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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ13

私と梢のオランダでの生活は自衛隊を退役しても変わりはなく、新型コロナ・ウィルス感染症の予防ワクチンの接種が進んで行動制限が緩和されたのを受けて夜の散歩を再開させている。薄暗くなった海岸通りで会った警察官は親しげに声をかけてきた。最近は警察官もマスクをはめているが長年のつき合いなので互いに影の体型と歩調で人物は判る。
「ボンズ、軍をリタイヤ(退役)しても運動は維持するんですね」最近の私は作務衣を着ているので肩書は「僧侶」になる。ところが佛教の僧侶を英単語にすると一般的な聖職者を意味するクレリック、カソリックの修道士のモンク、カソリックの聖職者のプリースト、プロテスタントのミニスターなどがあり、オランダ人たちは日頃、教会の聖職者を呼んでいる単語を流用してくる。ところが梢の説明を受けても違和感を覚えるため「ボーズと呼べ」と要求すると妙に英語的な発音で「ボンズ」になってしまった。梢によると「ボンズ」は英語の佛教の僧侶の俗称として存在するらしい。考えてみればオランダに赴任してきた頃には日本国憲法9条で否定されている「アーミー(陸軍)」と呼ばれることを嫌って「グランド・ジエータイ(陸上自衛隊)」と言わせたが、「ボンズ」は英語なので普及・定着させたいものだ。
「女房とのデートも兼ねているからね。心身共に健康になれるんだ」そう言って梢の手を取ると黙って握り返してきた。信者の前では建前を演じているヨーロッパの聖職者たちに比べると私の説明と態度はかなり俗っぽいが、自衛官時代から開けっ広げに接してきたので苦笑しただけだった。尤も最近はカソリックの聖職者が少年に同性愛を強要していることが暴露され、それがバチカンにまで波及しているので、このくらい自然体の方が良いのかも知れない。しかし、カソリックの不祥事を児童虐待として告発しているのは毎度の人権団体なので、ヨーロッパの伝統的倫理を破壊する政治的意図を感じて同調はできない。
「ところでボンズの国はコリア(韓国)と戦争になるんですか」立ち話を切り上げて歩き始めようとしたところで思いがけない質問で呼び止められた。我が家で取っている英字新聞でも海上自衛隊のPー1対潜哨戒機が韓国海軍のコルベットに撃墜されて搭乗員11名が戦死した事件以来、日韓両政府の対立の激化は散発的に報じられているが戦争の可能性を指摘されたのは初めてだ。確かに歴史研究者として見る限り、今回は韓国の歴代政権が国民の支持を回復するための常套手段にしてきた反日世論の扇動とは次元が違うようだ。少なくとも韓国軍が武力行使によって自衛隊員を殺害した前例はない。
「可能性は高いね。若し戦争が始まるとすれば背後には必ず中国がいる。1274年と1281年に日本はモンゴル帝国の攻撃を受けているが、韓国の王朝は水軍を派遣して日本の対馬と壱岐島に上陸して島民を大虐殺した。さらに1419年にも日本と中国の関係が悪化すると海賊の壊滅を名目にして対馬に上陸して島民を大虐殺した。この大虐殺と言うのは誇張ではないぞ。韓国の水軍は漁村を見つけると上陸して家屋に火を放ち、老人から幼児までの手に穴を開けて紐を通して海岸に連行するとそこで皆殺しにした。使える女性は船に乗せて沖に出ると散々に強姦してから海に投げ込んで溺死させた。それは昔話だけじゃあなくて1950年代の朝鮮戦争でも北朝鮮の支持者狩りをしていた韓国軍が女性を強姦して村民を皆殺にしている。ベトナムでも同じことを繰り返しているんだ」話が戦争の可能性から反れてしまったが、韓国軍の残虐性を説明するためには仕方がない。
「ベトナム戦争ではアメリカ軍の市民殺害が問題になってヨーロッパでも反戦運動が湧き起こりましたけど韓国軍も真似したんですね」「それは違う。韓国が先にやったんだ。韓国海兵隊は1968年の2月12日にファンニィ・フォンニャット村で少なくとも69名を殺したが、女性は老女から幼女、妊婦まで強姦している。2月26日にもハミ地区で同じように135名を虐殺した。有名なアメリカ軍のソンミ村の504名殺害は3月16日だ。アメリカ軍の軍事裁判の記録では生き残った村民が韓国軍の犯罪と残虐性を訴えようと遺骸を道路脇に並べたの見て同じことをやろうと思ったらしい」話が反れたことを反省しているとベテランの警察官が余計な返事をしたため反れたまま先に突き進んでしまった。私もヨーロッパのベトナム戦争に対する反戦運動は1969年にヒットした新谷のり子の「フランシーヌの場合」で知っているが、まだ小学校2年だったので詳しくはない。
「流石は元中佐の検察官ですね。ところで最近、ヨーロッパ各地で朝鮮半島系と中国系の移民が合同で大規模な反日デモを計画しているようです。ボンズも奴らから見れば日本人ですから気をつけて下さい」「また新型コロナ・ウィルス感染症の流行が拡大して行動規制が再開されると助かるがな」「それは困ります」今回は警察官の方が反れた話にオチをつけてくれた。この反日デモが開戦のための世論工作でないことを願いながら梢と歩き始めた。
  1. 2022/01/24(月) 15:08:19|
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