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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1793

東北地区太平洋沖大地震と言う未曽有の大災害が起こった2011年は「坂の上の雲」の最終話で盛り上がって年末年始休暇に突入したいと思っていたが、北朝鮮の金正日の死とそれを巡る野畑政権の対応で一気に盛り下がってしまった。
22日の夕方、帰宅前にニュースを点けると冒頭から「在日朝鮮人総連合会の最高幹部が弔問のため訪朝した場合、北朝鮮への経済制裁の規定に基づいて日本への再入国を許可しない」と言う俄かには信じ難い日本政府の発表が報じられていた。
「相手が敵国でも死に際しては礼を尽くすのが日本的美学でしょう」民政党政権には珍しい北朝鮮に対する厳格な対応であるにも関わらず曹長が怒りの声を上げた。
「いくら相手が人間の情を感じなくても関係する国々は理解するでしょう」1曹も同調すると日頃はラッパの最終音と同時にドアを開ける二村事務官も立ち止まって机の上にハンドバックを置いた。最近は我々の時事阿呆談を仲間の女性事務官たちに話すと感心されるそうで、少し興味を持ってきたらしい。確かに陸上自衛隊の中で階級や立場を問わずにここまで好き勝手な見解を戦わせている職場はないだろう。
「野畑首相としては19日に京都で行われた韓国の李明博大統領との会談で共同歩調の対応を申し合わたのかも知れません。したがって韓国も同様の対応を取る模様です」男女のアナウンサーの横に座っている解説者の補足説明でこのニュースは終わった。そこで私が締め括りに歴史的教訓をつけ加えると二村事務官も待ちかねたように顔を向けた。
「第2次世界大戦末期の1945年4月12日にアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が脳卒中で急死したんだが、ヒトラーはベルリン発の短波放送で罵詈雑言の限りを尽くした声明を発表したのに対して4月7日に就任したばかりだった日本の鈴木貫太郎首相は『ルーズベルトの卓越した戦争指導で日本は苦境に陥った。だからこそその偉大さは身に染みて理解できる。その偉大な指導者を失ったアメリカ国民の悲しみに対して心から哀悼の意を表したい』と言う英文のラジオ放送を流したんだ。これを受けてアメリカのワシントン・ポストとニューヨーク・タイムスは1面に載せて絶賛しただけでなく、ヨーロッパでも日本とナチスは違うと言う評価が広まったんだ」だいぶ長くなったが私のワン・ポイント・レッスンは終わり、茶話会のネタを仕入れたらしく二村事務官は慌てて帰って行った。3人でその背中を見送ると時事阿呆談が本格的に始まった。今回も開口一番は曹長だ。
「どうして外務省はそれを教訓にしなかったんですかね」「多分、金正日を追悼すれば小泉訪朝が取り上げられることになるから外交成果がない民政党政権としては容認できなかったんでしょう」最近の1曹は曹侯学生の後輩としては守山の田島1尉や久居のWACの中村昌代3曹、そして北キボールとハワイで会った本名と階級不明の自称・松本とも遜色がない知的水準になっている。部内の受験年限の35歳は過ぎてしまっているが、曹長に昇任して2年後以降の3尉候補者の合格は間違いないはずだ。
「同様に李明博も金大中の南北会談と太陽政策を賞賛されるから無視したいんだな」私の見解に2人もうなずいた。二村事務官がもう少し我慢すれば時事阿呆談も佳境に入ったのだが、保全上の不安もあるから無理に聞かせる必要はない。
「どちらの政権も国内事情の損得勘定だけで外交を考えているから卑しい判断しかできないんだな。意外にウマが合うんじゃあないのか」曹長がニュースに出演している同年輩の解説者のようにまとめると法務官がドアを開けて入ってきた。
「今日のニュース討論会のネタは何だね。金正日の葬儀の話題かな」法務官に参加されると曹長と1曹が遠慮してしまうので少し困るのだが拒否することはできない。
「本来であれば弔電で故人の遺志の実現として拉致問題の解決を求めれば外交上の圧力になるんですがね。いっそのこと小泉首相が個人資格で訪朝して参列すれば日本の体面は立って民政党政権にも痛撃になるでしょうけど無理ですな」やはり私が阿呆な見解を述べることにした。すると法務官は期待通りの阿呆さ加減だったらしく鼻息を噴き出して苦笑した。
「小渕総理の時にはマスコミはどんな感じで報道してたっけな」ここで法務官が意外な方向に話題を広げた。小渕恵三首相は2000年4月2日に脳梗塞を発症して都内の大学病院に入院したのだが、すでに意識を喪失していたと言う情報があり(写真雑誌に酸素マスクをして目を半開きにした顔で搬入される写真が掲載された)、内閣官房長官への職務代行や4月5日の総辞職と森毅朗首相への後継指名が、自民党小渕派と江藤・亀井派の首脳だけの密室談合で決定されたとの疑惑の追及だけで、病状を気遣う報道は見当たらなかった。やはり「平成おじさん」は腐った時代の日本人の醜悪な仕打ちを受けて亡くなったようだ。
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  1. 2020/01/12(日) 12:33:04|
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