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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

振り向けばイエスタディ2458

「現在、君たちが関心を持っている国際情勢は何だね」「日韓同盟の行方です」「日韓は同盟関係じゃあないだろう」翌日の特別講座は国際情勢だ。私は佳織の官舎で2晩目を過ごし、義父のノザキ中佐夫婦を案内した時以来の前川原の空気にも慣れてきたが、それは候補生たちも同様らしく質問を自分の見解を誇示する機会ととらえて餌に群がる魚のように発言してくる。
「確かに日韓候補生交流が中止されなければワシはここに立っていないから微妙な問題だな」「校長を独り住まいさせていて好いんですか。校長が可哀そうです」「ゴホンッ」私の皮肉を一般(部外)課程のWACの候補生が女性の気持ちで非難すると今日は増設された席に並んでいる学生隊の中隊長の1人が咳払いをした。
「その問題は別にして・・・海外の韓国系移民は南北の統一国家として中国に従属している。特に中国資本が株式を買収したマスコミを使って反日世論を扇動していて、ドイツではベルリン市内の官庁街にある公園にロリータ戦時売春婦の像を建てる市民運動を始めているんだ」「ロリータ戦時売春婦って従軍慰安婦少女像のことですか」「最近は平和少女像って呼んでるらしいぞ」やはり今の候補生たちは勉強家が揃っていて新聞を読むにも本質を考えているようだ。
「いわゆる従軍慰安婦は前線の緊張と恐怖で性欲が高揚した将兵が性犯罪を起こさないために陸軍が日本国内の売春業者に依頼して営業させていたんだ。ワシがカンボジアPKOに行った時もフランス外人部隊の宿営地の近くでは売春宿が営業していたよ。売春業者は日本から連れてきた娼婦では足りないと朝鮮の妓宿(キーセン)で売春婦を買って補充した。仮にあの像のようなロリな売春婦がいたとすればそんな娘を妓宿に打った親がいたと言うことだ。他には」「香港の民主化デモです。校長に教えられた中国の工作と介入に注目しています」私が候補生だった1989年には第2次天安門事件が起こったが、まだPKOも始まっておらず陸上自衛隊にとって海外情勢は他人事であって単なるニュース以上の認識はなかった。
「日本のマスコミは中国共産党に不利になるニュースは隠蔽するからネットで情報収集しないと駄目だな。ネットの字幕も意図的な誤訳が横行してるから英語で読むことだ」私は日本から視界に入る東アジア以外の地域で起こっている軍事情勢を語るつもりだったが、予定外に前置きが長くなってしまった。午後には博多から新幹線に乗るので延長はできない。
「ところで諸官たちはアフリカ大戦争を知っているかね」「猛獣の群れの戦いですか」「昔、部族が槍や弓矢で戦ったんでしょう」流石の優等生たちも軍事のプロの私でさえ情報を得られなかったアフリカ大陸での戦争に詳しいはずがない。それでも反応するところは今風の若者だ。
「例えば1994年に自衛隊が人道派遣を実施したルワンダ紛争だ。日本では近代兵器を使った民族紛争と報じていたが、実際は植民地にしていたドイツとベルギーが現地人に武器を与えて武力衝突を代行させた結果、収集がつかなくなって独立させた。独立しても部族間の抗争は終息しないから互いに近代兵器で大量虐殺を繰り返したんだ。次は2012年から2017年まで自衛隊がPKOに行っていた南スーダン内戦だ。こちらはイスラム教が流入して部族抗争に宗教対立が加わり、権力者の対立が内戦化してしまった。日本は第2次世界大戦で占領した東南アジアでは独立=建国の準備のために組織制度の整備と国民の教育、道路の建設と産業の育成を進めたが、アフリカの独立は第2次世界大戦で弱体化したヨーロッパ諸国が開発の経費を捻出できなくなった上に部族抗争に手を焼いて責任を放棄した結果なんだ。しかし、アフリカ大戦争の最大の問題は冷戦当時のソ連から中国が敵味方に関係なく武器を大量に配って軍事訓練まで実施していることだ。ワシがコートジボワールで見た自動小銃はAKー74じゃあなくて漢字を刻んだ56式自動歩槍ばかりだったよ」この説明に候補生たちは黙って考え込んだ。
「つまり中国の一路一帯化戦略は中東の原油だけでなくアフリカへの航路の確保も目的だと言うことですか」「おそらくね・・・君は鋭いな。女房みたいだ」「光栄です」バブルの最盛期だった私の時は3K職場の代表と言われていた陸上自衛隊に就職してくる男子よりも佳織たちWACの候補生の方が優等生が揃っていたが、今のWACは勉強よりも気合が入っている。
「次に旧ユーゴスラビア内戦でオランダのPKOがイスラム系住民の保護を放棄してスレブレニツァの大虐殺の原因を作った責任を問う裁判を受けたことは知っているかね・・・」結局、日本では報じられていない海外での軍事情勢の解説になったが、「アフガニスタンではタリバーンが強固な支持を維持していてアメリカの傀儡政権は遠からず崩壊する」と言う予言が最も関心を得たようだ。それを聞いた教官たちが渋い顔をしたのは何故だろう。
「モリヤ2佐は妻が将補になっても平気なんですか」質疑応答は内容を自由にしたためWACの候補生が極めて遠慮がない質問をしてきた。これでは囲み取材の女性記者のインタビューだ。政治家や芸能人が不用意な失言を口にしてしまうのも判るような気がする。
  1. 2021/11/11(木) 15:22:47|
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