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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ43

「今朝、韓国の警察が『昨夜、韓国が実効支配している竹島で警備隊員5人が殺害された』と発表しました」「これかァ・・・」巡視船・たんぺを隠岐海上保安署専用の波止場に接岸させ、船体に損害がないことを確認した船長が報告のため署長室に入るとテレビが点いていた。
「韓国海軍は『準交戦中にある』と言っていたんだよな」「はい」入室した船長に一瞬視線を送った後、再びテレビを注視した署長が口頭で確認すると船長も返事だけで応えた。横顔で見る署長は漁船3隻の同時遭難のニュースを見るつもりで点けていたテレビが予想外の大事件を報じ始めて困惑しているらしい。一方、船長も船橋のガラス越しに聞こえてきた連続発射される砲弾が空気を引き裂く不気味な音が甦り、戦慄を覚えた。
「現場の状況を韓国の警察は動画で公表しましたが非常に凄惨な場面なので番組の担当者が編集した画像で紹介します。壁には多数の銃弾の痕跡が残り、窓ガラスも砕け散っています。床は大量の血糊が塗り込まれ、無線機やテレビにも銃弾が射ちこまれています。奥の仮眠室のベッドも血染めになっていて寝た状態で射殺されたことが判ります」男性アナウンサーは紙芝居の語り手のように画面と画面の解説の間に放送しない状況の説明も挿入してくる。これだけの銃弾が射ち込まれていれば室内にいた警備隊員の生存は有り得ないことは素人にも判る。
「竹島の警備隊は軍隊なんですか」「いいえ、所属は韓国南東部の慶尚南道警察庁になっていますが、実体は軍からの派遣された兵士が配備されているとか警察官が軍の特殊部隊で訓練を受けているとも言われています。どちらにしても精鋭が配置されていることは明らかでしょう」画像の紹介が終わったところで男性アナウンサーが解説者に話を振った。竹島の警備隊は海上保安庁の航空機が遭難者の捜索の時には無視するが、違法行為の監視のために接近すると島の頂上に据えた対空機関砲を向けてくる。そのために海上保安庁でも組織上は警察に所属していても実際は軍人が配置されていると言う見方が常識になっている。
「そんな精鋭部隊を全滅させたのは誰なんですかね」「竹島は位置関係から言えば韓国や我が国だけでなく北朝鮮やロシアからも近い。どの国にとっても日本海の支配権を確保するためには手に入れたい島なのは間違いありません」男性アナウンサーと解説者も今回は韓国側が日本の攻撃とは断定・明言しなかったため客観的な報道に留意しているようだ。
「最近、日韓の軍事衝突が続いていますが・・・」「自衛隊が攻撃することは有り得ないでしょう。先ず陸上自衛隊には海を渡る移動手段がない。確かに夜間も竹島近海で漁をしている日本漁船は多いですが、自衛隊の攻撃に協力する漁民がいるとは考えられません」以前は加倍政権を執拗に揶揄し続けて反自衛隊反日米安保をアカラサマにしている解説者も今回は妙に現実に即した説明を続けている。すると男性アナウンサーが「ハッ」としたような顔になった。
「そう言えば次にお伝えする予定のニュースが関連するかも知れません。順番が変わりますが先に紹介したいと思います。良いですか」男性アナウンサーは画面の中で映っていないディレクターに声をかけ、「はい、どうぞ。キュー」と言う返事が聞えた。
「昨日の深夜3時頃に竹島近海で漁をしていた島根県の雲海漁協所属の漁船3隻が突如、同時に消息を絶つ遭難事故が発生しました。鳥取県境港市の境海上保安部が巡視船を派遣して捜索していますが、現時点で発見の報告は入っていません・・・このニュースを先ほどの解説と考え合わせると」「自衛隊が漁船に同乗して竹島に上陸して警備隊を皆殺しにしたと言うんですか。まさかァ」「でも自衛隊は2回も飛行機を撃墜されて10人以上の隊員が死んでいますから石田内閣の弱腰ぶりを見て報復を考えても不思議はないでしょう」今度は横で聞いていた若い女性アナウンサーが口を挟んできた。
「そうなると漁船3隻は警備隊に銃撃されたか、付近にいた韓国海軍や沿岸警備隊の艦船に攻撃された・・・確証は何も有りませんが辻褄は合います」「勝手に決めるな」男性アナウンサーが納得したように答えると船長は画面に向かって罵声を浴びせた。
「しかし、雲海漁協の通報者は『銃声を聞いた』と言っていたんだよな」「はい、そのように聞いています」「それで韓国海軍が準交戦中と言って巡視船に警告射撃をしてきたとなると・・・」署長の世代は共産革命を策謀する国鉄労働組合や公務員労組を腹中に飼っていた運輸省で勤務していたため海軍の軍服に似た制服を着ていても反自衛隊反日米安保に染まり切っている。おまけに外洋で活動するには小型の巡視船しか保有できず、その小舟で嵐の海に乗り出して捜索・救助する任務の中で巨額の防衛予算で続々と大型艦艇を建造する海上自衛隊に対しては羨望や嫉妬とは次元が違う憎悪と怨嗟の念が刻み込まれているのだ。それはイージス護衛艦・あまごと漁船の衝突事故の海難審判で事実とは全く異なる航跡図を作成・提出・証拠採用して海上自衛隊の全面的な過失にした裁定でも明白になったがいまだに謝罪はしていない。
  1. 2022/02/23(水) 15:02:52|
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