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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1984

夜、アパートに帰った淳之介は途中のコンビニエンス・ストアで買ってきた弁当で夕食にした。今回は砂川の生活指導を守ってサラダも買ってきた。朝食用のパンもサンドウィッチだ。
「親父は1人暮らしでもまめに料理を作っていたよな。仕事で疲れて帰って家事もやるなんて元気はどこから湧いていたのかね」淳之介も父と2人での生活を半年近く経験しているが、毎日、普通の母親以上に手間をかけた料理を食べさせ、小まめに掃除をして、衣類の破れたところを見つけると夜遅くまで手縫いで修繕してくれていた。そのため小学校の学芸会の劇の挿入歌として唄った「母さんの歌」の「母さんが夜なべをして 手袋編んでくれた」が「父さんが夜なべをして ズボンを縫ってくれた」に思われて鼻水をすすってしまった。
「俺は親父の血を受け継いでいても半分はあの女(=産みの母の美恵子)の血だから最近はそっちが濃くなっているのかも知れないな。拙いぞ」淳之介は独身時代に煩悩を使い尽くして更生した真面目人間の父と極めつきの才女の母との生活の圧迫感に耐えられず沖縄の美恵子の実家に逃避したのだが、祖父母は父が自分の両親以上に敬愛している通りの素晴らしい人たちだったものの産んだ母は息子として我慢のならない大馬鹿糞女だった。その自分に流れる濁った半分の血を打ち消すためにも父のような清く正しく厳格な生活を送らなければならないのだが、時間の経過と慢性的な欲求不満が堕落の道に蹴落としてくれている。
「血のつながりと言えば志織の奴、馬鹿なことを言っていたよな」弁当を半分食べて、サラダを摘まみながら妙なことを思い出した。それは数年前、ハワイから1人で帰国した志織が石垣島を訪れて、出産のためあかりが不在になっているこのアパートに泊まった時のことだ。
「アイツが高校で韓国系の生徒にレイプされそうになったって言うから俺がソイツを海に沈めてやるって言ったんだったよな」その時の会話を復習しても頭の中では最近見たJKが学校で集団レイプされるAVが再生されてしまう。ただ、それは下劣な欲情ではなく。怒りに油を注ぐ効果を生んだ。淳之介は頬張っていたサラダのレタスを噛みにじると一気に呑み込んだ。
「それで親父が拘置所に入ってたのに俺まで殺人犯になったら呪われた血統みたいで嫌だって言うから、俺とアイツは半分しか血がつながっていないって教えたんだった」血がつながっているのは「呪われた殺人犯」の父の方なのでこの説明は意味がない。
「そしたら布団の中で『抱いて欲しい』って言ったんだよな」独り言で復習していてもあの展開はAVではない深い人間ドラマのようだ。2間しかないアパートで淳之介と志織は襖を挟んで布団を敷いていたが、その襖越しに志織の思い詰めた声が聞こえてきた。
「ダディは『抱かれるのは心の底から好きになった人まで取っておけ』って言うの。マミィは『私はレイプされてバージンを失ったから、志織は愛する人に捧げられるように大切に守れ』って言うの。だけどレイプされたら憎んでいる男に奪われてしまう。だから・・・」その後、志織は「初体験を大好きな淳ちゃんに捧げたい」と訴えたのだ。幸いにしてその頃の淳之介は恵祥の父となった至福と責任を自覚していたので兄として懇々と説教した。志織は泣きながら聞いていたようだが、翌日空港に送ると出発ゲートに入る前、抱きついて背伸びをしながら口づけしてきた。おまけに「これが私のファースト・キッスだよ」と自慢そうに笑った。つまりロスト・バージンは防いだがファースト・キスは奪わせてもらったことになる。
「それにしてもアイツがブラコンだとは思わなかったな」確かに志織は幼い頃から「淳ちゃん、淳ちゃん」と呼びながら後をついてきたが、それは兄として慕っているのであって男性として好意を持たれているとは思わなかった。ハワイへの遠洋航海で再会した時にも「ファースト・キスをあげる」と訴えたが、それはアメリカの習慣だと思っていた。
「しかし、今みたいな生活をしていたら危なかったな」弁当を食べ終えてペットボトルのお茶を飲みながら淳之介は反省した。最近のインターネットのAVは動画サイトの乱立で過激で特異な作品で閲覧者の獲得を図るようになり、社会的倫理に背くような展開が目立つようになっている。例えば兄が妹と、弟が姉と、息子が母と、父が娘と肉体関係を持つ近親相姦劇も珍しくない。淳之介の今の母である佳織は標準以上の美人で、均整の取れた肉体美を維持しているが、血がつながっていないとは言え劣情を覚えたことはない。母親似の志織も人に自慢したほどの美少女だが、あの頃は同様だった。しかし、AVに毒された自堕落な生活を送っている今なら自信はない。志織の方から求められたのだから応じてしまう危険性は大だ。翌朝、寝坊した志織を起こした時の愛らしい寝顔を思い出すと妄想が湧きそうになった。
「いかん、いかん、俺は何をやってるんだ」淳之介は無意識に臨戦態勢になっている男根に向かって罵声を浴びせた。そんな淳之介をクローゼットの上のあかりと恵祥の写真が見詰めている。あかりの閉じた目の奥に涙が滲んでいるように見えた。
19・JunJiHyunイメージ画像
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  1. 2020/07/24(金) 11:59:55|
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