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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1918

「本当に退職を希望するのかね」2013年2月25日に韓国の大統領が交代して間もなく、ソウル特別市に隣接する高陽市の歩兵第11連隊本部では李知愛(イ・ジアエ)少佐が直属上司である監理部長に退職を申し出ていた。李少佐は事前にその意向を伝えていなかったため机を挟んだ席に座っている監理部長は困惑した顔で見上げている。
「幸いなことに今度の大統領も軍に対しては理解があるはずだ。もう少し政権の同行を見極めてからでも好いんじゃあないか」昨年末に岡倉が帰宅した当日に韓国では大統領選挙が行われ、盧武鉉政権の大統領秘書室長(日本の内閣官房長官に相当する)として親中容北嫌米反日の政権運営を取り仕切った文在寅と帝国陸軍士官としての軍歴を有して日韓国交回復を実現した朴正熙大統領の娘との事実上の一騎討ちの結果、得票率で3.5ポイントの僅差で保守派と目されている朴槿恵政権が成立した。やはり常識的な韓国軍人としては朝鮮戦争で戦火を交えた北朝鮮と共産党中国にアカラサマにすり寄り、同盟国であるアメリカを敵視して信頼関係を破壊しただけでなく、建軍以来の宿敵である北朝鮮との戦闘を任務と考え部隊を厳格に指揮している将校士官たちを排除・抹殺した金大中・盧武鉉政権に嫌悪感を抱くことは禁じえない。それでも表裏反対=面従腹背を常とする韓国の国民性を守り、表向きは殊更に政権につながる上層部に尻尾を振っているから中堅士官としての椅子に座っていられるのだ。
「それでは部長は李明博政権を評価しておられるのですか」韓国陸軍では人事異動の間隔が比較的長いので、この部長とは李明博政権の後半は一緒に仕事をしてきた。李明博前大統領は反財閥を鮮明にして国内景気を悪化させた盧武鉉政権に対する批判を受けて、実業家からソウル市長になると市の膨大な財政赤字を改善し、大規模な公共事業を進めたことで企業の経営も立て直した実績で当選したのだが、現在の韓国経済は完全に共産党中国に依存しているため政治的にも追従せざるを得ず、ご機嫌取りのために反日姿勢を強めるのは当然の結果だった。李大統領はその理由を「幼少期に在日韓国人として過酷な苛めに遭った」と説明していた。
「日本人が民政党に政権を与えたことを国家としての退潮と見切った判断力は流石に企業経営者だった。おまけに大震災と言う天罰を受けて国家は崩壊する寸前まで追い込まれた。ところが民政党政権が議会の任期の4年間も全うできずに敗北した上、まさか加倍政権が復活するとは李大統領でなくとも我が国民は誰も想像しなかっただろう」確かに年末に帰宅した夫は加倍首相が衆議院選挙の最中に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会で(いわゆる)従軍慰安婦問題を否定した発言に対する韓国民の反応を気にしていたが、李少佐も夫から日本人の政治的バランス感覚の解説を聞き、激昂して極端に振れる韓国民の投票行動が幼稚に思えていた。その点、アメリカやイギリスの2大政党は政策に差異はあっても韓国のように極端ではない。むしろ多くの外交的失策が指摘されているバラク・オバマに2期目を与えたことはジョージ・ウオーカー・ブッシュ政権が始めた対イスラムの第3次世界大戦後の政治的安定を図るアメリカ式の政治的バランス感覚なのかも知れない。
「君が李明博政権の感情的な反日姿勢に批判的だったのは知っているが、朴槿恵新政権も同様の外交方針を取ると考えているのかね」未婚の母とは言え身分証明の顔写真を維持するため整形を受けない軍人には珍しい美女である李少佐に見詰められて思いがけず政治的見解を披歴してしまった監理部長は質問で同じ過ちを犯させようとしてきた。
「選挙中の討論会での発言を見る限り、同様の方向に進まざるを得ないでしょう。経済的に中国に依存している以上、外交も追従することに変わりはなく、むしろ李政権が火を点けてしまった反日感情は押さえようがないですから、さらに過激な反日外交を繰り広げなければ国民の批判を受けてしまう。そもそも亡き父親の威光を利用して保守系政党での地位を高めてきただけで、政治的実績に見るべきものはありませんから首相の娘として人気を獲得していた日本の田中牧子と同様に大統領のお嬢さまと言うだけで大統領にしてしまったんでしょう。その点、日本人は今回の選挙で田中牧子を落選させたそうですから政治的見識は数段上です」この見解には年末に夫から聞いた解説がかなり投影されている。監理部長は口の中で苦虫を1匹噛み潰した。そんな様子を見て李少佐は何故か少し口元を緩めて話を続けた。
「私の退職理由は法務士官でありながら総務課員としての配置だけで、実務経験が積めないことへの不満と不安と言うことにして下さい。少佐まで昇任しながら法務士官としては懲戒処分の事情聴取を手掛けただけです」思いがけない理由を聞いて監理部長は顔を向けたまま思案した。
「それは君が総務課長として極めて有能だからで、将来は私のポストに座ってもらうことも考えているんだ」「それは光栄です。これで失礼します」監理部長の弁明が説得に続く前に李少佐は踵を鳴らして姿勢を正し、敬礼に続いて回れ右をして退室してしまった。
に・LeeYoungAe(JSA)イメージ画像

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  1. 2020/05/17(日) 13:52:36|
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