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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1897

ジアエは12月25日のキリスト降誕祭の翌日も1日だけ休暇を取り、聖也に飛行機を見せようとインチョン(仁川)空港まで見送りに来た。搭乗手続きが終わり、空港のレストランで昼食を取った後、展望デッキに登ると聖也は離発着している飛行機に熱中したので夫婦はその後ろ姿を見守りながら会話できた。日本では今日、第2次加倍政権が成立している。
「加倍内閣の組閣は機内放送じゃあ流さないよな」「大韓航空だから無理ね」インチョンからニューヨークへの便は大韓航空とアジアン航空でどちらも韓国の航空会社だ。韓国人が大半を占める機内で今や仇敵になっている日本の政権交代のニュースを流すはずがない。
「それにしても今の韓国は開戦前夜の日本みたいだな。と言っても『ロシア討つべし』『アメリカ許すまじ』って騒いでいたのは軍部とマスコミだけで国民は淡々と日常生活を送っていたんだよ。ところが今の韓国は市民の方が大声で反日を叫んでいて、それに政府が引き摺られている。そのうち防衛協力も断絶してしまうんじゃあないか」「そうなのよ。折角、韓日の士官候補生が相互訪問していてもその前に教官が帝国陸軍の悪事と陸上自衛隊が受けている影響を悪意も持って教育するから宴席で飲むだけの友好関係に陥っているわ。日本人はお人好しだから一緒に乾杯すれば友達になったと思ってるけど、我が軍の士官候補生たちは敵の実態を見極める観察のつもりなのよ」岡倉の時代には日本の幹部候補生と韓国の士官候補生の相互訪問はなかったが、若し、あれば例のモリヤ夫婦がどのような反応をしたのかに興味がある。元航空自衛隊のモリヤ・ニンジン候補生は韓国空軍が日本からの侵攻を前提にした防空戦闘演習を繰り返していることを熟知しているだけに日韓の防衛協力には懐疑的だった。それどころかアメリカについても「戦争の目的は十字軍の再現=キリスト教による世界制覇」と日米安全保障条約を前提にした防衛構想を否定していた。その意見を巡って激論を戦わせたことも後に妻になる伊藤佳織候補生が想いを寄せるようになった原因の一つだ。それを考えればモリヤの夫こそ海外情報要員に適任ではないか。人物を熟知する同期の岡倉としては今回の異例の人事によって遅れ馳せながら国際舞台にデビューを果たしたモリヤ夫の今後の活躍を期待したい。
「我が国はこれからどうなってしまうのかしら」離陸していく航空機のエンジンをンに無邪気な歓声を上げている聖也を見ながらジアエが呟いた。今回の帰宅では連夜のように義母を交えて話し合い、ジアエが聖也を連れてアメリカに来ることで合意した。その時もジアエは陸軍少佐と言う立場を捨てることに何の躊躇も見せずに「アメリカに移住する」と断言した。
「国家としては存続できても中国の属国化するのは間違いないな。その前に南北統一を韓国側が希望するんじゃあないか」「確かにそんな雰囲気が急速に強まっているわ。今では北韓(=北朝鮮)は仮想敵じゃあないもの」岡倉はデッキの売店で軽食や飲み物を買って楽しんでいる若者たちの姿を眺めながら、それが北朝鮮でも許されるのかを考えてしまった。国家体制が変われば当然のように暮らしている生活の形も転換させられる。どう見てもこの若者たちは自由主義を満喫しているが、共産主義国家の北朝鮮でこのような奔放な青春が許されるとは到底思えない。それは共産党中国への臣従を公言している沖縄にも言えることだ。
「日本では国民が過ちに気がついて政権を元に戻したけど、我が国では例え保守派の大統領が当選してもマスコミが世論を扇動すれば有権者の投票行動よりも活動家の叫び声の方が優先されてしまう。結局、日本のA日新聞が反米反日親中に染め上げたマスコミがこの国を昔に引き戻すのね」韓国は有史以来、中国の属国であり続けることを国是としてきた。その意味では是非や損得に関係なく中国に臣従することを民族の魂が求めているのかも知れない。しかも明治以降、日本について近代化に邁進した結果の敗戦と朝鮮戦争を負の教訓にしている。一方、沖縄でも熱烈な愛国運動を指導していた地元2大紙が復帰後には急速に反米反日親中に主張を転換したが、これも本土式の紙面造りを指導する名目で送り込まれたA日新聞とM日新聞の編集員の画策だと言われている。沖縄の本土復帰ではマスコミに限らず地方行政や学校教育でも遠隔地への転勤を嫌う公務員たちの中で職場では問題視されていた自治労や日教組の活動家たちが熱望したため、厄介払いのように送り込む形になってしまった。
「アメリカ合衆国、ニューヨーク市、ジョン・F・ケネディ空港に向かいます××時××分発の大韓航空機×××便に搭乗されるお客さまに連絡します。間もなく機内にご案内しますからカウンター前に集合して下さい」その時、送迎デッキでも岡倉の便の乗客向けの案内が流れた。するとジアエは聖也を呼び寄せた。
「アメリカじゃあ日本のニュースはほとんど流れないからこっちの報道で気になったことがあったら知らせてくれ」「はい、私と聖也のためにアメリカのニュースを知らせてね」岡倉が右手で聖也を抱き上げるとジアエが顔を近づけたので目の前で口づけを交わしてしまった。
な・李英愛イメージ画像
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  1. 2020/04/26(日) 13:57:13|
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