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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

第86回月刊「宗教」講座=短い経文シリーズ2「延命地蔵菩薩経偈」

この経典は正式には「佛説延命地蔵菩薩経」と言う題名で、偈文と言うのは長文の経典の最後に内容の要点を短く詩的に語った文章のことです。このため「妙法蓮華経観世音菩薩普門品」の偈文が「観音経」として読誦されているように独立した経文として地蔵菩薩への供養や祈願の法要などで勤められることも多いのです。
「佛説延命地蔵菩薩経」には「不空三蔵奉詔訳」と断り書きしてありますが、不空三蔵とは日本の真言宗が鳩摩羅什(くまらじゅう)さま、真諦(しんたい)さま、西遊記で有名な玄奘(げんじょう)さまと共に西域の砂漠を踏破して天竺(インド)から唐へ膨大な経典を持ち返り、漢訳を成し遂げた三蔵法師にしている中国の4大訳経家の1人で、弘法大師・空海さまの師僧である恵果さまの師僧である真言6祖・不空金剛さまを指します。ところが歴史的資料では不空さまが手掛けた著作物に「延命地蔵菩薩経」は含まれておらず、事績としても翻訳に当たっていたとする記録がない上、中国の密教などの寺院で勤経・読誦されている形跡もないため、「本当は日本製ではないか」と言う虚偽説が広まりつつあります。それでも長文の各種地蔵経典の要点を網羅しており、文脈も簡潔明解に整理されていて、仮に作者が日本人であるとすればかなり高度で深遠な識を有する高僧のはずで、逆にどうして本名を明かさなかったが謎です。
そもそも延命能化地蔵願応尊はインドでは確認できず(不空金剛さまはスリランカにも行跡が残っているものの)、西域の砂漠地帯で井戸や湧き水などに祀られていた大地の恩恵を掌る守護者がインドから流入する佛教の諸佛・諸菩薩・諸天と融合して創作されたと考えられています。なお、経典の中では延命能化地蔵願応尊の肖像画を祀り、金銀銅鉄で形像を鋳造することを勧めていますが、日本では一般的な石像については述べられていません。
「佛説延命地蔵菩薩経」では地蔵菩薩への信仰の功徳として「一者女人泰産。二者身根具足。三者衆病悉除。四者寿命長遠。五者聡明智慧。六者財宝盈溢。七者衆人愛敬。八者穀米成熟。九者神明加護。十者証大菩提」の「得十種福」と「一者風雨随意。二者他国不起。三者自界不叛。四者日月不蝕。五者星宿不変。六者鬼神不来。七者飢渇不発。八者人民無病」の「除八大怖」を列挙していますが、「地蔵菩薩本願経」では「一・土地豊壌、二・家宅安永、三・先亡生天、四・現存寿益、五・求者遂意、六・水火無災、七・虚耗辟除、八・悪夢杜絶、九・出入神護、十・聖因多遇」を「十種利益」としていて差異があります。しかし、延命能化地蔵願応尊の経典はこの2つだけではないので問題はないでしょう。このように現世利益を与えて下さる延命能化地蔵願応尊ですが、日本では6道の守護者としても崇敬されており、墓地や多くの死者が出た古戦場や被災地には6体の石地蔵が並べて祀られていることがよくあります。岩手県平泉の中尊寺にある金色堂の本尊は阿弥陀如来ですが、脇侍は本来の観世音菩薩と大勢至菩薩ではなく6地蔵になっています。これも阿弥陀如来の本願から洩れた亡者の救済を願ってのことなのでしょう。実際、浄土三部経で説かれている阿弥陀如来の本願は「願い求める者」に限定していて、浄土真宗が言うような往生必定ではありません。
この6道の延命能化地蔵願応尊は次の通りです。( )内は各像の持ち物と手が結んでいる印の基本的な形ですが、石工の技量や地元の作例などにより大半は違っています。
天道・大堅固地蔵(左手・如意法珠、右手・経巻)/預天賀地蔵(左手・宝珠、右手・説法印)
人道・大清浄=だいしょうじょう地蔵(左手・宝珠、右手・施無畏印)/放光王地蔵(左手・錫杖、右手・与願印)
修羅道・清浄無垢地蔵(左手・宝珠、右手・梵篋)/金剛幢=こんごうどう地蔵(左手・金剛幡、右手・施無畏印)
畜生道・大光明地蔵(左手・宝珠、右手・如意印)/金剛悲地蔵(左手・錫杖、右手・引接印)
餓鬼道・大徳清浄地蔵(左手・宝珠、右手・与願印)/金剛宝地蔵(左手・宝珠、右手・甘露印)
地獄・大定智悲=だいじょうちひ地蔵(左手・宝珠、右手・錫杖)/金剛願地蔵(左手・火炎摩幡、右手・成弁印)
このうち天道は極楽浄土や天国ではなく明王などがおわす天部のことで、人道は「にんどう」と読み、現世の人間界です。
「延命地蔵菩薩経偈」=「善哉善哉・延命菩薩・有情親友・衆生生時・為其身命・滅為導師・衆生不知・短命無福・我滅度後・於末法中・国土災起・人王政乱・他方賊来・ 刀兵劫起・但当憶想・延命菩薩・今世後世・所求不満・我所説法・無有是處」長さは80文字と72文字の舎利礼文と大差がなく無理なく暗記できるでしょう。
「えんみょうじぞうぼさつきょうげ」=「ぜんざいぜんざい・えんみょうぼさつ・うじょうしんゆう・しゅじょうじょうじ・いごしんみょう・めついどうし・しゅじょうふち・たんめいむふく・がめつどご・おまっぽうちゅう・こくどさいき・にんのうしょうらん・たほうぞくらい・とうびょうこうき・たんとうおくそう・えんみょうぼさつ・こんぜごぜ・しょぐふまん・がしょせっぽう・むうぜしょ」振り仮名はやはり真言宗式ですが、「ぼさつ」は「ぼーさー」、「どうし」を「どーしー」、「たほう」を「たーほー」、と読み、「いご」を「いーごー」、「ふち」を「ふーちー」などと流れで伸ばす語もあります。要するに読み易く口を慣らすことでしょう。
「延命地蔵菩薩経偈(訓読)」=「善哉善哉、延命菩薩は有情の親友なり。衆生生する時は其の身命と為り、滅すれば導師と為る。衆生は知らず短命無福なりと、我れ滅度の後、末法の中に於て国土に災い起こり、人王政(まつり)ごと乱れ、他方の賊来り刀兵劫おこらんとき但当に、延命菩薩を憶想すべし。今世後世求るところ満ずんば我説くところの法是の處り有ること無し」訓読では「善哉」を「よきかな」と「ぜんざい」のどちらでも日本語になりますから任意のようです。
延命能化地蔵願応尊の功徳は広大無辺であり、身近に寄り添っておられますから、この偈文を暗記して見かければ自然に口から出るようになりましょう。南無お地蔵さま

全国の石地蔵
意志地蔵・19・1・5-
小庵・意志地蔵尊(明らかに素人作ですがだから安価で遷座させられました)
86b・恐山のお地蔵様青森県の恐山
古志庵・毛越寺の地蔵さんと周作平泉の毛越寺(顔が東北人風)    
86e・佛通寺広島県三原市の佛通寺

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  1. 2020/02/01(土) 15:19:45|
  2. 月刊「宗教」講座
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