FC2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1816

1月下旬になって王中校が東京にやってきた。今回はキャンプ座間の在日アメリカ陸軍司令部に寄るとのことなので私も制服を着て同行させてもらうことにしている。年頭のメールで指定された時間に羽田空港の沖縄線の到着ロビーで待っていると中華民国陸軍の軍服を着た王中校が団体客の後から出てきた。これが国際線であれば空港職員も軍服を着た外国軍将校に対する儀礼を知っているはずだが、国内線では陸上自衛隊と誤解されたようだ。
「これは久しぶり」「こちらこそ。忙しい中、時間を作ってくれて有り難う」同色でも微妙に違う制服と軍服を着た2人が握手を交わしながら英語で挨拶し合っている横を初老の団体客たちが怖い物を見るような顔をして通り過ぎていく。羽田空港への沖縄線で農協の団体さんが到着することはないので、この時期に団体旅行に参加しているのは民間企業を定年退職した還暦過ぎの世代のはずだ。70年安保の学園闘争を経験している世代でもある彼らはどちらが自国の軍=自衛隊の制服なのか判っているのだろうか。
キャンプ座間には羽田空港から対岸の川崎市を内陸に向かう形になる。王中校が将官や上校(1佐)であればVIPへの儀礼として官用車を手配するのだが、私と同じ階級では無理だ。と言っても我が家の自家用車は佳織が四国に持っていっている。こうなるとタクシーだが走行距離は50キロ以上あるので割高だ。したがって陸軍中佐が2人並んで列車移動した。
「モリヤ2佐、在日アメリカ陸軍司令部首席法務官のトーマス・ハセベ大佐です。ハセベ大佐、こちらは日本陸軍参謀本部の法務士官のニンジン・モリヤ2佐です」「グッド・シー・ユー。カーネル(大佐)・ハセベ」「ユー・トゥー。ルテナンカーネル(2佐)・モリヤ」王中校の英語だから許される紹介を受けて私は日系人のハセベ大佐に沖縄で憶えた初対面の挨拶をした。すると日本人の口から「ハワーユー」以外の挨拶を聞くとは思っていなかったらしいハセベ大佐は驚いたように返事をして手を差し出した。同じアジア人でもやはりアメリカ人のハセベ大佐の方が握手の動作は様になっている。
私たちはそのままハセベ大佐の執務室のソファーに座るとすぐに金髪の軍曹のWACがコーヒーを持ってきた。そのソバカスだらけの顔と軍服一杯にせり上がった乳房を見て私はWM(女性海兵隊員)のジェニーを思い出してしまった。
「モリヤ2佐の英語はネイティブのようだが、アメリカへの留学経験があるのかね」「いいえ、妻が元アメリカ人でして」「それは太平洋軍司令部の連絡官だったモリヤ佳織1佐のことかな」私の説明にハセベ大佐は「推理が当たった」と言う笑顔になった。
「すると君がハワイでのヤマサクラのシナリオ・ライターだね。我が軍内でも尖閣諸島に不法上陸した武装漁民を治安出動で制圧すると言うシナリオは法律の専門家でなければ思いつかないと話し合っていたんだ。そこで佳織連絡官の夫が弁護士だと言うことが判って納得したんだよ」王中校は日米協同指揮所演習・ヤマサクラの状況を知らないので異様に鋭い目をして私たちを注視ているが、私たちは無視して話を終えた。
「1月14日の総統選挙で馬英九が再選されたので、あと4年間は親中路線が継続されることになります。軍事衝突の緊張は緩和しても防諜面では危険が高まりそうです」どうやら王中校の来日の目的は在日アメリカ陸軍への台湾国内の政治と軍事の状況報告のようだ。在沖縄アメリカ軍は台湾防衛の任務も負っており、民政党の雀山首相が在沖縄アメリカ海兵隊の県外移設を選挙公約にしながら撤回したのも、それを日米の外交・防衛当局から強く説明されたからであろう。しかし、陸軍の司令部は沖縄にないため台湾陸軍の王中校はキャンプ座間を窓口にしているらしい。するとハセベ大佐はコーヒーを少し口にしてから答えた。
「それでも馬英九は中国が一国二制度を堅持・保証することを統合の絶対条件にしているから、大陸に対する警戒心は持っているんじゃあないかね。その点では日本の政治家でありながら反日反米親中の民政党の指導者たちよりは安心できる」「確かに自社さ政権や今回の民政党政権では与党の政治家として防衛官僚に圧力をかけて内部秘密情報を提供させ、それを中国に流しましたから危険性はこちらの方が上でしょう」思いがけず私も参加してしまった。これは悪癖だ。すると王中校は変に納得したような笑いを浮かべて顔を見た。
「やはり日本でも法務官が防諜を担当しているんだな。スパイを裁くのは軍事法廷だから当然のことだがね」これは完全に誤解だが説明する前にハセベ大佐が遮ってしまった。
「韓国も金大中、盧武鉉政権以降、軍事秘密の北朝鮮への譲渡が常態化していて、ペンタゴン(アメリカ国防総省)としては協同演習を通じて作戦の全貌が漏れることを問題視している。日韓が中国の手に堕ちれば太平洋の西半分も奪われることになるな」時事阿呆談も舞台と相手が変わると国際問題になる。私は頭の中で錆びつきつつある英語力を再起動させた。
スポンサーサイト



  1. 2020/02/04(火) 13:15:29|
  2. 夜の連続小説8
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<2月4日・カーペンターズの妹・カレンの命日 | ホーム | 2月4日・赤化教員の大規模摘発=2・4事件が始まった。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/5931-6b636695
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)