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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1835

私のA日新聞の記事の一件は、この新聞社が民政党政権を支えている最強の支持母体だけに「みんなで靖国神社に参拝する議員の会」に所属して今年も公約通りに8月15日に参拝した松川国家公安委員長も問題化することはなかった。それでは私のオランダの国際刑事裁判所の検事への移動の話が消えるかと思えば、そちらは着実に進行しているらしい。要するに1科的な厄介払いとは別に内局が法務省と外務省から受けた人事調整に応えることにしたようだ。
「モリヤ2佐、君の交換条件は実現しそうだよ」官舎に近い浄土宗の寺院で勤経や作務を体験させてもらいながら都内のモスクで私自身が北キボールで殺めた3人の若者の慰霊を勤めて過ごした夏季休暇が終わって出勤すると待ち兼ねていたように法務官が記憶を呼び戻した。
「交換条件なんて申し上げましたっけ」あの一件では二村事務官の関与の方に意識が行っていてその前の事情聴取や法務官との遣り取りなどは始めから意識していなかった。
「検事として赴任するには警務幹部になって定年退官を延長したいって言ったじゃあないか」「確かにお願い申しました」ようやく記憶が鮮明になった。今のままの2佐では定年退官は54歳の誕生日までなので3年を切っている。警務幹部であれば警察官と同じ60歳なので腰を据えて新たな仕事に取り組めると言ったはずだ。
「警務官の資格は『警務官及び警務官補の指定並びに権限の行使及び調整に関する訓令』の第1条に規定されていますが」「うん、その4項で実現させるつもりだ」法務官の説明に私は少し困惑した。この訓令の資格基準では基本的に小平駐屯地の業務学校の警務幹部課程を修業することが条件だが、おそらく2佐の入校は前例がなく私としても「実現は無理だろう」と半ば諦めていた。そこで訓令の第1条4項を思い出してみた。
「3等陸佐、3等海佐又は3等空佐以上の自衛官であって旧大学令による大学、若しくは学校教育法による大学又は専門学校令による専門学校の法科系統の教育を修了した者、又はこれと同等の学識があると認められる者・・・ですが私が該当しますかね」先ず私は愛知大学法経学部法学科中退なので大学を修了していない。さらに一般空曹侯補学生と陸上自衛隊幹部候補生学校、富士学校は専門学校令による専門学校ではない。そして「これと同等の学識を有する」と認められるための試験は受けておらず、何よりもこの補完的基準は法学士号を受けている他の学部の大学終了者を想定しているはずだ。
「その点は問題ない。前例第一、基準厳守の人事担当幹部も流石に司法試験に合格している君に受けさせる試験問題は用意できないって言っていたよ。おまけに格闘指導官を維持しているから実技面でも問題ないはずだ」私としては人事教育部が司法試験合格者を警務幹部に指定する前例を作ることに素直に同意したとは思えない。おそらく法務官が将官としての政治的手腕を発揮してくれたのではないか。実技面でも徒手格闘と逮捕術では似て非なる点が多々あり、司法試験と同様に格闘指導官だからと言う論理には少し無理がある。
「そう言えば君の英語力も評価項目になっていたが、こちらも英語検定は持っていないんだよな」「航空自衛隊英語検定3級なら持っています」私の返答に法務官は呆れたように口を開けてから閉じて首を振った。それにしても私の「学識」は岡崎市の矢作南小学校時代に植えつけられた知的好奇心の赴くままに興味を持ったことを徹底的に究明し、蒲郡高校時代にはその暴走が制御不能になり、愛知大学でも単位の取得は無視して学究に明け暮れていた。その結果が公的資格なしで一般(部外)課程出身の弁護士資格を持つ2等陸佐なのだ。そう言えば坊主の方も猊下から允可を拜領しているが、こちらも正式な安居(あんご=修行)はしていない。
「それではオランダ行きは現実の話なんですね」「1つ問題なのは健康面だが、オランダなら日本並みの医療は受けられるから心配ないだろう」梢の懇願を受けて私は血糖値の数字だけが基準のⅠ型糖尿病の診断を受け入れた。そのおかげでインシュリンの摂取による血糖値の調整で食事制限が緩和され、かなり体力も回復している。自衛隊中央病院の内科医の同期によると欧米では1922年にカナダのバンティング博士がインスリンの抽出に成功した時点から糖尿病では注射による摂取療法が確立しているが、粗食の日本では贅沢病と蔑視され、患者は食事療法を強要されいる。その意味では欧米で診療を受ける方が私としても安心できそうだ。
「ところでモリヤ2佐は海外赴任するのに単身になるんだな」考えてみれば佳織とはA日新聞の記事が載った夜の電話で口論になって以来、ハワイで志織のハイスクール卒業を見届けて戻ってからも連絡を受けていない。それは佳織の方が募集業務の最盛期に入っていることが理由だが、互いに非を認めていないので歩み寄る気持ちになれないのも確かだ。
「今も単身赴任ですから生活に変わりはないでしょう。この1年で会ったのは3回、それが年1回の七夕伝説になるだけです」法務官相手にこのメルヘンチックな表現は不適切だった。
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  1. 2020/02/24(月) 12:28:31|
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