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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

1月30日・在日米軍の犯罪の悪しき前例・ジラード事件が発生した。

サンフランシスコ条約の発効により日本が正式に独立を果たして5年目になる昭和32(1957)年の明日1月30日に第1騎兵師団第8連隊に所属する21歳のウィリアム・S・ジラード3等特技兵(一般の徴兵とは別枠で採用される特殊技能所持者)が群馬県の相馬原演習場内の射撃訓練場に金属屑として売れる空薬莢や弾頭を拾うため入っていた46歳の地元の女性を擲弾筒(グレネード・ランチャー)発射用の空砲で射って死亡させた事件が発生しました。
余談ながらジラード特技兵が所属していた第1騎兵師団は黄色の丸みを帯びた逆三角形を斜めの黒線で2分割して、上の枠に馬の頭を描いた部隊章が有名ですが、創立は西部劇で騎兵隊が猛威を揮っていた開拓時代ではなく第1次世界大戦後の1921年です。
射撃場内は危険なため民間人の立ち入りが禁止されているのは当然ですが、この地域では帝国陸軍の時代から実弾射撃訓練後に空薬莢を拾って金属屑として売ることが副収入として定着しており、早い者勝ちでもあったため隙を見つけては侵入していたようです。
この時、ジラード特技兵は女性に「ママサン ダイジョウビ タクサン ブラス(=真鍮=薬莢) ステイ=ママさん 大丈夫 沢山 真鍮あるよ」と声をかけて呼び寄せ、至近距離から発射したとの目撃証言があり、通常の空砲と比べものにならない威力を持つ擲弾発射用の空砲で即死させたのです。ちなみにジラード特技兵が発射したM1ガーランド小銃用のM9HEATライフルグレネード改は600グラムの弾頭を最大射程約230メートル飛ばして100ミリの装甲を貫通させる威力があるとされています。
日本政府としては事件が休憩時間中に発生していることから地位協定が米軍所管と定める部隊行動ではなくジラード特技兵個人の犯罪として日本の司法で裁くことを要求しましたがアメリカ政府と軍は強行に反発し、最終的に日米安保改定を3年後に控えて日本国内の反米世論の激化への懸念を説明されてアメリカ側が折れたとされていました。
ジラード特技兵は酒癖が悪く、周囲に借金を重ねる素行不良な兵士だったため部隊でも疎まれる存在だったようですが、それでもアメリカ国内ではジラードの親族を中心にアメリカでの裁判を要求する主張が報道されていました。尤も、海外駐留アメリカ兵に本土の東海岸と同等の処遇を与えることは合衆国憲法が認める権利なので当然の要求ではあります。
裁判では殺人罪ではなく傷害致死罪で告訴され、前橋地方裁判所は懲役3年・執行猶予4年の判決を下し、控訴しなかったことで刑が確定しました。これを受けてジラード特技兵は不名誉除隊しましたが、間もなく日本人女性と結婚して帰国を果たしています。
ところが1991年になって公開された外交文書によって日本政府(石橋湛山内閣と岸信介内閣)が殺人罪ではなく刑が軽い傷害致死罪で告訴することを交換条件に日本の司法で裁く密約を交わしていたことが発覚しました。
ジラード元特技兵は174832ドル=当時の360円で換算すれば62939520円の補償金を支払っていますが、受け取った遺族の「裁判を売買した代金だ。感謝はしない」と言う怒りの声が正しかったことになりました。
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