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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ48

「新型コロナで見舞いを制限されて家族に看取られることなく死んでいくのを寂しいと思っていたけど病院で穏やかに死ねるだけでも幸せと思わなければいけなくなりそうだな」茶山元3佐が船岡施設OB会の会員の葬儀に出席すると最後列に並んで座っている会員たちが声を落として語り合っていた。葬儀場は席の間隔を広く取っているが、出席者はそれぞれ会話しているので周囲を気にする必要はない。何よりも日に日に「自衛隊内の反韓過激派が暴走している」と言う疑惑の色を濃くしているマスコミの報道に危機感を積のらせている元自衛官たちが死んだ元同僚が作ってくれたこの機会に本音・真情を共有しようとするのは至極当然だ。
「俺たちはこうして無事に定年を迎えて老後を過ごしているが、戦争が始まれば現職の隊員の大半は戦死するだろう」「俺たちは老い先短いから悔いはないが、若い連中が死ぬのは耐え難いな」ここで対話に間が入ったので視線を正面に向けると自衛隊を定年退官した時に撮影した制服姿の遺影が苦衷しているように見えた。
「海自と空自が殺られた後は在日のデモ隊が基地に押し寄せていたが、今度は陸にも来ているそうだ」「東北の太平洋側は震災の災害派遣を憶えているから仙台市内でチラシを配ってる程度だが青森や弘前に秋田ではかなりの人数のデモ隊らしいぞ」茶山元3佐は陸士の頃、ソ連のミグ25戦闘機が函館空港に強行着陸した亡命事件を受けて飛行コースになった青森県の津軽半島の十三湖の近くに地対空ミサイルの基地を建設する工事に参加したことがあるが、外出時に「在日朝鮮人には気をつけろ」と指導された。津軽半島に限らず北海道から北陸までの日本海側の穀倉地帯では戦時中、働き手が根こそぎ徴兵されて生産量が大幅に減少したため朝鮮半島で労働者を募集して小作人にしたと言う。ところが終戦で生き残った農家の若者たちが復員してきても日本の先進的な生活を知った朝鮮人たちは帰国しないで居座り、東北各地で暴動に類する事件を頻発させた。今回のデモはその再現に発展する可能性もある。
「いよいよとなったら在日の連中は強制送還させないと危ないな」「戦時中のアメリカが日系移民を砂漠の強制収容所に押し込めたみたいにはいかないだろうからな」日本人の多くは第2次世界大戦中のアメリカで日系人が強制収用所に入れられた史実をフランクリン・ルーズベルト政権の人種差別による悪事と思わされているが、実際は真珠湾攻撃によって太平洋艦隊を壊滅されたアメリカには日本軍が襲来しても阻止する手段がなく、本土に上陸されて占領されると言う強い危機感を抱いていたのだ。そのためフランクリン・ルーズベルトが署名した大統領令9066号では諜報活動や軍の行動の妨害などの敵対行為を防ぐことを目的に日系人に限らず敵対国出身の移住者は全て軍が管理下に置いた地域から退去させる権限を認めていても、それ以外の地域では日系人も権利を保障されていた。また半年後に設置された強制収容所に日系人だけが入れられのはその時期、日本海軍は西海岸近海に潜水艦を多数派遣して航行する船舶を撃沈しただけでなく艦砲射撃で地上の施設も破壊していてアメリカ本土への直接の脅威となっていたのは強い海軍力を持つ日本だけだったからだ。
「それでも終戦直後は占領軍が在日の連中を敵でも味方でもない第3者の国とか言って日本の警察は取り締まれなかったが、今は違法行為を犯せば逮捕できるだろう」「それも難しい点があるんだ。海外のマスコミは今回の対立の原因は全て自衛隊側にあると報道しているから下手に取り締まれば民族弾圧だと言い出しかねん。最初の海自の事件の時も市ヶ谷の正門前の歩道に押しかけていたデモ隊を警察官が通路を確保しようと手で肩を押しただけで2人も転んで暴力を奮ったことにされた。警察も懲りてしまったんじゃあないかな」あの時は日本テレビ局が現場を撮影していて放送した時には女性アナウンサーが「警察官が暴力を奮ったのでしょうか」と疑問符をつけて解説を加えていた。今回に限らず日本のテレビの報道番組では台詞は疑問を呈していても口調や表情で断定して視聴者の印象を操作する手法を常用している。それは新聞が衝撃的な見出しの末尾に「?」をつける手法の応用かも知れない。
「石田政権はまだ対話を呼びかけているんだよな」「だったら小泉がピョンヤンに乗り込んだみたいにソウルへ飛んで行って何とか言う大統領に直談判すれば良いんだ」少し興奮気味になって話は政権批判に発展してしまった。こうなると聞き役に徹している茶山元3佐は役柄を「赤の他人」に変えたくなる。どう考えてもこの場に相応しくない、
「石田は広島出身の割には仁義なき戦いはできそうもないな」「所詮は銀行員だよ。刺青又さんの孫とは度胸の据わり方が違うんだ」刺青又さんとは小泉首相の祖父・小泉又次郎逓信大臣のことで元とび職だったので全身に倶梨伽羅紋々の刺青を彫っていたと言う。この会員は小泉首相の父親が防衛庁長官だった頃に読んだ部内紙の人物紹介記事を憶えているようだ。その父親は朝鮮人帰還事業で中心的役割を果たし、それが訪問実現の伏線にあることは知られていない。
  1. 2022/02/28(月) 15:48:52|
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