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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

「炎のランナー」ベン・クロスさんの逝去を悼む。

8月18日に1981年公開のアメリカ・イギリス合作映画「炎のランナー」で実在するユダヤ系イギリス人でオリンピックの短距離選手のハロルド・エイブラムスを演じたイギリス人俳優のベン・クロスさんが亡くなったそうです。意外に若い72歳でした。
野僧はこの映画をアラスカ人の彼女の家で毎週末にアメリカ空軍少佐の母親と1等軍曹の父親が嘉手納基地図書館のレンタル・ビデオで借りてくる名作映画の上映会で字幕なしで観賞したため細かい心理描写は理解できていなかったかも知れませんが、非常に感激して涙ぐんでしまったことは記憶しています。その後、彼女が大学で関係者や時代背景を調べてきて詳細に解説してくれたので今では理解も十分でしょう。
映画はロンドンで開かれていた1978年1月14日に亡くなったハロルド・エイブラムスの追悼ミサでのアンドリュー・リンゼイ卿=実在するのはデビット・バーリー卿のスピーチから始まります。そこから時代は60年前まで遡り、金融業で財をなした裕福な家庭で育ったハロルド・エイブラムスはケンブリッジ大学で法律を学ぶ学生で、障害走のアンドリュー(後のリンゼイ卿)や中距離走のオーブリーとヘンリーと共にケンブリッジ4人組として大学陸上界でその名を轟かしていました。そうして1920年のアントワープ・オリンピックに出場しますが、100メートルと200メートルは準決勝で敗退、走り幅跳びは20位、4人による400メートル・リレーも4位と言う不本意な成績に終わりました。映画としてはここで長老派のエジンバラの牧師のエリック・リデルがもう1人の主人公として登場し、当時のプロテスタンの「運動競技で人間の限界を超えた成績を挙げるのはカミの加護の証明」と言う「筋肉的キリスト教」を体現する姿が描かれていきます。アントワープ・オリンピックで敗北したハロルド・エイブラムスは「ユダヤ人の血を引く自分がイギリスで名声を得るためにはオリンピックで金メダルを獲得するしかない」と考えるようになり、アラブ系イタリア人のプロの陸上コーチを雇って指導を受けますが、国粋主義とアマチュアリズムを美学とする大学首脳から批判されます。それでもエリック・リデルと共にパリ・オリンピックの代表に選ばれ、ここからはエリック・リデルの出場日が旧約聖書が勤労を禁じる安息日であったことからカミへの帰依と国王への忠誠のどちらを選択するかなどの問題が中心になります。結局、エリック・リデルはハロルド・エイブラムと替わった400メートルで金メダルを獲得し、ハロルド・エイブラムスは100メートルで金メダル、200メートルは6位でも4人による400メートル・リレーも銀メダルを獲得して大歓迎の中で帰国したところで追悼ミサに戻って終わりました。しかし、この映画はアカデミー賞の作品賞や衣装デザイン賞、脚本賞、何よりも作曲賞を獲得しているものの出演者は受賞していません。
この他にもベン・クロスさんは1977年の戦争映画「遠すぎた橋」など野僧が見た作品にも出演していますが主役級ではないので記憶にありません(2009年のSF映画「スタートレック」ではミスター・スポックの父親役だったそうです)。おそらく「炎のランナー」で味わった感激は一生ものだと思います。感謝を込めて冥福を祈ります。
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  1. 2020/08/24(月) 13:12:13|
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