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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1838

結局、臨時法律相談室を開設して二村由美事務官から話を聞くことになった。一般の弁護士であれは相談を受けるだけでも料金を取るのだが、私は副業=副収入を禁止されている自衛官なので無料だ。と言っても私の自衛隊内の法律相談室は書簡や電話、メールで気軽に利用できる。
「A日新聞に連絡を取るようになった切っ掛けは昨年末にソウルの日本大使館前に(いわゆる)従軍慰安婦少女像が設置されたニュースを見ている時の我々の雑談だったね」「はい、事務長が『A日新聞が嘘をついている』って言ってたから電話して『本当に嘘をついていたのか』って訊いたんです」この辺りの経緯は法務官室での事情聴取で聞いている。その後は記者が自衛隊に関する問題を記事にする前に電話をかけてきて陸上幕僚監部内の空気を伝えていたようだ。二村事務官は他の部局の女性事務官との雑談で噂レベルの情報には精通しているから記者としては記事のニュアンスを決める上で参考にはなったはずだ。
「会うようになったのは」「二川大臣の評判を訊かれた頃から直接会って質問に答えるようになったんです。次が田中大臣、そのうちホテルのレストランでの食事に誘われ、ワインに酔った振りをして・・・」主演女優がこの女性でなければ納得できる展開だ。
「誘惑されたんだね」「いいえ、だって夫と違って話が面白くて、服のセンスも格好良かったもん」相談者の神妙な口調が毎度の雑談になった。こうなるとA新聞の記者が取材=情報の入手を目的に誘惑したとは言えなくなる。私は事情聴取とは別に前提となる疑問を確認した。
「ところでご主人とはどのような経緯で結婚したんだね」「ディスコで知り合いました。チーク・タイムでキスをしてホテルに行って、つき合うようになったらできちゃったんです」想像通りの馴れ初めだった。バブル期の女性は素顔が判らないほど派手に化粧して着飾っていたから薄暗いホールにミラー・ボールの眩い照明で幻惑されれば美的感覚が狂っても不思議はない。
「それじゃあ愛情は感じてなかったのか」「愛情や優しさなんて男が女を口説く時に使う道具じゃあないですか。結婚なんて男と女が夫と妻って言う仕事をやっていれば好いんですよ」私は玉城美恵子よりも妻として素養がない女性が存在することに驚嘆した。美恵子が香港で理容店を始めたことは淳之介から聞いているが、少なくとも理容師としては徹底したプロだった。こうなると法律論の前に人間としての結論が出た。
「やはり離婚するしかないんでしょう。貴女との結婚生活ではご主人の方も不貞行為があったかも知れません。離婚訴訟になった時には興信所に依頼して相手の不貞行為が証明されれば慰謝料の請求権が相殺される可能性もあります。しかし、現時点では不貞行為を働いたのは貴女ですから給与で支払える範囲での慰謝料に応じて離婚するのがお互いのためです」「事務長がいなくなったら弁護士に代金を払わなければいけなくなるから裁判にはしません」やはり始めからそれを前提にしていたようだ。それにしても敗訴確実の離婚訴訟でも同じ職場では無下に断ることはできず泣く泣く請け負わなければならないところだった。今のところ私の弁護士としての戦歴はイージス護衛艦と漁船の衝突事故の1審が勝訴だったので勝率100パーセントだ。こうして考えてみると弁護士が刑事裁判の国選弁護士以外で敗れると判っている裁判を請け負うには特殊な自己暗示があるような気がしてくる。多くは「弱者を救えるのは自分だけ」と言う使命感=自己満足だが、下手すれば苛められて悦ぶ性癖なのかも知れない。
私も美恵子の不倫を経験しているが、相手の矢田に対して憎悪も嫉妬も感じなかった。強いて言えば専有物である妻を部下に略奪された怒りだけだった。むしろ梢の結婚が事実上の強姦による脅迫だったことの方が激烈な怒りを覚え、今でもその相手を見つけ出して殺したいほどの憎悪を抱いている。佳織が中学生の時、純潔を奪われた教師については私自身がその傷を癒してきたと自負しているので触れないでいられる。二村事務官の夫は感情を見せずに離婚を切り出したらしいので愛情以前に愛想が尽きているようだ。1人息子は夫が親から継承している外車専門のモータースの跡取りとして引き取られるのだろう。二村事務官に母性本能があるとも思えないのでその点は問題なさそうだが、夫側には養育費を請求する権利が発生する。
「大体、離婚しても相手の記者が結婚してくれる訳じゃあないんだろう」慰謝料と養育費を支払う責任と常識的な金額を説明すると二村事務官は急激に元気を失くした。どうやらテレビの不倫ドラマに出演したような気分に浮かれ、民法の基本的な知識を持たないまま離婚すれば慰謝料と自由を手にしてバブルの頃に満喫していた遊びを再開できると思っていたようだ。
沖縄返還の日米密約を暴露した西山太吉記者(山口県出身)は秘密文書を入手するために誘惑した蓮見喜代子事務官が離婚しても自分は妻と別れることなく使い捨てた。この2人の場合、そのような政治的目的もなかったので記者の方が自己犠牲を払う道義的責任はない。むしろ取材源の強い要望に応えなければならなかった記者の立場を擁護してやりたいくらいだ。
え・二村由美事務官イメージ画像
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  1. 2020/02/27(木) 12:39:08|
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