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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

名優・渡哲也さんの逝去を悼む。

8月10日に一般的にはアクション刑事ドラマのスターでも野僧には演じる人物の度量を感じさせてくれた名優・渡哲也さんが亡くなりました。78歳でした。今頃、2015年に先立った実弟の渡瀬恒彦さんや昭和62(1987)年に亡くなった石原裕次郎さんと再会を果たし、感涙にむせんでいることでしょう。
渡さんは青山学院大学の空手部主将だった硬派な体育会系ですが、昭和49(1974)年の大河ドラマ「勝海舟」を肋膜炎で途中降板した頃から大病を患い続け、報道バラエティー番組で紹介される病名が深刻なのに復帰を果たして変わらぬ名演技を披露するだけでなく、石原プロダクションのボランティア活動にも率先して参加しているのを見るたびに「無理はしないで下さい」と願っていましたが、やはり限界は来てしまったようです。
野僧には渡さんが演じた役柄で強く印象に残っているのは国営放送の大河ドラマ「秀吉」の織田信長公と年末特別番組「坂の上の雲」の東郷平八郎元帥、そして映画「わが心の銀河鉄道・宮沢賢治物語」の厳父・宮沢政次郎さんです。
大河ドラマの織田信長公と言えば野僧が見た作品だけでも昭和40(1965)年の「太閤記」と昭和53(1978)年の「黄金の日々」の高橋幸治さん、昭和44(1969)年の「天と地と」の杉良太郎さん、昭和48(1973)年の「国盗り物語」の高橋英樹さん、昭和63(1988)年の「武田信玄」の石橋凌さん、1997年の「秀吉」の渡さん、2014年の「軍師官兵衛」の江口洋介さん、2017年の「おんな城主直虎」の市川海老蔵さん、2020年の「麒麟がくる」の染谷将太さんが演じていますが、これ以外の若手(石橋さんと江口さんを含む)では体育会系のキャプテン風に魅力的でも好き嫌いが激しい役造りが基本のようです。この中で高橋英樹さんは1つの信長像を作り上げてしまい、それ以降の役者たちは視聴者が持つ高橋信長像が超えられなかったのですが、渡さんの信長公は体育会系のリーダーではなく卓越した組織の長であり、鬼気迫る市川海老蔵さんとも違う深い暗闇のような冷徹さと逆に温かい包容力を併せ持っていました。
一方、東郷平八郎元帥は長らく昭和44(1969)年の映画「日本海大海戦」の三船敏郎さんに固定されていましたが(昭和52=1977年のドラマ「海は甦る」の芦田伸介さんでも超えられなかった)、渡さんの東郷元帥は三船さんのような熱や力ではなく大きさを感じさせ、「部下として仕えるなら渡さんの方だ」と実感しつつ指揮官としての自分を反省しました。
宮沢政次郎さんは独りよがりな善意を振り回す跡取り息子の賢治さんを嗜める厳父でしたが死の床でも淡々と死後の支持を与える姿に「お前も中々偉い」と誉め、賢治さんが「俺もとうとう父さんに誉められたじゃあ」と喜んで倒れる場面と賢治さんの死後、雨が落ちる軒先で手帳に書いてあった「雨ニモ負ケズ」を朗読する最終幕は愚かな父親に苦しめられ続けていた野僧には涙が溢れるほど羨ましかったものです。
渡さんと言えば「みちづれ」「くちなしの花」「ほおずき」などの名曲がありますからこれらを口ずさみながら感謝を込めて冥福を祈ります。合掌
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  1. 2020/08/18(火) 13:34:10|
  2. 追悼・告別・永訣文
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