明のように喧伝したから多くの国民も信じ込んでしまった。だから日本では未だに盤石の地位を維持しているんです」今回も岡倉はこの説明をしながら「隠れ赤報隊(=朝日新聞阪神支局襲撃事件を起こした)」と陰口を叩かれていた同期・モリヤ候補生の顔を思い出していた。
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  1. 2019/10/29(火) 11:44:54|
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