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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ2440

6月上旬に茶山元3佐から届いた5月分の新聞の定期便には妙な質問が同封されていた。小荷物に書簡を同封するのは厳密に言えば国際連合の専門機関・国際郵便連合が所管する国際郵便条約違反に当たり国際刑事裁判所の検察官としては困ってしまうが、日本の情報を入手する唯一の手段なので黙認することにした。
「今度は令和なんだって」「何が」私が先に茶山元3佐の手紙を読み始めるとテーブルの上に置いた段ボール箱から新聞を取り出した梢が意味不明な説明をした。1か月前に読んだ4月分の新聞の最後に「次の元号は令和に決まった」と言う記事があったような気がするが、1カ月分を一気に読んでいる上、現在の皇室を嫌悪しているので全く憶えていなかった。
「レーワねェ・・・今度の天皇に昭和の陛下の神聖な元号の文字を使わせたくないね。女房の両親に会いにオランダに来れば完全にクリスチャンとして行動しているんだから日本の神さんたちが怒り狂うよ。ヘーセ―以上に天災が続くんだろうな」「その前にまだ元号を続けるのかしら。平成の間も昭和生まれの年齢や昭和から続いていることの計算で不便だったじゃない。オランダに来て西暦に慣れちゃったから年号で言われると完全にお手上げよ」「しかし、西暦はキリスト教暦だから別の世界統一暦を作らせないとな。国際司法裁判所に行政訴訟を起こしてやろう」話に区切りがついて梢はテーブルに新聞を並べ始めた。すると妙な大声を上げた。
「桜を見る会って何なの」驚いて覗き見ると5月でも後半の新聞の1面には盛大な花見の風景や加倍首相の日替わり百面相のような顔写真と共に「桜を見る会」と言う見出しが躍り、まるで大政治スキャンダルのような報じ方をしている。
「桜を見る会って花見のことだろう。ワシらもボス公園でやったよな」「あれがここまで新聞が特集するような大問題になるなんて理解できないわ」私の返事に相槌を打ちながら梢が後半の新聞を確認すると完全に特集記事になっている。それにしても花見が大政治スキャンダルになるとすれば民政党政権の事業仕分けで2重国籍の元クラリオン・ガールがSMの女王になって「貴族趣味の大使館の無駄遣い」と金切り声を上げながら外務官僚に鞭を振るうことくらいしか想い浮かばないが、政権与党から転落した民政党自体が解体したはずだ。
「茶山さんは何だって」梢は向かいの席で5月13日の国会の衆議院予算委員会で野党が今年の桜を見る会の経費が急増していることを追求した記事から読み始め、私は箇条書きになっている質問に目を通しながら答えた。
「自衛隊のOB会の会員が亡くなって葬儀に出席したら曹洞宗で、浄土真宗とは全く違うから興味を持ったんだってさ。ワシは元曹洞宗でも今は念佛坊主だから困るな」「この間は淳之介から玉城さんの葬儀と相続の報告があったけど葬儀の話題が続くわね」梢は玉城松栄さんの病状が重篤になり、玉城家の女性3人だけで介護し切れなくなれば沖縄に帰ってあかりの代わりに手伝うつもりで準備していた。だから松栄さんの訃報は娘の義祖父=親族の死として受け止めている。
「葬式の間に何度か『なむからたんのとらやーやー』ってお経を詠みますがあれは何ですかってか」いきなり葬式佛教の業務に関する質問だ。私は得度を受けて坊主になったのは早くても坐禅=観想念佛専一の修行者なので僧侶として葬儀に参加した経験は防府の寺で坊主の真似事をしていた頃、伴僧が集まらないで困った住職の奥さんから頼まれた時だけだ。
「これは大悲円満無碍神呪、曹洞宗では大悲心陀羅尼って言ったかな。要するに観音さんのお経だ」茶山元3佐の質問を読んでいない梢に私の回答は理解不能なので独り言になっている。後でパソコンで返事を書くが、その前に書簡と独り言で質疑応答することにした。
「途中でシンジンバシンから始まるお経が入りますが、念佛に聞こえました。あれは何ですか」「あれは十佛名って言う念佛です。浄土真宗と違って手当たり次第にお願いするんです。そう言えば曹洞宗は妙法蓮華経も入るから題目にもなるな」臨済宗と違い曹洞宗の十佛名には病んで気弱になった道元が信仰するようになった「大乗妙法蓮華経」が入っているのだ。
「チン・ドン・シャンと言う楽器演奏が入りますが、あれは何ですか」「あれは葬列の先頭を坊主が歩いて音で邪鬼を追い払っているんです」これは師僧から聞いた知識だが、久居から行った伊賀地方の山間部では今でも霊柩車の前で僧侶が葬列を組み、鼓鈸を打ってから出棺するそうだ。
「焼香の前に導師さんが赤い布がついた棒をお棺の上に置きますが、あれは何ですか」「あれは火葬の火を点ける松明です。土葬の時は鍬を振るんだよ」「兄が死んだ時、東京で火葬する前に法要を勤めたけど葬儀社が呼んでくれたお坊さんは何宗だったのかしら」「頭は剃っていたか」「うん、今の貴方と同じよ」やはり桜を見る会の記事は興味を引かないらしく梢は私の独り言に参加してきた。梢の疑問については昔、師僧から「東京では遺族が寺の檀家になることを嫌うと葬儀社が雇っているプロの坊主に法要を勤めさせている」と聞いたことがあるので回答にした。
  1. 2021/10/24(日) 14:48:43|
  2. 夜の連続小説8
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