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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ1985(一部、実話です)

「貴方、何かあったの」突然、座卓の上に置いている携帯電話が鳴ったので出るとあかりからだった。あかりの向こうでは恵祥の泣き声が聞こえる。恵祥は2歳になってからは赤ん坊のように泣くことは滅多にないので異様な切迫感を感じた。
「私の胸に貴方の怒ったような叫び声が響いて、急に恵祥が泣き出したのよ」あかりは淳之介の返事を待たずに説明を始めた。電話の傍で祖母がなだめているが、恵祥は片言で何かを訴えながら泣き続けている。
「うん、色々反省することがあって自分に腹が立って叫び声を挙げたんだ。本当は今から自分の顔を殴るつもりだった」淳之介の説明にあかりは黙ってしまい、電話からは荒い息遣いだけが聞こえ始めた。淳之介はあかりとの絆を噛み締めながら待っていた。
「貴方も1人だけの生活では色々思い通りにならないことも多いから自分を責めたくなっちゃうのかも知れないね。私が帰れないからいけないのよ。ごめんなさい」あかりの声が涙ぐんだようになった。しかし、今の淳之介にとってこのような理解はかえって辛くなる。
「そんな綺麗ごとじゃあないだよ。俺はお前が欲しい。抱きたくて仕方ないんだ。最低だろう」これが恋人同士であれば相手に嫌われないように言葉を選ぶのだが、夫婦には自分の恥部を晒して真情を理解し合うことが必要な時もある。やはりあかりは妻として受け止めた。
「貴方は若い男性なんだから何ヶ月間隔で那覇に来て私を抱くだけじゃあ欲求不満になってしまっても仕方ないわ。でも貴方が健常者の女性と関係を持つと、私に気遣いながらの夫婦生活が味気なくなりそうで不安なの。本当にごめんなさい」これもあかりの真情なのだ。淳之介の愛情は信じていても健常者との欲望の赴くままに奔放に快楽を追及する性行為を知ってしまえばそちらを求めてしまうのは人間の性(さが)だ。あかりは自分が置き去りにされる立場なのを自覚しているだけに受け止め方も真剣だった。
「私、貴方の元に帰ります。恵祥は受け入れてくれる保育所を探せば何とかなるわ。私も貴方と暮らしたいの」あかりの希望は性欲ではなく淳之介の精神的な安定や恵祥を加えた家庭の再開が理由のはずだ。あかりもその方法を研究していたことが判り、淳之介は安堵の溜息をついた。今日、雲島で出航準備をしている時、昼食を食べ終えたらしい砂川が戻ってきて「通勤用の漁船を探してみる」と言っていった。砂川の性格から言って食堂で会った島民に話をして何らかの手応えを得ている可能性が高い。AVに現(うつつ)を抜かしている場合ではなかった。

「私、石垣島に帰ろうと思うの」今日は自宅で早くも窮地に陥っているコートジボワールのバクボ前大統領の裁判の打開策を思案していると昼過ぎに沖縄のあかりから電話が入った。出たのは梢だが、電話器をモニター・ホンに接続したので会話は傍聴できる。
「恵祥はどうするねェ。淳之介が言っていた離島は通勤できないんでしょう。市内じゃあ恵祥が交通事故に遭うし、それは解決したねェ」最近、私たちはあかりから恵祥を連れて石垣島に帰る時期と方法について相談を受けているが、歩くのが達者になった恵祥を外出時に制御する方法が難題だった。健常者の親でも目を離した隙に子供が道路に飛び出して事故に遭うことがある。視覚障害者のあかりでは自分の歩行の安全を確保した上での制御になるため不安はさらに大きい。その一方で淳之介が考えた離島への移住も社長が同意しなかったと聞いている。
「恵祥を保育園に入れれば送り迎えだけだから何とかならないかしら。そろそろ淳之介さんが限界みたいなの」あかりの説明に私の経験に基づく勘が反応した。早い話が欲求不満だろう。私も美恵子の妊娠中は教育隊に山積みされていた学生の置土産のエロ雑誌を活用し、佳織の時は許可を得てレンタル・ビデオ・ショップで日活ロマン・ポルノを借りていた。
市ヶ谷で開設していた無料法律相談室にも「妊娠中に夫が風俗店に通ったことが許せない」と言う女性自衛官からの訴えがあったが、私が「妊娠するまで夫が貴女に注ぎ込んでいた精力(この場合は性力)を何カ月も我慢させられると思うのか」と質問するとほとんどは納得した。現在は男女同権意識が過剰に広まっているため妊娠と出産が女性だけに課せられた労働と苦痛のように考える女性が増え、妻が妊娠を拒否し、夫は最大限に協力することが当然視されているが、男性にとっての性欲は犯罪であることが判っていても強姦に走ってしまう者もある宿業なのだ。私は美恵子の目を盗んで海兵隊の女性軍曹の車で一泊旅行に行って22回連続の性交を達成して「アイアン・コック(=鋼鉄の男根)」と呼ばれたが、独身時代からの大好物・日活ロマン・ポルノで我慢できた。しかし、その血を受け継いだ淳之介には不倫相手に開発されて淫乱になった美恵子の血も加わっている。おまけに現在のAVは刺激が日活ロマン・ポルノの比ではない。と単身生活で見ていた私は淳之介が受けた激AVの副作用を心配した。
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  1. 2020/07/25(土) 13:06:03|
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