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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ22

「確かに妙な連中が基地の周辺をうろつくようになっていますね」島田元准尉は警察で驚くべき事実を聞き、隊友会の役員として関係を持つ地方協力本部の広報担当の3等空佐を訪ねた。この現役時代の階級に関係なく年齢で敬語を使う物腰の柔らかさは航空自衛隊の幹部の特性だ。地方協力本部は隊員の募集と広報活動が任務だが担当地域の人的情報の収集も担当している。と言っても積極的に調査するのではなく陸海空曹の広報官が募集や広報活動で接触した人物の自衛隊に対する感情や防衛問題に関する認識を報告すると、幹部がそれを人的情報として整理・分析している。つまり募集する上での参考資料と言うことだ。
「ウチを覗いていた中国人たちは私ではなく息子の実家として確認に来たようです。その個人情報がどこから流出したのが問題です」「隊員の個人データーはウチや隊友会でも保管していますが、保全には万全を期している・・・つもりです」「それは私も愛知地連で勤務しましたから信用しています。いくら自衛隊支持の世論が定着しても部外者が我々にとっては信用し切れない存在なのは変わらないでしょう」島田元准尉の返事に3佐も真顔でうなずいた。島田元准尉が入隊した頃は制服を着て外出すると雑踏で「税金泥棒」「憲法違反」「戦争屋」「人殺し」などの罵声を浴びせられ、石を投げつけられたものだが、名古屋市では伊勢湾台風の災害派遣で市民の意識は好転し、全国的には阪神淡路大震災を契機に存在を認める以上の支持が定着した。それでも反戦平和運動に名を借りた反安保反自衛隊の活動家は存在するので警戒を怠ることはできない。現在も小牧基地の航空祭でブルー・インパルスが展示飛行を披露すると騒音の苦情が殺到し、危険を理由に行事の中止を求める行政訴訟を起こす地域がある。そのため隊員の募集には人脈を活用するのが常識だが、相手が親近感を抱くような隊員を紹介するにも個人を特定できないように細心の注意を払っていた。特に出身地などが共通していることは人脈の構築には有効だが実家の住所は避け、卒業した中学校で説明したものだ。
「准尉も先日の会合に出席しておられたから中国の国家情報法の発令はご存じだと思いますが、中国人と思われる連中が出没し始めたのはその情報が流れてからです。つまり在日中国人で隊員の個人情報を入手できる立場にある人間が任務を遂行したのでしょう」「最近は留学してきてそのまま就職した中国人がどこにでも喰い込んでいますからね。職業を申告させる商売をやっている企業なら簡単ですよ」島田元准尉は3佐の見解に同調しながら日常生活の中で該当する業種を考えたが契約時に職業を確認する業種は驚くほど多く、島田元准尉自身も気軽に応じていることを思い知らされた。以前、モリヤ夫婦から中国人の留学生を企業が採用すると遠からず営業や生産製造、技術分野の中核になり、内部情報を収集するだけでなく一斉に退職すれば企業が経営危機に陥ることになると聞いていたが、このような形で影響が及んでくるとは思わなかった。現在は日本人の若者が毛嫌いする農林水産業から大中小企業の製造分野、流通運輸まで中国人労働者がいなければ動かなくなっているので、中国が日本を内部崩壊させるのは今回の国家情報法と同じく指令のメールを発信すればそれですむ。
「最近は基地周辺の小中高校でも中国人のPTAが官舎の子供の情報を探っていると言う不安の声も出ています。つまり在日中国人全体が何らかの指令を受けて自衛官の個人情報を探り始めていると言うことです」「政府は・・・防衛庁は、元へ。防衛省は何もしないんですか」「先日の注意喚起は統幕(統合幕僚監部)からの情報ですが、自衛隊の情報収集能力を暴露することを避けて動きを封じているんでしょう。ですから隊員の家庭に注意喚起していただくにも不審者の立ち回り情報に留めて下さい」3佐の指導に島田元准尉は昭和58年9月1日のサハリン上空での大韓航空機撃墜事件を思い出した。あの事件ではソ連が撃墜した事実を認めなかったため中曽根康弘政権は自衛隊が傍受・録音していたソ連軍の戦闘機と地上の指揮所の交信音声を証拠として公表したのだが、自衛隊は当初、探知能力を暴露することになるため拒否した。島田元准尉は通信人脈でその裏話を聞いた。
「これは私個人の推理ですが、民間企業では対象が顧客に限定されるので短時間で地域の自衛官の個人情報を網羅するのは無理でしょう。やはり地方自治体で勤務している中国人の可能性が高いのではないですか。今はデジタル化で内部からなら簡単に他の地域の情報も盗み見ることができるようになっています」やはりモリヤ将補が会う度に指摘しているように官公庁と地方自治体の業務のデジタル化の前提は全ての公的情報を単独で処理できるだけの能力を持つ日本の企業が存在することなのだ。
「それにしても日本が対立しているのは韓国でしょう。どうして中国が割り込んで来るんですかね」「元々、朝鮮半島は中華帝国の属国ですからね。子供の喧嘩に親が出てきたと言うことですわ」長い前置きにオチがついたところで本題の注意喚起の打ち合わせに移った。
  1. 2022/02/02(水) 15:52:52|
  2. 夜の連続小説9
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