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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1743

「今回は俺の荷物を片づけに来た」日本では首相が交代し、2年間の民主党政権でどん底にまで堕ちた国運が果たして挽回できるのかと国内外の日本人が注視している頃、杉本はソウルの内縁の妻・安楷林(アン・ヘリム)のマンションを訪れていた。元ニュース・キャスターで現在は保守系のフリー・ジャーナリストとして活動している安楷林との関係を断つつもりだ。
「そうね。私も日本人と関係を持っていることが世間に知れるとこの世界では生きていけなくなるから助かるわ」安楷林はクローゼットの引き出しから衣類が中心の荷物を出してカバンに積めている杉本の背後で平静な口調で同意した。韓国内の反日感情は大手マスコミと日本の朝日新聞の共謀によって激化の一途を辿っており、最近は朝日新聞が捏造した虚偽の史実の被害者を名乗る高齢者たちが損害賠償は日韓請求権協定によって認められないため精神的慰謝料を請求する民事訴訟を続発させている。発足直後から慢性的低支持率に悩む李明博政権は世論に迎合して反日を公然化しており、今ではマスコミも軍事政権下の報道統制以上に厳格な言論の自主規制を強いられている。安楷林は保守系の言論人であっても、むしろそれ故に反日を標榜せざるを得ず、杉本との愛人関係は危険過ぎるタブーなのだ。
「お前には色々と協力してもらったが、俺もアメリカ国内や国際情勢に関する情報を提供してきたからギブ・アンド・テイクと言うことで決済してくれ。肉体関係も互いに快楽を楽しんできたから貸し借り無しだな」杉本はイギリスの諜報部員から入手したナチス・ドイツが開発し、貴族階級の女性たちを肉欲に溺れさせた媚薬を用いて安楷林を自分の所有物にした。その後も関係を持つ度に使用して効果を継続してきた。薬物の効果と杉本の卓越した性技による快楽に理性を忘れて肉欲に溺れてきたこのインテリ女性が果たして立ち直ることができるのか。個人的には今後の影響に興味がある。しかし、今夜は打ち止めを果たさなければならない。
「これで荷造りは終わりだ。何か見つけたら捨ててもらって良い。勿論、次の男に譲っても文句はないよ」衣類と韓国国内の政治や軍事の雑誌、報道番組を録画したDVDなどをカバンに詰め終わると杉本は両手を伸ばして腕組みして立っている安楷林の頬を挟んだ。
「愛している・・・」「あの日もそう言って私を落としたのよね」唇を重ねる前に安楷林が呟いた。在米の日系人向けの雑誌・ウィクリー・ジャパンの記者の肩書で人気キャスターだった安楷林にインタビューを申し込んだのは江陵浸透事件の時だった。江陵浸透事件とは1996年9月18日に江原道江陵で座礁している北朝鮮の潜水艇が発見され、潜入した工作員の捕獲・掃討のため11月7日まで韓国軍が出動した一連の軍事行動だ。
インタビューの席で杉本は朴正熙、全斗煥、盧泰愚の3代にわたった軍事政権を否定する世論によって成立した金泳三政権が北朝鮮の敵対行動にどこまで真剣に対応するのか報道する立場で感じている所見を訊いた。この時、杉本は「この事件は金泳三政権が北朝鮮との融和を主張してアメリカの意向を受けて敵対行動を先鋭化する軍事政権を批判してきたことへの踏み絵ではないか」との見解を力説・強弁して関心を持った安楷林をホテルの夕食に誘った。そこで巧妙に内服用媚薬を飲ませて自室に誘い込み、コンドームに塗った精神剤で完全に籠絡した。その時にも長年のファンとしての片想いを告白するように「愛している」と口にしていた。
「うん、その想いは変わらないよ」杉本は安楷林の冷めた視線を額に感じながら唇を塞ぎ、舌を差し入れた。手は肩を撫でながら胸元に下がり、乳房を掴む。この豊かな弾力も今夜が揉み収めだ。手を乳房から腰に往復させながら背中のチャックを下し、部屋の灯りを消してから抱き上げてベッドに運ぶ。この手順にも熟練している。ムードを演出しながら服と下着を脱がして全裸にするとカーテン越しの街の灯りと枕元の常夜灯で照らし出された安楷林の肉体に15年の歳月による衰えを感じた。あの頃は仰向けにしても高く盛り上がっていた乳房が重みで左右に分かれ、腹部から腰にもわずかな弛みがある。陰部の毛も濃く固くなったようだ。
杉本はこれまでの謝礼としてこの女に最後の快楽を与えることを決めた。今夜は避妊具を装着しない。もう一度、念入りな口づけをすると唇と舌を熟知している性感帯に這わしていく。しかし、安楷林の反応がいつもとは違うように感じた。それを殺意と察したところで杉本は行為を止め、胸の上に座って膝で両腕を押さえた。
「どうしたの杉本」安楷林は杉本の本名を呼んだ。韓国では在日韓国人の金田で通している。日系人向けの雑誌の記者をしているのは在米韓国人にも購読させるためだと説明していた。
「貴方が日軍(自衛隊)の諜報活動に私を利用していることは判っているのよ。今は我が国の防諜機関は機能停止しているから表沙汰にはできないけど外交当局に引き渡すつもりだった。でもプロの勘には勝てなかったみたいね」そう言って安楷林は笑みを浮かべて目を閉じた。杉本は必ず手が届くところに置いている注射器を取ると首筋に注射した。
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  1. 2019/11/23(土) 13:19:20|
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