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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ2034

「スリランカ内戦での国連人権委員会の調査はかなり杜撰だったようです」スリランカには美味しいお菓子がなかったので高級な紅茶を土産にしたが、受け取ったモレソウダ首席検察官はそれをドリッパーの横に置いてコーヒーを淹れてくれた。紅茶は放置したままだが土産は相手に渡すことが目的なので気にせずコーヒーをすすって話を切り出した。
「調査団はキリスト教徒としての偏見で当事者の証言を無視しただけでなく、提出した写真などの証拠を不採用にしてヨーロッパ人のジャーナリストが撮影した報道写真を採用したようです。代表は『被害者が死亡して証言が得られない以上、加害者の主張は採用できない』と説明したそうですが、これでは始めから政府軍の犯行と言う結論を出していたことになります」「私もムスリマ(女性のイスラム教徒)だからキリスト教徒の独善性には許し難い点が多々あるけど、国連の機関が派遣した調査団がそこまで極端な対応するとは思えないわ」私はスリランカから持ち帰った怒りが腹の中で再燃して口調に怒気が混じったようで、モレソウダ首席検察官は大佛の顔になって穏やかな反論で宥めた。こうなると私は掌の上で暴れていた孫悟空のようなものだ。
「しかし、同業者、専門家の目で見れば政府軍の主張に合理的正当性があるのは明らかで、調査団の報告書の内容は軍事上の常識から言えば非現実的です」私は口調を落としながらも主張は換えず、黙ってこちらを見ている生きた大佛に本論を述べた。
「若し、スリランカ政府と軍を被告として裁判を始めることになれば被告側の真実を述べている証言と本物の証拠を否定できなければ公判が成立しません。コートジボワ―ルの公判は双方の戦争犯罪行為を旧政権側だけに適用・断罪していますが、スリランカでは被害者になっているタミル・イーラムの虎が戦争犯罪を繰り返したのに対して政府軍は武力紛争関係法と軍事規律に基づく合法的な戦闘しか行使しなかったから内戦が長期化したのです」話が苦戦中のコートジボワールに及んだため大佛の背後に炎が立ち上り、目だけが不動明王になった。
「私は私的旅行として同意したんです。今の話は旅行の体験談として聞いておきます」「楽しい旅行でした。有り難うございました」モレソウダ首席検察官が大き目のマグカップの甘く濃いコーヒーを一気に飲み干したため、私も砂糖を入れていない濃いコーヒーを飲み終えて立ち上がった。それでも退室する時、「高級な紅茶を有り難う」と声をかけてくれたので少し救われた。
「スリランカに旅行だったんですって」続いて留守中に1回だけ訪ねてきたと聞いた戸崎久仁子判事の執務室に行った。裁判部事務室の職員に案内されて部屋に入ってきた私を見て戸崎検事は何故か嬉しそうに声をかけてきた。私は日本の裁判所で同じ国家公務員である判事と検事が法廷外で接触することを問題視していたので戸崎久仁子判事の部屋を訪ねることはなかったが、これは同胞としての親近感の表現だろう。
「はい、佛教の聖地を見て回ってきました」私の説明に戸崎判事は少し陽に焼けた顔を見て納得したようにうなずいた。実際、スリランカでは佛歯寺以外も梢が調べた佛教の僧院を巡ってきたが、日本の寺院の本尊が佛像なのに対して釋尊が実在しているような信仰には心から感激した。
「スリランカは内戦が終結して5年経っているけどどんな感じだったの」すると戸崎判事は遠回しに旅行=現地調査の成果を探ってきた。私としては佛教の聖地巡礼も本当の目的だったのだが、仕事に生きている大物女性たちには理解されないのかも知れない。
「国連人権委員会は(いわゆる)従軍慰安婦問題と同じ過ちを犯したようです」相手が日本人なので私が抱いている国際連合人権委員会に対する不信感を説明するのは簡単だ。事務総長の選挙ではアメリカの指示を受けた日本の全面支援で就任できた潘基文事務総長は韓国の国民性である「忘恩」を発揮して国際連合人権委員会に(いわゆる)従軍慰安婦問題を提起させた。その調査は日本では強制連行を裏づける公文書が発見できなかったにも関わらず韓国の元慰安婦の証言と明らかに捏造と判る陳腐な証拠を採用して事実と認定した。そもそも朝日新聞が「自己を断罪する勇気ある告白」と賞賛しながら大きく執拗に報道した吉田清治の済州島での強制連行が虚偽であることは本人が認めており、逆に元慰安婦たちは当初、「親に妓宿(キーセン)に売られた」と証言していたはずが、日本の官憲や軍によって強制連行されたことになっていた。
「つまりモリヤ2佐はスリランカ内戦の報告はコートジボワール以上の虚偽だと考えているんですね」戸崎判事には私が現在の裁判に疑問を持っていることは話しているだけに理解は早い。
「仮に国連人権委員会が刑事告訴を強要するようなら組織に対して虚偽告訴罪を適用する用意があります。逆に被疑者死亡のままタミル・イーラムの虎を戦争犯罪者として告訴すると言う手もありますね。そうなれば念願の死刑を求刑できます」私としては手前勝手な死刑廃止を絶対的正義として世界に徹底しようとしているヨーロッパで、国際法では死刑が存続していることを示すために求刑をしたいと考えている。やはり戸崎判事は外交官の顔になって黙ってしまった。
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  1. 2020/09/12(土) 13:30:33|
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